曲目紹介

弦楽合奏

ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「春」ホ長調 第1楽章(ヴィヴァルディ)

 ヴィヴァルディは、18 世紀前半に活躍したバロック時代のイタリアの作曲家です。「赤毛の司祭」と呼ばれ、ヴェネツィアのピエタ慈善院付属音楽院で孤児の女の子たちにヴァイオリンを教え、彼女たちのオーケストラのために作曲し、合奏指導をしました。ヴィヴァルディは教育家でもあったのです。彼の12 曲からなるヴァイオリン協奏曲集「和声と創意への試み」の最初の4曲が、「四季(春/夏/秋/冬)」と呼ばれています。この4曲には、ソネット(十四行詩)が付いており、当日演奏される「春」の第1楽章では、小鳥のさえずり、水の流れ、風、雷、小川のせせらぎなどが、ソロヴァイオリンと合奏とが呼び交す音型で巧みに表現されています。当日は、ヴァイオリンは1/ 4以下、チェロは1/ 2以下のサイズの生徒たちが、磯部省吾の指揮で演奏いたします。

チェロ

スケルツォ(ゲンス)

 ゲンスは、19 世紀後半から20 世紀初頭に生きた作曲家という以外の詳細は不明です。チェロとピアノのために書かれたこの曲は、急速な動きのスケルツォとロマッティックなトリオからなる三部形式の曲で、スケルツォでは超高速のスピッカートが弦の上ではじける技巧を見せ、トリオでは甘いメロディをたっぷり歌い、チェロの魅力を存分に発揮できる曲です。

シシリアーノ(パラディス)

 パラディスは、モーツァルトと同時代のウィーンに生まれた女流ピアニスト、歌手、作曲家です。幼くして視力を失ないましたが、父が宮廷顧問官だったことからオーストリアのマリア・テレジア女帝の援助により、高度な音楽教育を受けました。多数のソロ、宗教曲のレパートリー、60 曲以上の協奏曲を暗記した優れた記憶力ときわめて正確な聴力の持ち主でした。モーツァルトは、彼女のためにピアノ協奏曲第18 番K.456 を作曲しています。シシリアーノはシチリア半島を起源とする8 分の6 拍子の舞曲で、パラディスのシチリアーノは器楽曲として知られていますが、本来はピアノ独奏曲のようです。鈴木鎮一はこの曲を愛し、ヴァイオリン科の研究科Aの卒業曲に取り入れました。

ヴァイオリン

春の海(宮城道雄)

 宮城道雄は6歳で失明し、生田流筝曲へ入門。その後も過酷な運命に翻弄されましたが、箏と三味線の研鑽を積みました。表現力と情感に満ちた、非常に斬新な演奏家、優れた作曲家であるばかりでなく、自分の音楽の普及や各地の弟子の招きに応じて全国を奔走しました。300 曲にものぼる作品を残しましたが、それは日本と西洋音楽のたくみな融合であって、当時の作曲家に多大な影響を与えました。瀬戸内海を舟で渡った時に、静かな波の音、鳥の声、櫓ろを漕ぐ音などがのどかな春を感じさせ、作曲のヒントとなったと言われています。原曲の尺八と筝の合奏による純器楽曲を、昭和7年にフランス人ヴァイオリン奏者のルネ・シュメール女史が尺八の部分をヴァイオリンに編曲して、宮城自身と演奏してから世界的に有名になりました。当日の筝は正派邦楽会の宇野雅楽恵、黒川雅瞳、宍倉雅美、水野雅千穂、岡戸映実の演奏です。