春休みの一日、グループレッスンで音を磨き、
コンサートでは、スズキで育った音を堪能しました。

 2015年春に、きゅりあん大ホールにアメリカからブライアン・ルイス先生をお招きしての合奏レッスンを体験した関東地区。2016年春は、国際スズキ・メソード音楽院ヴァイオリン科教授の舘ゆかり先生と、スズキ・メソード出身でコンサート活動やFMラジオのパーソナリティとしても大活躍のチェリスト、遠藤真理先生をお招きしてのスペシャルイベントとなりました。

舘ゆかり先生の、説的な「エクレス」をグループレッスン!

基本となるボウイングのレッスン。右手首の甲の使い方がポイントの一つでした。エクレスは第1楽章冒頭でその演奏のすべてが決まると言ってもいいほどで、音にこだわることは大切です プログラムの最初は、指導曲集8巻以上の生徒さんを対象にした、舘ゆかり先生によるグループレッスンAからです。舘先生が演奏されるエクレスのソナタは、かつて、1964年の春にテン・チルドレンがアメリカを訪れた第1回ツアーの際に、アメリカの弦楽器指導者たちを前にして独奏し、最初の2音で大きな感銘を与えたことで知られるほど、その演奏は歴史に刻まれた名演でした。今日まで、アメリカにおいてスズキが拡大したことに大きく貢献された、伝説的な演奏だったのです。

 この日の生徒たち28名は、そのご本人からのレッスンを直接学べたのですから、うらやましいかぎりです。春休みの大きなプレゼントになりました。全楽章を斉奏したのち、やはり第1楽章の出だしがポイントになりました。右手の動き、関節の使い方、さらには、膝の関節をゆるやかにすることも教えていただきました。その後に続く各フレーズの歌い方についても、一つひとつを丁寧に、細やかに、音を紡いでゆくこの曲の真髄が伝授されました。

モーツァルトの4番。演奏する生徒も見ている生徒も、勉強になるレッスンでした 後半は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番から第3楽章をレッスン。出だしの連続するアップボウによるスタッカートの感じ方を実際に歩いて表現してみるなど、モーツァルトらしい小気味よさを体験しました。舘先生のレッスンは、上体だけで演奏するのではなく、身体全体で表現することにポイントが置かれていました。「モーツァルトの高い音楽性を小さくまとめるのではなく、大きな喜びとしてすべての感覚を総動員して弾こう」、そんなオーラを感じさせました。

遠藤真理先生のチェロ科グループレッスン!

チェロは、とかく下向きの姿勢になりがちですが、姿勢の良さが音の良さにつながることを、遠藤先生から教わりました チェロ科のグループレッスンに登場されたのは、遠藤真理先生。臼井洋二先生(関東地区チェロ科指導者)のもとで3歳からスズキのチェロで育ち、東京藝術大学を首席で卒業後、2003年に日本音楽コンクール第1位。2006年にザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学に留学。2009年には齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。2012年からはNHK-FM「きらクラ!」のパーソナリティを務めるなど、マルチな活躍をされています。

 レッスンは、指導曲集6巻以上の生徒さん32名を対象に、サン=サーンスの「白鳥」から始まりました。ポイントの一つ目は、「背筋をピン!」。遠藤先生は「自分の殻の中に閉じこもったかのように」背中を丸めて弾く場合、「私の音を会場のお母さんに届けたいと思って」背筋をピンと張って弾く場合で、響きが違うことを実演されました。そして呼吸の大切さも!その違いは本当に大きくて、姿勢は発音するときの意識を変え、結果的に響きも変化させてしまうほど、重要な要素となるようです。途中、ファからシに4度跳躍する部分でも、「自信を持って私の音を会場に奥まで届ける感じで」と背筋をピンとさせる練習がありました。

 続いて、フォーレの「エレジー」。冒頭のメロディ部分に、まず先生のこだわりがありました。それは、強い気持ちを込めてフォルテで弾くこと、そして呼吸とのタイミングを図ることでした。「大きく息を吸って、弓を弦に置く練習をしましょう」。そうすることで、出てくる音に意思が込められるのだそうです。続く部分でも「細い弦から太い弦に移るにつれて、右腕の重さを感じて」。「小さい音のところは、左手の指はきちんと押さえましょう」とポイントが整理されていきました。

お二人の先生によるコンサート

しなやかな右手、確実な左手の動きが醸し出す高い音楽性が素晴らしく、聴き惚れました 午前中のグループレッスンを終え、13時からは遠藤真理先生、舘ゆかり先生によるコンサートでした。お二人の演奏曲は以下の通りです。
■遠藤真理先生(ピアノ/石川咲子先生)
 ・エルガー:愛の挨拶(無伴奏編曲版)
 ・リスト:愛の夢 第3番
 ・メンデルスゾーン:無言歌
 エルガーは、NHK-FMの番組エンディングに流れる曲で、チェロ無伴奏バージョン。ピアノパートも含めてチェロ1本で弾くことになる難曲です。リストもチェロ用に編曲された曲。メンデルスゾーンは「スズキで学んでいた頃に練習した曲なので、皆さんももしかしたらご存知かもしれませんね」とお話しされながらの演奏でした。

会場の隅々にまで、舘先生の美しい音が響き渡りました■舘ゆかり先生(ピアノ/臼井文代先生)
 ・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第18番 ト長調 K.301
 ・ゴセック:ガヴォット
 ・ドヴォルザーク:ユーモレスク
 ・ザイツ:協奏曲第5番 ニ長調 Op.22より 第3楽章
 ・ウェーバー:カントリーダンス
 ・クライスラー:シシリアーノとリゴードン
 ヴァイオリンの名曲に挟まれる形で指導曲集から選ばれた曲目のうち、ザイツの♪協奏曲第5番とウェーバーの♪カントリーダンスは、舘先生ご自身の録音で第4巻と第5巻付属のCDに収録されていますので、この日、会場に詰めかけた生徒さんたちは、いつも聴いているCDを生演奏で聴くことができたわけです。モーツァルトの軽やかさ、そしてクライスラーは6/8拍子の前半のシシリアーノと後半のスピード感あふれたリゴードンの対比が鮮やかで、魅了されました。

そして、午後のグループレッスンへ

キラキラ星変奏曲を演奏するグループレッスンBの生徒たち。青木先生は「よかった」のリズムが「こまった」になっていないかなど、遊びの要素を入れた形でレッスン舘先生によるグループレッスンC。若手指導者も参加して、躍動感あふれる演奏を体験しました14時からは、青木博幸先生による指導曲集1〜3巻の生徒を対象にしたグループレッスンBと、舘ゆかり先生による指導曲集4〜7巻を対象にしたグループレッスンCが行なわれました。青木先生は、♪キラキラ星変奏曲をはじめ、♪こぎつね、♪むきゅうどう、♪妖精の踊り、♪ユーモレスク、バッハの♪メヌエット第2番などが中心。♪妖精の踊りでは、足踏みを一緒にやってみるなど、ゲーム感覚も随所に。♪アレグレットと♪楽しい朝の違いなども、確かめました。舘先生はザイツの♪協奏曲第2番の第3楽章、ヴィヴァルディの♪協奏曲イ短調の第3楽章、そして♪カントリーダンスをレッスンしてくださいました。「速い部分を弾くときは、左隣の人に合わせるように弾いてみて」の先生の一言で、斉奏が見違えるように揃ってきました。ちょっとした注意で、演奏に大きく響くことが実感されました。まさにマジックです。

遠藤真理先生にインタビュー!

ステージ裏の廊下でピアノの石川咲子先生、チェロ科の先生方と一緒に記念撮影させていただきました せっかくのチャンスです。楽屋でお話を伺いました。
 「3歳から臼井洋治先生の藤が丘の教室(現在は市が尾教室)で小学4年まで習っていました。指導曲集にあった♪ジョスランの子守唄をどこかで弾いたことがあったんですが、なぜかそれを覚えています。え、今は入っていないんですか。好きな曲でしたね。それとメヌエット第2番を3歳の時に録音したことも覚えています。あとは、臼井先生が優しくて大好きでしたので、よく似顔絵を描いていました。

 チェロを弾くことが嫌いにならずに育ったのが嬉しかったですね。母も関西でスズキ育ち。高槻支部発足にも深く関わっていましたし、私の2歳上の兄もスズキのヴァイオリンでお世話になっていました。兄は、途中でブランクがあったのですが、私の芸高時代のコンサートを聴いて、当時通っていた大学オーケストラを経て、今では市民交響楽団でコンサートマスターをしています。小さい時の経験が大きな財産になっていますね。私もドヴォルザークのチェロ協奏曲で客演しています。

 今日、皆さんの演奏を聴いて本当にびっくりしました。親御さんの努力の賜物です。今日の生徒さんは、これから大人になっていくわけですが、いろいろな誘惑に負けずに楽器をいつまでも弾き続けて欲しいと思います。たとえ音楽の道に進まなくても、出会いがあり、喜びがあり、人生があります。ですから、チェロのことを嫌いにならない程度に、一生懸命練習をがんばってほしいと思います」

舘ゆかり先生にもインタビュー!

舘先生ご自身も、あらためて斉奏の大きな意味合いを感じられたそうです 舘先生にもお時間をいただきました。
 「今日びっくりしたのは、生徒さんたちの反応の速さですね。どっちが好き?と聞くと、すぐに反応があったし、楽しかったですね。朝のグループレッスンに出た生徒さんも午後の遅い時間にも参加していましたね。スズキの共通語でもある私たちが小さい頃に勉強した曲と同じものでレッスンができて、よかったなと思います。多少、細かい部分で変化がありますが、70年の歴史がこれらの曲に入っていますし。

 『左の隣の人の音を聴くと変わるよ』というレッスンでの私からの一言は、スズキ・メソードは楽器を通しての社会勉強だということと関わりがあります。鈴木先生が斉奏に力を入れた理由はそこにありました。周りの人たちと一緒に時間を共有することなんです。隣の人を意識することで、一緒に生きていけるわけです。一緒に合わせて歌う、弾くという行為そのものが、平和運動ですもの。みんな一人じゃない、隣に誰かがいる、という意識。それが成長につながります。斉奏やグループレッスンは、だから素晴らしい行為だと思いますね。ただ楽器が弾ければいい、のではない、人間的な飛躍です。

 子どもたちが、塾や忙しい時期を過ぎて、また教室に戻ってきて、それを下の生徒さんたちが見ているというのも素晴らしいですね。大人になっても続けている人たちがいますし、素敵なことです。今日は楽しい一日でした」