アメリカからブライアン・ルイス先生をお招きしての春の1日。
たっぷりとスズキの世界を満喫しました。

日時:4月2日(日)13:30〜17:30
会場:クレオ大阪中央ホール(大阪市立男女共同参画センター)

第1部では、ブライアン先生のヴァイオリン演奏をじっくり、たっぷり!

会場近くの桜、この日は5分咲きくらいでした 夏期学校でもおなじみで、生徒たちにも大人気のブライアン・ルイス先生。今年も関西地区指導者たちのラブコールで、ブライアン先生にソロを弾いていただく企画が立案されました。2015年のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に引き続き、今回は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の伴奏をするのは、上級生たちによって構成されたスズキ・メソード関西の特設オーケストラ。今回も、指揮者の江村孝哉先生とともに、2016年の暮れ(12月29日!)からオーケストラ練習を開始し、2月、3月、そして前日の4月1日のゲネプロを通して、この日の本番に備えてきました。

 ブライアン先生の音は、トナリゼーションを基本としたスズキの音にあふれています。常に笑みを絶やさず、大きな体から、実に繊細な音が紡がれるのですから、何度聴いてもすぐに魅了されてしまいます。今年のリサイタルでは、盟友のローラ・ケネディ先生の来日が叶わず、お二人の息のあった素敵なアンサンブルは見られませんでしたが、いつも通りの確かな演奏に、ブライアン先生の「いい音楽を日本の生徒たちに聴かせたい」という思いの詰まった、素敵なリサイタルになりました。

 まずは、以下の3曲を演奏されました。(ピアノ伴奏は反保美咲さん)
・モーツァルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第42番 イ長調 K.526
・ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34-14
・クライスラー:ジプシーの女
 
 どれも素敵な演奏でしたが、特に「ジプシーの女」では、ヴァイオリン音楽の真髄を披露。技巧的な部分とともに音色の使い分けなど、作曲家であり稀代の演奏家でもあったクライスラーの魅力を余すところなく伝えていました。鈴木先生が「クライスラーハイウェイ」と名付けるほど、クライスラーを愛されていたことを、肌身に感じておられるブライアン先生ならではの選曲でしたね。

 続いて、この日のために練習を積み重ねてきた上級生たちによるオーケストラ伴奏で、
・メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
が演奏されました。ヴァイオリン科の研究科Cの曲でもあり、上級生たちにとっては、その模範演奏の伴奏を同じステージでできるのですから、この上もない幸せだったことでしょう。ブライアン先生は、江村先生のタクトに寄り添いながらも、木管楽器とのアイコンタクトを積極的に図るなど、アンサンブルを充実したものにされようとするエネルギーに溢れていました。合わせのコツなど、見習いたいところがたくさんありました。

 アンコールは、ブライアン先生お得意の「The Hot Canary」。この作品は、Paul Neroによって書かれ、Florian Zebachがヴァイオリンのために編曲した作品で、その昔、一躍人気の曲となった作品です。超絶技巧の中、まるで、カナリヤが何羽も耳元で囀っているような感覚になり、ウキウキして、春にぴったりの曲です。ヴァイオリンって、実はカナリヤに近いのかもしれませんね。

第2部は、早野龍五会長の講演

 2016年8月に会長に就任された早野龍五会長から、「スズキ・メソードが育む生きる力」のタイトルで、お話がありました。3月27日(月)〜31日(金)まで、日経新聞夕刊「人間発見」に連載された、早野会長の半生記が資料として配布されました。

 冒頭、松本音楽院で鈴木先生から直接習うことができたことは「贅沢な子ども時代でした」と振り返られ、「鈴木先生の著書『愛に生きる』の208ページに、僕が登場しています」とお話しされると、会場もどっとわきました。

 1964年3月の第1回海外演奏旅行で早野少年(当時12歳)をはじめ、10人の子どもたちがアメリカを訪ねた、いわゆるテンチルドレンツアーのことも紹介されました。驚いたのは、ブライアン先生のお母さん(ヴァイオリン教師、ちなみにお父さんは有機化学者)が、「ニューヨークで、その演奏を見ているはずです」と、この日、初対面の会長に楽屋でブライアン先生からお話があったことが紹介されたことです。ブライアン少年が生まれるのは、それから4年後ですが、その後、松本で鈴木先生から直接習う経験をされ、今日に至る鈴木先生への敬愛の気持ちを醸成されるのですから、とても大切なご縁だったというわけです。早野少年にとっても、アメリカを体験したことが、「いずれ大人になったら、世界で仕事をしたい」気持ちを芽生えさせていました。

 物理学と音楽は、かけ離れたものではなく、人類の英知を学ぶことは変わらない、そして音楽は、演奏を通じて、一つひとつの音に心を込め、偉大な音楽家と心を通じ合える素晴らしい体験、というお話もありました。また、70年前に鈴木先生が始められたことが、世界中で再発見されていることも紹介。学校の試験では測れない能力として、集中して取り組む、粘り強くやり遂げる力などが幼児教育の賜物であること。できるようになるまでのプロセスを大切にするところに、スズキ・メソードの本質があることも紹介されました。会場のご家族たちを、大いに勇気づけられたことでしょう。
 

第3部は、ブライアン先生のグループレッスン

 毎回、子どもたちの生命力を引き出すことに素晴らしい力を見せてくださるブライアン先生。この日も、ステージに上がった子どもたちの目の輝きは、一段と増していました。レッスン曲は、次の通りです。
この姿勢で1巻の「アレグロ」。面白いね!①1巻〜2巻
②ユーモレスク
③協奏曲第2番第3楽章(ザイツ)
④協奏曲イ短調第1楽章(ヴィヴァルディ)
⑤協奏曲ト短調第3楽章(ヴィヴァルディ)
⑥アレグロ(フィオッコ)
⑦協奏曲イ短調第1楽章(バッハ)
⑧協奏曲第5番イ長調第1楽章(モーツァルト)
 どの子も、ブライアン先生の表情、そして動きに目が離せません。それほど魅力的なのです。聴衆の皆さんに合いの手の拍手を入れてもらうなど、アイデアもたっぷり。フォルテは、体全体でフォルテに、ピアノは本当にピアノにという強弱のつけ方で、音が生き生きとしてきました。「会場の奥まで届くような音で弾いてみよう」を大きな体でリードされると、子どもたちの音もそれなりに鳴ってきます。モーツァルトの協奏曲第5番の出だしの3つの音の表現の考え方として、「トマトの種を植えて、葉が育ち、そして花が咲く感じ」という独特な表現をされていました。すると、音の広がりが豊かになり、一つひとつの音にエネルギーが感じられ、効果満点。子どもたちも敏感に感じ取っていました。
 最後は、花束贈呈。小さな女の子から花束を受ける時のブライアン先生の嬉しそうなスマイルに、子どもたちに音楽の素晴らしさを伝えることに情熱を持たれている姿が映し出されていました。