2018年7月9日~14日 オーストラリアのメルボルンで開催された
ナショナルカンファレンスへの日本からの参加レポート

甲信地区チェロ科指導者 原 香恋

色使いが鮮やかなハンドブック 行ってまいりましたメルボルン!
 南半球は日本とは季節が逆なので、メルボルンで7月に開催されたスズキの「ウインタースクール」は、日本でいうところの夏期学校に当たります。日本と異なる点は、期間の半分が指導者研究会となっているところです。各地区持ち回りで、数年に一度全豪の指導者を対象とした参加者を募るため、その際には「ナショナルカンファレンス」という名称で呼ばれています。

 今回、そのナショナルカンファレンスへの私個人の参加目的は、研究発表と箏演奏のデモンストレーションでした。マンスリースズキの場をお借りして、その箏演奏のデモンストレーションの報告をさせていただきます。

 オーストラリアの地から、日本の和楽器「箏(こと)」をスズキ・メソードの指導法を取り入れて発信したい!そんな想いを、私とメルボルンのピアノ科指導者・池田裕子(ゆうこ)先生とで数年にわたり温めてきました。そのための行動に取り掛かってから実際に発表の機会を得るまでに2年を要しました。

 7月10日、カンファレンス3日目は、子どもたちが集まってレッスンをする初日です。その日の最後の時間割に箏演奏の時間をいただきました。メルボルン北部に位置する私立のカレッジの講堂は、およそ500人の生徒さんとそのご父兄、全豪からの指導者と各国からのゲストファカルティの先生方が、箏の発表を見守りました。

 今回の発表演奏では、池田裕子先生のお箏の先生(マレーシア出身のブランドン・リー先生)と生徒たち、シドニーからは、箏のプロ奏者で私の恩師でもある、小田村さつき先生も駆けつけてくださいました。

子どもたちの箏の演奏です 裕子先生のスマートなお箏の紹介やクイズ、かつてのグランドコンサートでは「どうしてヴァイオリンと箏で『春の海』が演奏されていたの?」など、箏とスズキ・メソードとの密接な関係のお話のあとに、子どもたちの箏の発表がありました。

筆者のチェロと小田村先生の箏によるアンサンブルです お馴染みの『アレグロ』や『ロング・ロング・アゴー』も重奏で綺麗に響き、大成功の演奏に会場から大きな拍手をいただきました。その3人の緊張もやっと笑顔に変わると、次はさつき先生の箏と私のチェロのデュエットで『風のうた』です。ゆったりとした和風の旋律の後の尺八の即興音楽のような激しい部分、様々な風の様子が五線譜に書かれています。一音一音ていねいに、力強く、時にかよわく、箏の空を繰るような手の動きに、子どもたちも魔法にかかったようにじっと聴いてくれました。

 プログラムの最後に演奏された箏と低音の十七弦箏による『百花譜』は、2人だけの演奏とは思えない重厚さで、ビートの効いた圧倒的な演奏に「Bravo!」の声が飛び交い、あっという間の箏のデモンストレーション発表となりました。

 箏の弦を爪ではじく時の発音は、ヴァイオリンの弓で一音の響きをよく聴く奏法に通じ、「開放弦の弦の自然な響きが一番美しい」とされる鈴木鎮一先生の奏法の原点も、箏の奏法のアイディアと重ね合わせるとよく理解できます。今回の準備期間や発表を経て、日本の和楽器「箏」は、もっとアピールする価値のある、いろいろな可能性を持った素敵な楽器だと確信しました。

 カンファレンスの貴重な時間を割いてくださったメルボルンのスズキ・メソード、関係してくださったすべての方々に感謝の思いでいっぱいです。メルボルンの子どもたちも、箏のグループがますます活気づくことに大きな期待を持つことができ、オーストラリアのスズキ・メソードの素晴らしい発展も体感したカンファレンスへの参加でした。
後列左から、池田裕子先生、筆者、小田村さつき先生、ブランドン先生と子どもたち

メルボルンナショナルカンファレンス「お別れコンサート」の様子