関東地区指導者会による新年研究会を開催

 新年早々に毎年開催している関東地区指導者会主催による2019年新年研究会が、1月14日(月・祝)、日暮里のホテルラングウッド2F「飛翔の間」で開催されました。「世代と楽器科の垣根を越えて!未来へ‼」をテーマに、盛りだくさんにさまざまな研究が行なわれました

 まずは、関東地区委員長の小川みよ子先生のご挨拶に続き、早野龍五会長による「年頭のご挨拶」がありました。これまでの20年間、有志による追悼として行なわれてきた1月26日の鈴木鎮一先生ご夫妻の追悼ミサが、次の世代につながることを目的として、今年から才能教育研究会としての公式行事になったことが報告されました。そして、平成の時代を終える今、予測困難な時代状況の中で子どもたちの生活がどうなるかについて、質の高い幼児教育の必要性を真摯に考える必要があること。英語もプログラミングもしなければならないと不安に思われておられる親の皆さんに、そうではなくて、もっと基本的な人としての教育の大切さが、必要であることのお話がありました。楽器を通して人を育てるスズキ・メソードには、物事をやり遂げる力や諦めない心、そして他の人と協調する気持ちなどの非認知能力が備わることができることを改めて確認していただきました。また、スズキ・メソードのブランドを高め、世の中の人々に喜んでいただく工夫や研究を重ねる継続的な姿勢についても、お話がありました。

 そして、舞台に登場されたのが「荒川知子とファミリーアンサンブル」のみなさん。ダウン症で生まれた知子さんのソプラニーノ・リコーダーと歌、お父さんの荒川健秀さんのフルート、お母さんの荒川幸子さんのピアノによるファミリーアンサンブルとして、全国でコンサート活動をされています。知子さんのお兄さんは新日本フィルハーモニー管弦楽団でフルート奏者として活動される音楽一家です。この日は、ファミリーと親しくされておられる富川和子先生のヴァイオリンも加わり、ミニコンサートを開いていただきました。演奏曲は次の通りでした。
・小田和正:愛の歌
・ヘンデル:ラルゴ
・シャーマン兄弟:メリーポピンズ
・小田和正:ソレアード
 「知子は、小学校3年生の時に学校でリコーダーを吹き、クラスの生徒さんからたくさんの拍手をいただき、ものすごく感動したんですね。それからは本当に熱心に練習してきました。それでもこうして舞台で演奏するようになっても、最初はリコーダーを吹くだけでしたが、今ではお話をしたり、歌を歌うようにもなりました。お客様の拍手が本当に嬉しくて、その感動が次の意欲になるんです」とお父さんからのお話がありました。知子さんが吹くソプラニーノは、とても清らかで繊細な音色です。澄み切った心をそっと覗かせてくださるような、慈しみに溢れた響き。朗々と響かせるスローな曲調も、リズミカルなアップテンポの曲も、見事に吹き分けていらっしゃいました。コンサート最後に必ず演奏するという「ソレアード」では、歌も披露。会場の先生方も一緒にコーラスする場面もありました。大きな拍手に包まれていました。
 知子さんに、「どのくらい練習するのですか?」と伺うと、ニコッとはにかみながら「口の中で舌の動きをよく練習しています」とのこと。弦楽器の弓振りのように、基礎となるタンギングの練習が大事なんですね。 

 続いて、指導歴3年以内の准指導者たち15名が一人ひとり紹介されました。そのうち、2名の先生は、その場で指導者認定を受ける栄誉もありました。そしてモーツァルトのディヴェルティメントK.136第1楽章を、若々しく軽快に演奏。そしてピアノ科初級指導者4名による連弾で、次の2曲が演奏されました。
・グリーグ:組曲「ペール・ギュント」より「アニトラの踊り」
・ドビュッシー:小組曲より「バレエ」
いずれも拍手喝采でした。

 ここで司会のチェロ科の藍川政隆先生とフルート科の中田英里先生のご案内で、おもちゃのシンフォニーの「おもちゃ」のくじ引き大会。早速、舞台袖で、初めて触るおもちゃの特訓を開始される先生の姿もありました。その間に、指導歴50年以上の大ベテランの先生方が一人ひとり紹介されました。

 舞台転換が徐々に早まってきました。ここからは指導歴10年未満の先生たちによるオーケストラ、くじ引きで当たった先生たちによる大合奏。なんと指揮は、早野会長でした! 見事に「おもちゃのシンフォニー」の第1楽章と第3楽章を演奏し、大きな拍手。何よりもおもちゃの演奏に参加された先生方と早野会長の興奮ぶりが伝わってくる熱演でした。しかも、今回のテーマ「世代と楽器科の垣根を越えて!未来へ‼」が端的に見える化された形になりました。新年らしい賑やかさの中にも、コンセプトが貫かれていることがわかりました。

 ここで第1部が終了です。

アンコールは「白鳥」でした 新年研究会第2部は、会場をホテル上階の日暮里サニーホールに移し、まず、ピアノ科の東 誠三先生とスズキ・メソード出身で東京交響楽団首席チェリスト、西谷牧人先生のデュオコンサートから始まりました。演奏曲は次の通りです。
・シューベルト:即興曲 変ロ長調 D.935 Op.142-3
・ドビュッシー:バラード
・フォーレ:エレジー ハ短調 Op.24
・ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ 第3番 イ長調 Op.36
 端正なお二人の演奏は、いずれも新春にふさわしいもので、味わい深い余韻を残しました。

 続いて、この日の最後のプログラムとなったのが、東 誠三先生によるレクチャー。テーマは「気づくこと」でした。関東地区指導者会からの要望に答える形で、始まりました。まずは、師事された片岡ハルコ先生の思い出についてです。
 東京におられた片岡先生が全国大会(今のグランドコンサート)をご覧になられて、大きな感銘を受け、住まいを松本に変更されたこと。そして鈴木先生の演奏の伴奏をする仕事を得ながら、鈴木先生の思想に大きく影響を受けられたことが紹介されました。東先生は、少年時代にその片岡先生から、ピアノのトレーニングについて教わりながら、人間としてどうあるべきか、3つのことを学ばれたといいます。その一つが「引き受けたことは必ずやる」「やるといったら最後まで遂行しなさい」ということでした。これが東先生のその後の人生の大きな指針になられたそうです。二つめが、「演奏は魂を伝える行為」であること。「演奏には、魂が入っていないと意味がない」という教えだったそうです。心構えとして、どんな時にでも全身全霊で取り組むことと肝に命じていらっしゃるそうです。三つめが「音を聴け」です。音を聴くことがすべて。聴けていない音がまだまだあるので、そうした音を聴こうとする心がけが必要だというのです。
 次に、スズキの「聴いて育てる」ことに関連して、教材CDと名演奏家の演奏について、どういう効能があるかのお話がありました。たくさん聴くことで得られる効能は、曲の全体像が把握できること。メロディラインも間違いなく得られる効能です。だからどんどん聴かせたほうがいいわけですが、その次の過程では、ただベタに繰り返して聴くのではなく、「拍」の存在を認識しながら聴くことが大切との話がありました。
 そして、なぜ名演奏家の演奏を聴かなければならないか、については、名演奏家の演奏は、いろいろな表情を持つ音楽の流れが再現されていて、聴けば聴くほど、多彩な表情が蓄積されるというのです。日本語がキャッチできるように、音楽に込められた様々な音楽の表情をキャッチできる人は、おそらく感性に優れた人。そして和声の移り変わるところの瞬間に心が何を感じているかどうか、それが大切とのことでした。
 魂、生命、心という様々なキーワードとともに、「気づくこと」が最も大切な私たちの営みであることを、改めて教えていただいたレクチャーとなりました。