スズキ・メソードで育った子どもたちのピアノコンサートと
指導者養成プログラムについて、早野龍五会長からお話がありました。

 8月29日(木)、カワイ名古屋のコンサートサロン・ブーレで、スズキ・メソードの指導者養成プログラムについて、早野会長からお話をいただきました。それに先立ち、東海地区ピアノ科4名の指導者のもとで学ぶ子どもたちによるコンサートを開催。実際に、スズキ・メソードで育つ姿を、年齢ごとにご覧いただくことができました。

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2019年8月29日(木)10:30〜12:00
カワイ名古屋 コンサートサロン「ブーレ」
入場料:500円
主催:才能教育研究会東海地区ピアノ科

第1部 スズキ・メソードで育った子どもたちによるピアノコンサート
・ベートーヴェン:ソナタ ト長調 第2楽章(4歳)
・クレメンティ:ソナチネ Op.36-3 第1楽章(6歳)
・ベートーヴェン:ソナタ Op.49-2 第1楽章(6歳)
・ベートーヴェン:エリーゼのために(7歳)
・シューマン:見知らぬ国の人々(9歳)
・モーツァルト:ソナタK.331 第3楽章「トルコ行進曲」(8歳)
・バッハ:イタリア協奏曲 第1楽章(8歳)
・バッハ:イタリア協奏曲 第3楽章(9歳)
・グリーグ:ホルべアの時代より古い様式による組曲 Op.40 1.前奏曲(10歳)
・ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66(10歳)

近藤愛花さんによる特別演奏
・ショパン:バラード 第2番へ長調 Op.38

第2部 スズキ・メソードの先生になりませんか?
・才能教育研究会(スズキ・メソード)と指導者養成プログラムのお話〜早野龍五会長
・スズキ・メソードピアノ科と指導法について〜杉本弘子先生

 この日、演奏した子どもたちは、4歳〜10歳までの10人。東海地区ピアノ科指導者たちの話し合いの中で、「7歳で指導曲集の第7巻が弾ける生徒」を基準に、「より小さく、よく弾く生徒を」と選ばれただけあって、本当に見事な演奏が続きました。まさに「舌を巻く」演奏が続いたのです。それは、曲が一通り弾ける、というレベルではもちろんなく、より音楽的に、より個性的にどう表現するか、という深い領域まで達していました。タッチの柔らかさ、しなやかさと音色の美しさ、さらには自分がどういうストーリーを描いて、その曲に向かい合ってきたかがわかるような演奏だったのです。それが、4歳から順に10歳までの10通りの色彩で展開され、聴衆の思い描くキャンバスには、スズキ・メソードで学ぶ子どもたちの自由で、伸びやかな音楽性が、それぞれの絵画として描かれました。

近藤愛花さん 特別演奏として登場された近藤愛花さんは、杉本弘子先生(東海地区ピアノ科指導者)の教室で育ち、現在、東京音楽大学ピアノ演奏家コース4年生で、特別特待奨学生でもあります。すでに様々なコンサートに出演され、ショパンコンクールにも挑戦している若きピアニストです。この日、演奏曲として選ばれたのが、ショパンのバラード第2番。ニ長調の平穏さと、イ短調の嵐のような局面を併せ持つ難曲を、見事に披露してくださいました。国技館でのグランドコンサートで、東 誠三先生と向かい合って堂々と演奏されていた姿を思いださせるほどでした。

 続く第2部では、早野会長からスズキ・メソードと指導者養成プログラムについて、お話しいただきました。概要は以下の通りです。

 今こうして年齢順に聴かせていただき、「こういう風に育つ」というのがよくお分かりになられたことと思います。この子どもたちは集中する力、他の人と協調する力、目標に向かってがんばる力、達成したことを喜ぶ力を学んできています。スズキ・メソードを始められた鈴木鎮一先生が強調されておられたのは、必ずしも音楽の専門家を育てることではない、ということでした。子どもたちがいい音楽を聴き、毎日練習することで、こうした能力が育つことが大切というわけです。

 カナダで、教育に関する大変興味深い論文が最近発表されました。ブリティッシュ・コロンビア大学が10万人を越す中高生を対象にしてわかったことは、楽器を習得した子どもの方が楽器を演奏しない子どもたちよりも、1学年分、学校の成績がいいということでした。かつ、楽器がよく演奏できるほど成績がいい。さらに驚くのは、歌を歌っている場合との比較では、顕著に見られないことでした。このことは、スズキ・メソードで楽器を教えておられる指導者の皆さんは、経験的にご存知のことです。それを学術的に明らかにした論文でしたので、大変興味を持って読ませていただきました。なぜそうなるのかについては、この論文では言及されていませんが、「毎日練習を重ねる」、「その日常的な生活のリズムや学ぶ姿勢が大切」ということは、この論文からも読み取れることです。

 さて、スズキ・メソードの指導者養成のパンフレットをご覧ください。
(右の色文字をクリックすると、ダウンロードできます) Teacher_Training_Program2019.pdf

スズキ・メソードの指導者には、正指導者・准指導者・初級指導者があることがわかります。初級指導者は、フルート科とピアノ科に設けられ、スズキの全課程を卒業された出身者、あるいは音楽大学を卒業された方、あるいはすでに生徒さんを教えておられる方を対象に、スズキ・メソードを通して教えていただく制度です。

 パンフレットには初級指導者の認定試験の曲目なども紹介されています。ピアノ科の場合、「スズキ・メソードの指導をしてみたい」という方は、指導曲集を市販しておりませんので、ご連絡をいただければお取り寄せすることができます。初級指導者としての認定を得られれば、生徒さんを教えながら、さらに上のレベルにステップアップすることができます。もちろん、「スズキ・メソードとは何か」をしっかり理解していただくための課題図書もいくつかあります。最後のページには、地域ごとの担当指導者や問い合わせ先も記述しております。さらには、指導者レベルをステップアップするためのレッスン料は、半額を才能教育研究会本部が負担をする、という特典もあります。ゆくゆくは、正指導者としてすべての課程を教えられるような指導者になっていただきたいですし、できればここに掲載されるような、次の指導者を育てられる指導者として、将来活躍してほしいという願いもあります。

 このように、スズキ・メソードは指導者と生徒、そして親御さんの三角形で子どもたちを育ててゆくわけですが、スズキ・メソードが世の中に出て行く子どもたちに対して、音楽だけではない、世の中を生きて行くのに必要な能力を伸ばして行く教育法であることをご理解いただければ幸いです。ご興味ある方は、このパンフレットをご覧いただき、私たちに連絡をしていただければと思います。(連絡先 0120-556-414)


進行役の杉本弘子先生と早野会長 最後に、質疑応答・感想の時間が設けられました。
・准指導者になるか、初級指導者になるか、迷っています。
・小さいお子さんたちが暗譜で本格的に弾かれてすごいなと思いました。小さいお子さんへの教育の大切さを感じました。
・スズキ・メソードの子どもたちの演奏を聴くことができ、やはり素晴らしいなぁと思いました。母語をしゃべるようにというのは、本当に大切なんだなと。教育内容が常々素晴らしいと思っておりましたが、指導者になるのは、ちょっと勇気も必要かな。
・たまたま、階下の河合楽器さんでチラシを見て来ました。今、お忙しいお母さんが多い中で、家での練習環境が整わないという例が私の周りでは多いです。そういうお母様に、どのように練習をしてください、とおっしゃるのでしょうか。
 →(杉本弘子先生から)「親子で過ごす時間を30分でいいですから、設けてあげてください」と伝えています。そのうちに、自分でもできるようなところは、自分でやってね、と。時間は作らないとできませんので、親と子どもと先生のトライアングルを大切に、考えてみてください。

川口紗奈江先生 実際に初級指導者として、昨年10月に認定された川口紗奈江先生も会場にお見えでしたので、お話しいただきました。「この9月1日に准指導者にステップアップすることになりました。スズキ・メソードの指導者になって、お母さんたちとの関係をより大切にしたいと思いましたし、子どもたちもスズキ・メソードになって変わって来ました。日々、とても充実した時間を過ごしています。私自身、仲間が欲しい(笑)ですので、みなさんからなんでも聞いて欲しいと思います」
 
 進行役を務められた杉本弘子先生は、「スズキで学ぶと、小さい時からこのような演奏ができます、というのを、今日はみなさんに見てもらいたかったのと、『等身大の生徒さんも見てもらったら?』という東 誠三先生からのアドバイスもあり、近藤愛花さんにも出演していただきました。おかげで、私自身がかつてそうであったように、聴衆の皆さん、とりわけこれからスズキ・メソードの指導者になってみたいと考えておられる方々に、大きなインパクトがあったと思います。今後もこうした機会を設けて、どうしたらこういう子どもたちが育つか、ということをお話と実演で体感していただきたいと思います」と、今回のイベントの意義を語ってくださいました。

 かつて、鈴木鎮一先生がスズキ・メソードを広めるために、数人の子どもたちと一緒に全国を行脚し、鈴木先生の講演と子どもたちの実演が大きなインパクトを持って迎えられました。メディアが発達し、いろいろな情報ソースがある現代でも、今回のような早野会長が現場に出向かれての講演と、日頃の実力を遺憾なく発揮した子どもたちによる実演がセットされると、その生体験がもたらす影響力が相当に大きいことを実感できました。各地で実践されることを願ってやみません。