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ヴァイオリン科出身で、オックスフォード大学に留学された日置駿さんが、日本ツアーを企画。慶應義塾大学と福島県相馬市でのコンサートで大成功を収めました。

 マンスリースズキ2019年1月号でもご紹介した日置駿さんは、3歳より、スズキ・メソードでヴァイオリンを始め、2018年に惜しまれて亡くなられた渋谷重良先生に師事。2002年にスズキ・メソードのテン・チルドレンに選ばれ、ベルリンなどドイツ各地を演奏、同じ頃より豊田耕兒先生に薫陶を受けられた日置駿さん。慶應義塾大学に入学してからは、”音楽で人の心をふるわせたい!”を理念としたオーケストラ、Orchestra MOTIF(オーケストラ・モチーフ)を設立し、以来ミャンマーでは、NPO法人ジャパンハートの運営する養育施設に生活する260人を超える子どもたちと音楽の感動を共有したり、エル・システマジャパンのフェロー(指導ボランティア)として、福島県相馬市における弦楽器教室の指導に当たられるなど、様々な面で活躍されてきました。
 2016年夏からは英国オックスフォード大学法学部に留学。2年間の留学期間中も様々な発信を続け、その様子はマンスリースズキでも紹介してきました。2018年、留学を終え、帰国。現在は民間企業に勤めながらも、音楽活動を続けておられます。
→日置さんの留学奮闘記
 今回、Oxford University Orchestra(OUO)から「日本のことを学びたい」という30名の有志が東京と福島を訪問。日置さんのアレンジで東京では、慶應義塾大学の藤原洋記念ホールでOrchestra MOTIFと交流しながら素晴らしい演奏を披露。また、福島県相馬市では、第5回エル・システマ相馬子ども音楽祭にゲスト出演されるなど、活発な日本ツアーを終えられました。以下、日置さんからのツアー報告です。

 

 多くの皆様にご支援いただき、オックスフォード大学オーケストラジャパン チャリティツアーは大成功のうちに幕を閉じました。ご支援してくださった皆様、応援してくださった皆様、そして会場に足をお運びくださった皆様に心より感謝申し上げます。

 このようにとても大きなプロジェクトを企画するのは初めてのことで、実際にツアーが始まるまで不安に感じたこともありましたが、たくさんの方にサポートしていただき、最後まで本当に素晴らしい1週間を過ごすことができました。

 ツアーの前半には慶應義塾大学日吉キャンパス内にある藤原洋記念ホールにて私が大学時代に立ち上げたOrchestra MOTIFのメンバーとともにコンサートを開催し、満席のお客様からスタンディングオベーションをいただきました。エルガー作曲の「威風堂々」などイギリスに所縁のある曲やオックスフォード大学の学生が日本をイメージして作曲した新曲「金繕い」、また外山雄三作曲の「管弦楽のためのラプソディ」などを演奏し、音楽を通してお互いの国を理解することを試みました。

 リハーサルで初めて顔を合わせてから同じ時間を重ねるにつれて、お互いが信頼関係を築き、まさに音楽を通して絆が結ばれていきました。参加者の表情からも、充実した時間を過ごしていることが見て取れると思います。

 短いリハーサル期間ではありましたが、両オーケストラのメンバーは高い集中力で練習に励み、本番の演奏は本当に素晴らしかったと思います。私自身も、演奏していて鳥肌が立つのを感じるほどでした。

 東京公演を終えたツアー一行はバスで福島県相馬市を目指します。相馬市ではスズキ・メソードとも関係の深い一般社団法人エル・システマジャパンが主催する「第5回相馬子ども音楽祭」にゲスト出演をさせていただきました。オックスフォードのメンバーは子どもたちの音楽的なレベルの高さに感激し、また子どもたちとの交流を心から楽しんでいた様子でした。特に子どもたちとともに演奏した「威風堂々第1番」と、相馬民謡の「相馬盆唄」は会場全体が一つになるような熱気に包まれ、またしてもスタンディングオベーションの歓迎を受けました。

 相馬市の方々はイギリスからの学生たちを心から歓待してくださり、野馬追の衣装や陣羽織体験、法螺貝の演奏など地元の名産を紹介してくださいました。

 相馬音楽祭を終えたツアーは、東日本大震災の被害や復興の現状を知るために沿岸部を訪れ、被害を伝える相馬市鎮魂伝承記念館を訪れました。英語の説明と映像、またパンフレットを熱心に読み込み、涙を流しながら被災者の方々に思いを寄せる彼らの様子に、私も胸に熱いものを感じました。

 そのまま私たちは南相馬に南下し、一般社団法人あすびと福島の学生(小学生~大学生まで40名)とのディスカッションの時間を持ちました。福島の学生さんたちが将来どのように地域に貢献し、ひいては社会に貢献するかという内容についてプレゼンテーションをしてくださったのですが、オックスフォードの学生たちも真剣に聞き入っていた様子でした。この日は楽器体験や指揮者体験などを含むアウトリーチ活動も行ない、ツアーの締めくくりとして、子どもたちの合唱とともに「ふるさと」も演奏しました。

 1週間のツアーの行程は盛りだくさんの内容で、果たして本当に上手くいくのだろうかと不安になった時もありましたが、とても多くの方々にサポートしていただき、また天候や多くの幸運にも恵まれてこのように大成功裏に終えることができました。

 このツアーが小さなきっかけとなって、音楽を介して多くの交流が生まれ、お互いを励ましあうことができたことをとても嬉しく思います。私自身が3歳の時にスズキ・メソードに出会い、大きな衝撃を受けて音楽にのめり込んでいったことが示すように、小さなきっかけや出会いは、振り返ってみると、とても大きな分岐点となることがあると思います。

 オックスフォードの学生にとっても、Orchestra MOTIFの団員にとっても、福島の子どもたちにとっても(もちろん私自身にとっても)、このツアーが何かのきっかけとなって、より広く音楽を通した相互理解の輪が広がっていくことを願っています。

 スズキ・メソードで感じた音楽を学び、演奏する喜びは、私にとっての原点です。これからも様々な活動を通して、多くの人と交流していくことができたらと思っています。

二つの公演は以下のように開催されました。

■東京公演
 2019年3月21日(木・祝)15:00開演(入場無料)
 慶應義塾大学 藤原洋記念ホール(日吉駅 徒歩約1分)
 指揮:カヤナー・ポンチョワン・ベイリー(Oxford University Orchestra指揮者)
 ・Holst/組曲《惑星》より「木星」(編曲版)
 ・Beethoven/ロマンス第2番 (ソリスト:日置駿)
 ・Butterworth/シュロップシャーの若者
 ・Mason/Kintsukuroi(日本初演・新曲)
    ※Oxfordの学生であるメイソン氏が日本をイメージして作曲した新曲
 ・Elgar/行進曲《威風堂々》より第5番+
  《エニグマ変奏曲》より第9変奏”Nimrod”(編曲版)
 ・外山雄三/管弦楽のためのラプソディ

■福島公演(エル・システマジャパン主催 第5回相馬子ども音楽祭にゲスト出演)
 2019年3月24日(日)13:00開演入場無料)
 相馬市民会館
 指揮:カヤナー・ポンチョワン・ベイリー(Oxford University Orchestra指揮者)
 ・Holst/組曲《惑星》より「木星」(編曲版)
 ・Beethoven/ロマンス第2番 (ソリスト:日置駿)
 ・Elgar/行進曲《威風堂々》より第1番(相馬の子どもたちとの合同演奏)
 ・相馬盆歌(相馬の子どもたちとの合同演奏)