新たな展望と次に繋がる夢を描いたジャパンツアー

水島隆郎先生

 今年の夏(オーストラリアは冬です)は、私たちオーストラリアの4人のチェロ指導者にとって素晴らしい時となりました。

 私(水島)は現在オーストラリア、シドニーでスズキ・メソードの指導をしており、ともにスズキを指導している3人の先生と、今回日本へのツアーを計画いたしました。

 松本で才能教育音楽学校生として訓練を受け、その後1988年にシドニーに移り住んでもうすぐ30年になります。才能教育指導者としてオーストラリアで指導させていただく中で、多くのチェロを教える方々にスズキ・メソードを知っていただく活動を通して、徐々にスズキ・メソードでチェロを教える方が増え、オーストラリア全体のチェロ指導者は、現在50名近くになろうとしております。

 今回、個人的に名古屋の中島顕先生クラスの夏期合宿に参加させていただくことになり、そのことをシドニーの同僚のチェロ指導者の方々にお話したところ、「ぜひ一緒に行って日本のスズキの子どもたちや、指導をされている先生方にお会いしたい」との希望をいただきました。中島先生のお許しをいただき、総勢4名(水島隆郎、Zenith Chae、Gillian Miles、Braxton Neate)で中島先生クラスの夏期合宿に参加させていただくことになりました。

 いろいろと話し合う中で、もしできることなら「日本の他のチェロの先生方の指導も拝見したい」という希望があり、寺田義彦先生、河地正美先生に連絡させていただいたところ、ご快諾をいただき、以下のような今回のツアーを組みました。

8月17日(木)東京着
8月18日(金)〜20日(日)中島クラス合宿参加
8月22日(火)河地先生レッスン見学
8月23日(水)寺田先生レッスン見学
8月24日(木)シドニー帰国

8月18日〜20日 中島クラス合宿中島先生クラスの合宿風景(オーストラリアの先生による撮影)
 私(水島)を含め、4人のオーストラリア指導者を中島クラスの父兄、生徒の方々が暖かく受け入れてくださいました。また、中島先生から他地区のチェロの先生方に声をかけていただき、小澤由季野先生(名古屋)、喜多川悠先生(九州)、伊藤岳雄先生、原力海先生(関西)、山田菜々子先生(関東)も合宿に参加してくださいました。その他の地区の先生方の生徒の方々も参加してくださいました。

 合宿は、朝早くから夜遅くまでお稽古に次ぐお稽古でした。オーストラリアの我々の常識をはるかに超える長時間にわたるお稽古、そしてそのレッスン中の子どもたちの集中力には驚くばかりでした。3日間は本当にあっという間でした。

8月21日〜24日 東京見学

8月22日 河地正美先生教室レッスン見学(自由ヶ丘教室)左からGillian先生、水島先生、河地先生、Braxton先生、Zenith先生。
 見学の中で、河地先生からの提案で私たちもレッスンする機会を与えていただき、日本の生徒たちの個人レッスンをさせていただきました。レッスンが終わったあと、河地先生と一緒に夕食をとり、語り合いの時を持つことができました。

823日 初めの予定にはなかったのですが、前日にみんなで思い立ち、23日早朝に松本に行くことになり、特急あずさの始発で松本にゆき、松本城〜鈴木鎮一記念館〜才能教育会館を訪ね、午後に東京に戻り、寺田先生のレッスンを見学させていただきました。

8月23日 寺田義彦先生教室レッスン見学(御茶ノ水センター)寺田先生のレッスン風景(オーストラリアの先生による撮影)
 多くの生徒さんの真剣なレッスンを拝見しました。レッスンが終わったあと、寺田先生とも夕食をともにし、本当に親しく語り合いました。

 1週間ちょっとの駆け足旅行でしたが、今回本当に多くの素晴らしい機会が与えられたことに、そしてチェロ科の指導者の方々に心から感謝します。そしてこのような機会がスズキを指導している私たちに新たな展望を与えてくれたこと、さらには次につながる夢をふくらませることができたことも大きな喜びです。

 スズキ・メソードは鈴木先生によって、世界に広がりました。世界中のいたるところにスズキ先生がいます。そして世界中が同じ教則本、CDを使って教えています。子どもたちはどこへ行ってもその場で何一つ迷うことなく、一緒に合奏することができます。こんなメソードはスズキにしかありません。

 私たちのスズキの世界を、指導者が、お互いの子どもたちを指導し、「どの子も育つ」この原理を我々指導者が共有して行けることは、とても重要なことだと思います。

オーストラリアの先生方から寺田先生の元に届いたカード。温かなメッセージが寄せられています。 今回の体験を通して、もう次の夢に繋がっていることを帰国する道中で語り合うことができました。

 来年も再度日本に戻って来ることをともに確認しました。お世話になった中島先生、河地先生、寺田先生に感謝するとともに、我々のお世話をしてくださった中島クラスのお父様、お母様に感謝します。また、我々のために演奏してくれた子どもたちに「ありがとう!」と言いたいと思います。

 突然の訪問にも拘わらず、暖かく迎えていただいた鈴木鎮一記念館の結城館長、才能教育研究会事務局の方々にも御礼申し上げます。また、参りたいと思っております。今後もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 同僚たちからもメッセージが寄せられましたので、紹介しましょう。 

BRAXTON NEATE先生

 How wonderful it is that thanks to the work of Dr Suzuki, all over the world we are working with the same purpose to educate children; to develop their abilities and hearts through the beauty of music.

 It was a privilege to be able to observe and work with Japanese cello teachers on our recent tour to Japan. I learnt many new ideas and reconsidered old ones.

 Although my Japanese is poor and I was often not able to communicate with language, I felt strongly that tone has a more direct message than any words can convey and reflected on how wonderful a vehicle it is to develop ability and character.

 I am so glad to have met many new colleagues and friends on this trip who I wish to continue to work together with and learn from. May this be the beginning of a deepening relationship.

 鈴木先生の活動のおかげで、全世界に広がっている我々たちが、同じ目的をもって子どもたちを育て、その能力を一緒に開発し、音楽という美しい物を通じて子どもたちの心を育てて行けることは、なんと素晴らしいことでしょうか。

 先日の日本ツアーで、日本のチェロの先生方の教える姿を見学させていただき、一緒に教えることもでき、私たちにとって大切な機会となりました。新しく習ったこともたくさんあり、もう前からもっていた考えも、改めて考え直すチャンスにもなりました。

 私はまだ日本語が自由に使えないので言葉での意思の疏通は難しかったのですが、言葉よりも「音」を通じて伝えられることがあると、強く思う大事な機会にもなり、この「音」こそが人の能力と人格を育てていくための素晴らしい媒介物だと思うようになりました。

 この旅を通じて新しい同僚、仲間と出会うことができ、本当に嬉しかったです。これが始まりで、これからもっと深く、太くなるつながりになるように願っております。

GILLIAN MILES先生

 This was my first visit to Japan and it was so exciting and humbling to feel so welcomed. I was immersed in a new culture with a common language of music and particularly the Suzuki repertoire which kept me connected to everyone.

 I feel very privileged to have had this opportunity to learn from the amazingly talented cello teachers, Nakajima sensei, Kawachi sensei, Terada sensei and the other teacher’s at Nakajima sensei’s summer school in the mountains.

 I was placed with Nanako Yamada during the camp. I found her an excellent teacher who was very inclusive of me at all times.

 The students were all eager to learn and so happy. There was always an atmosphere of happiness, kindness, patience, determination and hard work.

 Thank you for giving me such a wonderful insight into Dr Suzuki’s philosophy working in Japan through the learning of cello.

 今回初めて日本に行かせていただき、皆様がとっても暖かく歓迎してくださったことに心より感謝いたします。私の知らない文化の中に入ることで、環境が違うとはいえ、音楽という共通の物、特にこの世の中何処へ行っても同じ「スズキという共通語」を通じて皆様とつながることができたと思います。

 我々が共通にもっているこのスズキ語を、日本で指導しておられるチェロの先生方ー中島顕先生、河池正美先生、寺田義彦先生、そして中島クラスの合宿に参加してくださった若い先生方ーから多くのことを勉強をさせていただいたことに感謝を申し上げます。

 その若い先生方と一緒にチームを組ませていただきました。見学も、教えることも一緒にできた山田菜々子先生は、素晴らしい指導者で、私にいつも気を使ってくださいました。

 生徒さんたちからも皆さんが一生懸命に学ぶ意欲が見られ、それでいて彼らが楽しそうにしているのを見ることができました。合宿では何時も楽しく、優しく、辛抱強く、ハードワークでみちあふれていました。

 合宿や、見学させていただいたレッスン場で出会った方々のお陰で、鈴木先生の哲学が日本のチェロの指導を通じてどの様に伝われているのかを見せてくださることができ、本当にありがとうございました。

ZENITH CHAE先生

 今年の8月は自分と自分が所属させていただいているスズキファミリーとは違って、外にいる違うファミリーと会うことができる特別な機会をいただきました。まるで本当のファミリーが過ごすように、同じ空間で一緒にご飯を食べて、一緒に練習しながら生活をさせていただいた3日間の中島先生クラスの夏期合宿は、単なるチェロの教え方を考えるよりも、そして、どうやって教えることが正しいか正しくないか、というような課題を考えるよりも、このスズキ家族とこれから先どんな関係を作り、どうやってもっと太い関係を求めることができるかを、考えるための契機になりました。

 ありがたいことに合宿の参加を許していただいた中島先生クラス以外にも、日本のチェロの先生方お二人のレッスンを見学させていただいて、多くの勉強をさせていただきました。

 個人的な思いでは、今回限りの特別イベントで終わらないで欲しいと思っております。今回できた大切な出会いがこれから続いていくことを強く希望しております。毎日直接に顔を合わせて一緒に話し合ったり、スズキ指導者としての生き方に関してともに相談に乗ってもらったり、というようなことは、物理的に(地理的に)難しいかもしれませんが、コミュニケーションと考えの交換を通じて、言葉の壁を超えて一つの思いと意思となって、どの国のどの子も育って行くことを望んでいます。

 お世話になった一人ひとりの方々に感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

山田菜々子先生から

 根羽村での合宿にてオーストラリアの4名の先生方とご一緒させていただく機会を得、これからもともに学び続ける仲間と出逢えたことは、私がこの夏で得た音楽の宝物の一つです。

Gillian先生のレッスン風景 ベートーヴェンのメヌエットのクラスでご一緒させていただいたGillian Miles先生とは、特に素晴らしい学びの時間を共有することができました。メヌエットが演奏された時代背景や実際のステップを生徒さんに分かりやすく教えていただいたり、この曲で生徒さんに何を伝えたいか、といったことについて意見を交換することができました。

 合宿に参加された生徒さんが国や言葉の壁に囚われることなく先生方の音楽を感じとり、自分のものにしようとする力を目の当たりにした3日間でした。

 水島先生をはじめ、オーストラリアの先生方、ありがとうございました!地理的には離れていてもスズキ・メソードで繋がっていること、鈴木鎮一先生の「どの子も育つ」は万国共通であること、という自分の中の柱が、益々揺るがぬものとなった思いです。