「脳と神経」をテーマに2007年に医学書院より創刊された雑誌「Brain and Nerve」最新号(Vol.70 No.6 )の特集「芸術を生み出す脳」に、フルート科特別講師で脳の研究活動もされる宮前丈明先生の論文が掲載されました。早速、宮前先生ご自身から、今回の論文掲載への経緯と内容について、メッセージをお寄せいただきました。

 また、同誌の編集委員も務められ、スズキ・メソードとの共同研究を継続中の東京大学大学院教授の酒井邦嘉先生も、「創造性と脳」と題された巻頭の鼎談に登場され、スズキ・メソードとの共同研究に触れてくださったり、機関誌創刊号(1948年)で鈴木鎮一先生が定義された「才能」についても紹介してくださっています。

 それでは、宮前丈明先生からのメッセージです。

全国指導者研究会で講演をされる宮前丈明先生 昨年からスズキ・メソードと東京大学・酒井邦嘉研究室との共同研究が始まりました。酒井教授が編集委員をしておられる脳科学の総合専門誌Brain and Nerveが「芸術を生み出す脳」と題する特集を企画されているとのことで、その中の一つとして、総説「音楽経験と脳」の依頼をお引き受けしました。「専門家向けではあるが、高校生が読んでも直観で理解できるものを」との出版社からの要望がありましたので、構成、文献の紹介、内容説明にはかなりの工夫が必要でしたが、今回、無事出版の運びとなりました。

 音楽経験と言っても傾聴主体、歌の訓練、器楽の訓練、ジャンルの違いなど様々な種類の「経験」があるわけですが、本総説では論文数の多い、クラシック音楽を主体とした器楽演奏習得のための訓練が脳にもたらす変化を中心に解説します。

 近年、音楽経験による脳の変化は「脳の可塑性の生体モデル」とも言われて全世界の科学者が大いに注目しています。スズキ・メソードやエル・システマの生徒さんが被験者として参加されている脳科学研究も紹介しています。本総説が日本の皆様にとって意義のある解説書とならんことを願っています。


 Brain and Nerve (第70巻第6号)
 医学書院発行 定価:2,700円+税
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