10月20日(金)〜22日(日)東京芸術劇場にて、
エル・システマ フェスティバル2017が開催されました。

 

 2018年4月4日に開催の「スズキ・メソード第54回グランドコンサート」で共演することになるエル・システマジャパンが、この10月、3日間にわたる「エル・システマ フェスティバル2017」を東京芸術劇場で開催しました。盛りだくさんな内容は、どれも魅了されるプログラムばかり。

 今回は、グランドコンサートで共演する福島県相馬市や岩手県大槌町の子どもオーケストラの皆さんは参加されていませんでしたが、ベネズエラ出身で現在、ベルリン・フィルの首席コントラバス奏者、エディクソン・ルイスさんによる素晴らしいパフォーマンスは、コントラバスという楽器の限りない可能性に舌を巻いたほどです。

 そのルイスさんとスズキ・メソード出身の辻彩奈さん(ヴァイオリン)や、堤剛さん(チェロ)とのボッテジーニの作品での超絶技巧アンサンブルには、とにかく圧倒されました。お二人にリハーサル後、お話を伺いましたのでご覧ください。また、よく知られたシューベルトの「ます」では、ヴィオラを加えた5人による見事なチームワークは圧巻。この日、会場に駆けつけた聴衆への素敵なプレゼントとなりました。
→ 辻彩奈さん、堤剛さんへのミニインタビュー

 最終日、台風21号が接近する中での「ガラコンサート」の華麗なる3時間半に及ぶ一大フェスティバルを通して、エル・システマが限りない可能性を秘めていることに接した思いです。改めてその底力を感じさせました。と同時に、スズキ・メソードがエル・システマの創立当時に、故郷ベネズエラで大きな役割を果たしたことに想いを馳せ、現代の東京で大きな果実となって目の前で展開されていることに、とても大きな意義を感じさせました。

 「ガラコンサート」に出演の相馬子どもコーラスの子どもたちの躍動感に満ちたハツラツとした合唱は、とても見応えがありましたし、身体表現をフルに使って、音に命を吹き込む姿は、深い感銘を与えました。特に「お菓子の歌」、そして山本直純作曲の「遠足」で顕著でした。

 駐日ベネズエラ大使夫人でもあるソプラノ歌手のコロン・えりかさんと共演した東京ホワイトハンドコーラスは、エル・システマジャパンと東京芸術劇場による共同プロジェクトとして2017年6月に生まれたばかりで、この日がデビュー公演。白い手袋をしてのパフォーマンス(手歌)により、聴覚障害など発声に困難を抱える子どもたちが音楽を表現する姿は感動的でした。本番公演後の囲み取材でも、代表して二人の子どもたちが応じ、ワクワクした時間を楽しんだ様子を語っていました。

 ベネズエラのララ州で2005年に結成されたヴォーカル・アンサンブルのララ・ソモスは、視覚障害を持ちながらも、卓越したアンサンブルを披露し、困難を乗り越える姿の崇高さまで感じさせました。

 エル・システマの活動に共鳴し、指導ボランティアとして貢献する音楽家たちによるフェローオーケストラには、前日の室内楽コンサートで素晴らしい演奏を聴かせた辻彩奈さん、田原綾子さん、堤剛さん、伊藤恵さん、そしてエディクソン・ルイスさんも参加し、一大ページェントを展開。まるでMGM映画黄金期のミュージカルレビューを見るかのような、目をみはるひと時でした。

 3日間は、次のようなプログラムでした。
10/21 「室内楽コンサート」よりシューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」ⓒHikaru.☆■10月20日(金)18:00開演  エディクソン・ルイス 室内楽マスタークラス
 東京芸術劇場シンフォニースペース

■10月21日(土)14:00開演  エディクソン・ルイスと仲間たち 室内楽コンサート
 東京芸術劇場コンサートホール
 辻彩奈(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、堤剛(チェロ)、エディクソン・ルイス(コントラバス)、伊藤恵(ピアノ)
・ボッテジーニ:ヴァイオリンとコントラバスのためのグラン・デュオ・コンチェルタンテ
・ボッテジーニ:チェロとコントラバスのためのデュオ・コンチェルタンテ
・シューベルト:ピアノ五重奏曲 イ長調 Op.114.D.667「ます」

■10月22日(日)14:00開演  エル・システマ ガラコンサート
 東京芸術劇場コンサートホール
第1部 相馬子どもコーラス、古橋富士雄(指揮)
・相馬盆唄
・お菓子の歌
 ①わた菓子 ②チューインガム ③ソフトクリーム ④たいやき ⑤おせんべ ⑥ポップコーン
・被曝のマリアに捧げる賛歌(ソプラノ:コロン・えりか)
・唱歌の四季より ①紅葉 ②雪
・五つのこどもうたより ①つきのひかり ②うたをうたうとき ③ことり
第2部 ララ・ソモス(ヴォーカル・アンサンブル)
第3部 井上道義(指揮)、エディクソン・ルイス(コントラバス)、フェローオーケストラ(管弦楽)、相馬子どもコーラス
・クーセヴィツキー:コントラバス協奏曲ト長調
・山本直純:児童合唱と管弦楽のための組曲「遠足」
 ①光る ②歩く時の歌 ③おべんとう ④城跡 ⑤山の上の合唱 ⑥家路
10/22のガラコンサート。相馬子どもコーラス、ララ・ソモス、東京ホワイトハンドコーラス、フェローオーケストラによる盛り上がりは、最高潮に! ラッキー池田さんらによる振り付けも見事でした。写真:FESF/2017/Koichiro Kitashita
→エル・システマジャパンの報告記事

スズキ・メソードご出身の辻 彩奈さん、堤剛さんにミニインタビュー

10月21日(土)の「エディクソン・ルイスと仲間たち 室内楽コンサート」に出演された辻 彩奈さん、堤剛さんに、リハーサル後にインタビューをさせていただきました。
ⓒHikaru.☆
辻 彩奈さん(ヴァイオリニスト)
「ルイスさんとの共演は初めてでしたし、ボッテジーニでは、三弦のコントラバスで弾かれていて、びっくりしました。一昨日、昨日とリハーサルを重ねて、どんどん親しくさせていただきました。エル・システマのことは、これまであまり知らなかったのですが、エル・システマの創立時にスズキ・メソードを伝えられた小林武史先生の弟の小林健次先生が、スズキ・メソードの夏期学校にいらした時に、私自身、健次先生に習うことを決めたというご縁もありましたし、2007年のスズキ・チルドレンコンサートにも出演させていただき、とても親しみを感じています。私がスズキを始めたのは3歳からで、東海地区の青山泰宏先生のお教室に通いました。実は、父も青山先生のお父様や、竹澤恭子さんを育てられた山村晶一先生のもとで3歳からスズキ・メソードでヴァイオリンを始めていて、スズキ・メソードOB・OG会の会員番号1番でもありますので、大きなご縁を感じます。お世話になったスズキの先生方とも年賀状のやり取りや、東京でのコンサートに来ていただいたりして、いつも応援していただいています。すべてが出会いで、嬉しいです」

ⓒHikaru.☆
堤剛さん(チェリスト)
「ルイスさんには、天与の才がありますね。一音一音がすでに音楽になっています。エル・システマは創立時のスズキとの関係がよく知られていますが、本当に最初の出だしで、エル・システマがスズキと出会ったことが、良かったのだろうと思います。鈴木鎮一先生が『音楽を演奏することは、言葉を喋るのと同じだ』とおっしゃった通り、自然なものです。それが、ルイスさんは身につけておられるし、血となり肉となっています。ボッテジーニの作品は本当に難しい曲で、私も初めての演奏になりますが、ルイスさんは楽々と弾かれています。それも意味があって、楽々と弾かれているところが素晴らしいと思います。アンサンブルでも語りかけるようなところが随所にあって、こういう音楽作りもあるんだなと、とても楽しい時間でした」

チームワーク抜群のシューベルトの「ます」。ある日の練習後、「鱒寿司」を食べたことも、それぞれの親近感を増すきっかけに。演奏では、まるで会話のようなアンサンブルの楽しさを十二分に感じさせました。ⓒHikaru.☆