才能教育研究会は、2018年8月20日(月)に定時総会を開催し、総会後の第1回理事会において、早野龍五会長が、2期目の会長として再選されました。これまでの2年間の実績とこれからの課題について、皆様へのメッセージをお届けします。

まず、2年間を振り返ります。

現状の把握と共有の場づくり

 1番のトピックは、2017年4月23日(日)に国際文化会館で、才能教育研究会70年間の歩みの中で初となる外部評価委員会を開催したことです。7名の各界で活躍されておられる評価委員の皆様に、本会の優れているところ、今後の課題となるところを語っていただき、会員向けの機関誌198号でも「スズキ・メソードへの提言」と題した特集記事で、当日の内容をお知らせしました。この時のご意見の数々は、今も糧となっております。→マンスリースズキ2017.5


 また、約800名の指導者の皆様との懇談会を私自身が全国各地に出向く形で行ない、ほぼ全員の方々と話す機会を設けました。それぞれの地域の様子を肌身に感じるとともに、私への期待や日常的に努力しておられるところなどを含め、忌憚のないご意見をいただくことができました。また、若手指導者とも全国指導者研究会の場などを通して意見疎通を図り、その情熱を具体的に得ることができました。今後も積極的に懇談していきたいと思っていますし、各地での講演活動についても、さらに継続していきたいと考えています。一方で、指導者とはインターネット上のコミュニケーションツール「サイボウズ」を使い、様々な問題について情報を共有する場を作りました。積極的な意見なども展開され、会長として、そのすべてに目を通してきました。2019年3月に「サイボウズ」が終了するため、別のツールを現在選定中です。→マンスリースズキ2017.1

基本に立ち返った卒業録音制度

 卒業録音制度は、スズキ・メソードのシンボルであり、本会の重要な事業でもあります。時折あった再提出という状況をなくし、基本となる「意欲づくり」を大切にする方針に戻しました。録音された演奏のクォリティが足りないとすれば、それは直接指導者に対して喚起するのが正しい姿であると考えた結果です。それにより、卒業名簿の作成も早く着手できるようになり、3月に行なわれるピアノ科卒業式にも間に合うようになりました。小さなことですが、鈴木先生のご意思に沿った形に戻すことができたと思っています。

指導者養成の新しい仕組み

 国際スズキ・メソード音楽院だけで将来のスズキ・メソードの指導者を養成するには、限界があることがわかりました。そのため、2018年4月より、各地のティーチャートレーナークラスの力をお持ちのベテラン指導者に預け、松本に行かなくても指導者養成が可能な仕組みに変更しました。結果が出るまでには、しばらくかかりますが、この方式で一定の成果が出ることを期待しています。なお、ピアノ科とフルート科は、初級指導者養成制度を2017年から実施しております。

9年ぶりのグランドコンサート開催と広報活動

 2018年4月4日(水)、9年ぶりとなる第54回グランドコンサートを開催しました。ほとんどの生徒さんは初めての体験となりましたが、天皇・皇后両陛下、高円宮妃久子殿下のご臨席を賜り、エル・システマジャパンの子どもオーケストラとも共演するなど、話題が多く、マスコミからも大変多くの注目を浴びました。駅貼り、中吊り広告、沿線のミニコミ誌、新聞、テレビなどこれまでに比べても取り上げられた量は飛躍的に増えました。また、東京スカイツリー®️の観光PRコーナーでは、3月の1週間、松本市とスズキ・メソードのPRを展開。多くの来場者から様々なお問い合わせを受けるなど、大きな関心を持たれました。
→マンスリースズキGCスペシャル

 他の広報活動としては、毎日新聞社の「毎日メディアカフェ」での展開、「学びのフェス」への出展、ほぼ日新聞や音楽之友社のWebマガジン、ワールドファミリー株式会社公式サイトでの展開、さらには、ピアノ科の東 誠三先生の監修を受け、YouTubeの動画活用を展開するなど、様々なチャネルに対して、力を注ぎました。

才能教育会館の改修と受賞

 私が会長になる前から決まっていた会館の改修工事が無事終わり、2017年6月の全国指導者研究会から使用できるようになりました。国内外からの一定額以上の寄付に対しては、感謝の印としてお名前を銘板にして掲示しました。おかげさまで2018年1月、松本市から「建築物・工作物部門」で景観賞をいただきました。賞といえば、2018年6月には、学術芸術文化功労団体として、長年にわたるスズキ・メソードの研究実践と普及活動の功績に対して、長野県知事賞を受賞したことも嬉しいことです。
→マンスリースズキ2017.6
→マンスリースズキ2018.7

東京大学との共同研究

 このマンスリースズキや機関誌でも紹介をしてきた東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉研究室との共同研究は3年目に入りました。2017年夏はスズキ・メソードで学ぶ子どもたちを対象に調査研究をしましたが、この夏はスズキ・メソードで学んでいない東京大学附属中学の生徒を対象に研究を進めており、両方のデータが揃った段階で、学会発表に入ることになります。どのような結果が出るか、大変期待しているところです。
→マンスリースズキ2017.10

エル・システマジャパンとの事業協力提携

 マンスリースズキ8月号でお知らせしたばかりですが、エル・システマジャパンの活動において、スズキ・メソードの力を貸して欲しいというご要請に、今後はさらに応えていくことになります。今回の事業協定では、2017年からスタートしている長野県駒ケ根市でのエル・システマ子どもオーケストラの練習への本会指導者の継続派遣や分数楽器の寄贈協力などを皮切りに、オリンピックイヤーも見据えて、さらに様々な協力をしていくことを目指しています。
→マンスリースズキ2018.8

0〜3歳児コースのさらなる充実

 本部直轄で活動をしてきた0〜3歳児コースでは、麻布十番教室と松本教室がすでに経済的に自立し、活動を展開しており、その他の教室も順に自立していくことになります。その際に、統一した教材作り、教室運営のノウハウの共有など、全体を統括する責任者の必要性を強く感じており、そのために、8月20日付きで村尾忠廣前理事に「0〜3歳児コース特別講師」として就任していただきました。スズキ・メソードとしての必要なカリキュラム設定を始め、小さな規模でも開催できる0〜3歳児コースの展開案や、0〜3歳児コース認定指導者制度の制定など、今後の確実な進展が期待されます。

新しい理事会体制

 以下のメンバーで新しい理事会を構成しました。いずれも任期は2年です。
 会長     早野龍五 (東京大学名誉教授)
 業務執行理事 木村眞一 (弁護士、スズキ・メソードOB・OG会会長)
 業務執行理事 黒河内健 (前エプソン・ヨーロッパGmbH社長)
 業務執行理事 末廣悦子 (東海地区ヴァイオリン科指導者)
 業務執行理事 永田香代野(関東地区ピアノ科指導者)
 理事     佐藤文子 (俳人、松本市芸術文化振興財団評議員)
 理事     寺沢和男 (松本市文化スポーツ部部長)
 理事     榊 直樹 (学校法人東邦学園理事長)
 理事     佐藤 満 (関東地区チェロ科指導者)
 理事     中島 顕 (東海地区チェロ科指導者)

財務体質の強化で黒字体質へ

 会計の透明化とともに、事務局スタッフの自然減に対しては、残りのスタッフを適材適所に配置することで、活動の水準を維持しています。また、財務体質を維持するためにも、それぞれの部分で、力を注いだ結果、少子化に伴い、長年続いてきていた赤字体質が、8,000万円の黒字決算となる予定です。「監査法人からも、健全です」と折り紙をつけていただくことができましたし、3年後に開催を発表しております第55回グランドコンサートのための積立金も確保することができています。

そこで、次への課題です。

課題を解決していく段階へ

 会長としての実務の中で、経営基盤を盤石にし、公益社団法人としてのコンプライアンスを重要視し、ガバナンスとして不具合のところが見つかれば、それを果敢に直していきます。いわば、経営者としての実務をきっちり行なうことで、「結果をしっかり出す」ことを目標にしています。その意味で、最初の2年間でいただいた課題を今度の2年間でしっかり解決していく段階に入ったと言えるでしょう。JASRACとの関係についても、いい関係を構築していきたいと考えています。

会員の満足度アップへの努力

 会員の皆様から届きます電話やメールなどには、多くのお問い合わせの中に、少なからずクレームに当たるお問い合わせがあります。一例ですが、昔ながらの慣習で教室運営をされておられる指導者との間で、意思の疎通が図れていないなどのケースがあります。レッスンへの付き添いやお家でのお稽古の仕方、来週までの声かけなど、今の忙しい親御さんにとっては大変な部分などについて、私たちも今のスタイルに合わせた声かけや指導法を研究していく必要があるのだろうと思います。ただ、時代が変わっても鈴木鎮一先生の教えを今の親御さんに、そして次の世代のみなさんにお伝えすることを大切に思う気持ちが、どの指導者にも根っこの部分にあります。今後、私たちも研究を重ねていきたい重要なテーマです。

若い指導者への環境整備

 教室の運営、新しい生徒さんの獲得、親御さんとのコミュニケーションアップなど、特に若手の指導者にとっては大きな壁に直面することもあります。そのための研修を充実させ、単なる音楽教室の先生ではない、スズキ・メソードの指導者としての自立を様々な場面でバックアップしていきたいと考えています。派遣制度のブラッシュアップなども必要で、若い指導者たちが、円滑に教室をスタートするための制度設計を促進していきます。

課題の一つは、広報

 今までにないほどのメディアへの露出があったグランドコンサートの告知や反響については、先ほど触れたとおりです。ところが、だからと言って会員増には繋がっていないのが現状です。科学技術館で開催した「学びのフェス」についても、その瞬間は多くの親子がスズキ・メソードを体験していただき、満足感を得られたとしても、すぐに入会に繋がるわけではありません。これが事実であり、広報として何をすればいいのか、正解が見えないというのが実情です。

 公式サイトの充実は喫緊の課題ですし、何よりもスマホ対応が急がれます。そして生徒さんやこれからの生徒さんの声を聞くことも、大切な視点でしょう。公式サイトについては、現在、教室検索ページの充実化を急いでおります。トップページなどへのご不満についても、一つひとつ解消していきます。