国際スズキ協会(ISA)理事会に行ってきました。
会長 早野龍五

 国際スズキ協会(International Suzuki Association: ISA)は、「スズキ」の名前と権利を保護し、スズキ・メソードの全世界での発展をはかるため、1983年に作られた非営利組織です。当初、その世界本部は松本に置かれ、フルート科特別講師の髙橋利夫先生が代表でしたが、現在は米国で法人登記され、米国のヴァイオリン科の先生で、松本滞在経験のあるAllen Liebさんが、CEOを務めておられます。
→国際スズキ協会

 ISAは、図のように、日本(TERI:才能教育研究会)、米国(SAA)、ヨーロッパ(ESA)、汎太平洋(PPSA)、アジア圏(ARSA)の5つの地域で構成されています。現在、全世界には約10,000人のスズキ指導者がおり(※1)、ISAは指導者一人あたり年間6ドルの会費を集めることによって運営されています(※2)。

(※1) 日本と異なり、例えばESAのヴァイオリン科では、1巻を教えることができる先生、3巻までの先生、5巻までの先生、7巻までの先生、10巻までの先生と、先生が5段階にレベル分けされています。他の地域にも、これと類似のレベル分けがあります。
(※2)本会は、年に1回、指導者の人数分を取りまとめて、本部から送金しています。


理事会最終日の記念写真 (参考までに)前列左から:Pasquale Razzano (Member-at-Large / 2016-2020)、豊田先生、早野(TERI / 2016-2018)、二列目:Simon Griffiths (PPSA / 2017-2019) 、Allen Lieb(CEO)、三列目:Pamela Brasch (SAA/ 2016-2018)、Carey Beth Hockett (Member-at-Large / 2017-2022)、Martin Rüttimann (ESA / 2017-2019)、四列目:Hiroko Driver Lippman (Member-at­Large / 2016-2021)、Lan Ku Chen (ARSA / 2016-2018) ISAの理事会は各地域の代表5名とそれ以外のメンバー3名(現在は全員が米国)、そしてCEOと名誉会長の10名で構成され、年に1回開催されます。

 今年の理事会は、10月15日〜17日にニューヨークで開催され、日本からの出席者は、私と、President(名誉会長)の豊田耕兒先生です。豊田先生は今年で19回目、私は、昨年のニュージーランドに続き、2回目の参加となります。

 理事会の議長は任期2年、5地域持ち回りで、現在はESA代表のMartin Rüttimannさんです。Rüttimann先生は、昨年の夏期学校でヴァイオリンのグループレッスンを指導してくださいましたので、覚えておられる方も多いと思います。

 理事会の議題は、ISAの決算・予算、各地域の活動報告、楽器科委員会の活動状況の確認(※3)、新しい楽器科を作ることの可否、スズキ商標の管理状況と必要な法的措置、規定集の見直し、指導曲集などの出版と印税の状況、議長と理事の人事、など多岐にわたり、連日、朝9時から夕方5時過ぎまで、白熱した議論が続きました。

理事会初日の夜、Liebさんが教えておられるニューヨークのThe School For Stringsで、先生や生徒さんに向けて、鈴木先生の思い出を話される豊田先生 最終日の10月17日は、鈴木鎮一先生のお誕生日でしたので、皆で生誕120周年を祝ってお昼を食べました。

 来年から2年間の議長はARSAのChenさんで、私がその間副議長、その次の2年間は私が議長を務める予定です。また、今回の会議席上で豊田先生は、「次のPresidentを選出していただけるのであれば、私はそろそろ職を辞したい」と発言されました。これを受け、ISAの理事会の中にPresident選出の委員会が作られました。

理事会2日目の夜のパーティーにて。豊田先生とLiebさん 日本はスズキ・メソード発祥の地ではありますが、ISAの理事会では投票権を持つ8人の理事の中で一票を行使する立場です。理事の半数とCEOが米国という状況が長年続いたことで、ISAの運営、指導者養成制度、新しい楽器科の設立、指導曲集の改定・出版、新しい加盟国の扱い、指導者の国際交流など様々な点で、TERIとそれ以外の地域との違いが広がってきている、ということに危惧を感じました。豊田先生も同じお考えだと拝察しました。鈴木先生の理念が全世界で正しく広まるように、TERIがISAの中で存在感を示すことは極めて大事なことだと改めて認識した理事会でした。

(※3)日本はヴァイオリン、ピアノ、チェロ、フルートの4科ですが、ISAの楽器科委員会には、この他に、ヴィオラ、コントラバス、金管楽器、ギター、ハープ、マンドリン、オルガン、リコーダー、声楽、SECE(幼児教育)があります。