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ヴィオラを愛する先生たちが集い、研鑽を深める場、
それがヴィオラ研究会です。

 2018年10月29日(月)に松本の才能教育会館ホールで開催されたヴィオラ研究会。その時、マンスリースズキ編集部は初めてヴィオラ持参で参加させていただきましたが、今年最初のヴィオラ研究会が東京で開催されると伺い、今回もヴィオラ持参で参加してきました。練習会場は池袋の東京藝術劇場地下2階の練習室。10時30分の開始時間よりもかなり早く、皆様お揃いでした。

 ヴィオラ研究会は、ヴィオラを演奏することが大好きなヴァイオリン科の先生たちによる自主的な集いで、35名ほどの先生方が登録されています。ヴィオラを愛してやまない豊田耕兒先生から直接、ヴィオラのレッスンを受けられるのですから、この上ない喜びでもあります。

 この日のテーマ曲は、今回もヴィオラの指導曲集第5巻から以下の作品が選ばれていました。ちなみにヴィオラ指導曲集は、アメリカのアルフレッドから出版されているインターナショナル版が日本でもアマゾンなどで入手可能です。

・カール・ボーム:無窮動(代奏レッスン:福田優史先生)
・マラン・マレ:「5つの古いフランス舞曲」よりL'Agréable, La Provençale(代奏レッスン:山中美知子先生)
・マラン・マレ:「5つの古いフランス舞曲」よりLa Matelotte, Le Basque(代奏レッスン:星めぐみ先生)

 代奏レッスンとは、参加者の中から毎回一人がみなさんの前で演奏を披露し、その楽曲へのアプローチを豊田先生はじめ全員に聴いていただくスタイルで、いつしか定着した形になっています。3人の先生方のヴィオラの滋味溢れる音色は、それぞれが温かく、しかもご自分の取り組み方を仲間たちと積極的にシェアする感覚があり、豊田先生から様々な指摘を受けながら、全員で演奏し、レッスンを共有していきます。豊田先生はご自分のアプローチを開陳されながらも、様々な質問を受けることで、さらに研究を深めていらっしゃいました。

 事前に研究会の委員長である野田豊子先生から、豊田先生によるアーティキュレーションの変更、シフティングの変更、場合によっては音符の変更について、書き込まれている楽譜が提供されていますので、参加の先生方は従来の楽譜の記述と豊田先生校閲の両方を比較しながら、研究会に臨むことができます。今回の場合も、カール・ボームの楽譜で43小節のところにある♭で書かれているEs音を、♭を取ったE音にするよう、ご提案がありました。また、57小節では、楽譜の記述D-Fis-A-DをFis-D-Fis-Aに直すことで、4小節単位の曲が分かりやすくなるとのご指摘がありました。また、ボームの作品でスピッカートやディタッシェを学ぶことの大切さについてや、転調する41小節でPで演奏することについてもお話がありました。

 続いては、マラン・マレの5つの古いフランス舞曲より第1曲L'Agréableと、第2曲La Provençale。マラン・マレは、バロック期のフランスのヴィオール奏者で作曲家。作曲家リュリに気に入られた方です。映画「めぐり逢う朝」で主人公として描かれたこともあります。ヴィオラ指導曲集には、「5つの古いフランス舞曲」の第3曲La Musette以外の4曲が収録されています。豊田先生は、マラン・マレがフランス人であることから、音色の変化を大切にされた方と評されていました。それだけに、第2曲La Provençaleの62小節のような、音色を生かすためのセカンドポジションを使ったシフティングを薦められていました。

 この辺りで、ランチタイムになりましたので、大きないけすのある和食レストランで刺身定食に舌鼓を打ちながら、お話時間です。それぞれの近況を話しながらも、自然とヴィオラの話になります。豊田先生が「無伴奏チェロ組曲のヴィオラ版で1番と3番はよく演奏してきたので、そのうち2番をやりたいですね」とおっしゃったのが印象的でした。ニ短調の名曲ですので、これは楽しみです。

 ところで、東京藝術劇場の目の前の池袋西口公園は大きな囲いがされていました。どうもここのスペースは、グローバルリング(仮称)という名前で野外劇場ができるようです。東京オリンピックを前に、池袋ウェストゲートパークも大きく様変わりするのかもしれません。

 さて、午後は、残りの2曲。マラン・マレ:「5つの古いフランス舞曲」よりLa Matelotte, Le Basqueでした。「この時代の作品は、一つひとつの音をはっきりさせることが大切」と豊田先生。アーティキュレーションやトリルなど、時代らしさの表現が求められるのです。

 最後にカール・ボームとマラン・マレ4曲をもう一度復習。この日のすべてをおさらいして終えました。

 次回のヴィオラ研究会は、全国指導者研究会が開催される2019年6月。様々な項目でぎっしりの研究会の日程の中で、ヴィオラ研究会の時間をどこかで捻出する必要がありそうです。この日の最後に、豊田先生から今後の研究予定の楽曲が提示されました。大変示唆に富んだ作品が並びました。今後、このような作品を一つひとつ研究していくことになります。

第6巻
・J.S.Bach:Arioso
・Brahms:Hungarian Dance No.5

第7巻
・Suite in A Major, L. de Caix d'Hervelois
・Handel/Casadesus:Concerto in B minor

第8巻
・Frescobaldi/Cassado:Toccata
・Vivaldi:Concerto in B♭ Minor
・Mendelssohn:Song without Words, Op.109
・Leclair~Sarabande:Sonata in G minor
・Leclair~Tambourin:Sonata in G minor
・Telemann:Fantasia Ⅶ
・Hummel:Fantasie for Viola and Orchestra
・Bruch:Romanze, Op.85

研究科
・J.S.Bach:Brandenburg Concerto No. 6 in B-Flat Major, BWV 1051
・Mozart:Duo for Violin and Viola in G Major, K. 423
・Mozart:Duo for Violin and Viola in B-Flat Major, K. 424
・Mozart:Sinfonia concertante in E-Flat Major, K. 364
Hoffmeister:Viola Concerto in D Major
・Hoffmeister:Viola Concerto in B-Flat Major
・J.S.Bach:Cello Suites Nos. 1-6, BWV 1007-1012
・J.S.Bach:Sonatas and Partitas for Solo Violin, BWV 1001-1006
・Schubert:Arpeggione Sonata in A Minor, D. 821



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