12月6日(火)、横浜みなとみらい大ホールで開かれた第70回全日本学生音楽コンクール(毎日新聞社主催)。そのチェロ部門の大学の部で、桐朋学園大学2年の佐山裕樹さんが第1位の栄誉に輝きました。同コンクールでのチェロ部門は、第65回から新設され、これまでは東京大会のみ開催されてきましたが、今年から名古屋でも地区大会を実施。10月20日の東京地区大会(サントリーホール・ブルーローズ)で第1位を得た佐山さんは、同コンクールでの初めての全国大会を制覇したことになります。
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 さっそく、佐山裕樹さんご本人とお母様の栄子さんにお話を伺いました。

・今回のコンクールでは「全部出し切れた」とのコメントをされていましたが、どんなところが良かったと思われますか?
いつもコンクールと考えながら舞台に出ると緊張してしまうので、「今日は自分の演奏会なんだ!皆さんが聴きに来てくれているんだ!」と思いながら舞台に出ました。そのおかげで緊張もせず、自分の音楽に集中して、あの舞台を楽しむことができました。

・前回のコンクールで奨励賞に終わられてからの精進が並大抵ではなかったそうですが、どんなところに力を入れて努力を重ねられたのでしょうか?
練習の時間を去年より多くしたり、毎回練習を始める際にスケールやセヴシックをやるようにと基本的なことから見直しました。また、僕の師匠でもある倉田澄子先生も僕にあった練習方法を毎回教えてくださいました。

・倉田澄子先生が教えてくださる裕樹さんにあった練習法というのは、例えばどんな内容ですか?
開放弦で1弓10拍、9拍、8拍…2拍、1拍、2拍…10拍というように1拍のテンポは変えずに、弓の圧力と弓の返しに気をつける練習方法などです。これができるようになると弓の圧力の安定であったり、返しが綺麗になります。

・予選からのすべての演奏曲を教えてください。
東京地区大会では、バッハの無伴奏チェロ組曲第3番の「ジーグ」と、シューマンの幻想小曲集より1曲目と3曲目。全国大会ではプロコフィエフの交響的協奏曲より第2楽章を演奏しました。

・今回のコンクール全体を通して、どんなことを感じられましたか?
昨年の悔しさから、この1年間"次こそは悔いのない演奏をして1位をとりたい"と思ってきました。そのために毎日コツコツ練習しました。練習は決して楽しいものではなく、辛いこともあるのですが、本番ですべてを出し切れた時に、練習を続けてよかったなと感じました。

・お母様をはじめ、ご家族の支えも相当にあったと思います。今年は東欧へのご旅行もご一緒にされたそうですが、コンクールを受けるにあたり、どんな言葉をいただきましたか?
現在一人暮らしをしていて家族とは中々会えないのですが、家族の支えがあったからこその1位だと思っています。母からは「コンクールと思わないで、(演奏することを)楽しみなさい」というような言葉を言ってくれました。支えてくれた家族とともに、倉田先生や伴奏をしてくださった和田晶子先生にも感謝の気持ちでいっぱいです。

・ヨーヨー・マとの共演が夢と伺いました。いつ頃から、どんなところに憧れていらっしゃるのでしょうか。具体的に教えてください。
小さい頃からヨーヨー・マのCDは聴いていたので、いつも参考にしていました。音色が好きです。それに、オーケストラとコンチェルトを演奏している動画を見るとわかりやすいのですが、本当に楽しそうに、笑顔で演奏をしていて、そういうところにも本当に憧れています。

・宮田豊先生のもと、スズキ・メソードで習っていた頃の一番の思い出は、どんなことでしたか?
練習をあまりしていなくても、怒ることなく親身にできるまで付き合ってくださった宮田先生の姿は今でも覚えています。あとは、クラス全員で演奏するチェロ・アンサンブルは、いつもとは違ういろいろな楽しい曲もできて楽しかったです。

お母様の佐山栄子さんにもお話を伺いました。

5〜6歳の頃の裕樹さん。かわいい!「谷あり山ありの中での今回の受賞、大変嬉しく思っております。当日は、私の方が緊張して裕樹の演奏のできがよくわかりませんでした。結果が貼り出された時も、ドキドキして見に行けなかったほどです。終わってから審査員の先生方、皆様からお褒めのお言葉をいただき、やっと喜びを感じることができました。昨年はショスタコーヴィッチの第4楽章で暗譜が5段も飛ぶハプニングがありました。今回も暗譜がトラウマになっていたようで、暗譜のことを最後まで気にしていました。離れて生活していますので細かいことは分かりませんが、朝早くから学校へ練習に行ったり、練習量を増やしたりしているのを聞いて、裕樹なりにがんばっているのかなと遠くから見守っていました。中3の秋から倉田先生にお世話になっておりますが、どんな時も温かく熱心にご指導くださる先生に、本当に感謝しております。ありがとうございました」

■佐山裕樹プロフィール
栃木県宇都宮市出身。4歳よりスズキ・メソードでチェロを始める。2009年第3回横浜国際音楽コンクール弦楽器中学の部第1位。第55回鎌倉市学生音楽コンクール全部門総合第1位。鎌倉市長賞受賞。14年、第14回泉の森ジュニアチェロコンクール高校生以上の部金賞。2016年9月の演奏風景です!第68回全日本学生音楽コンクールチェロ部門高校の部第3位。第19回コンセール・マロニエ21弦楽器部門第3位。そして、このたび第70回全日本学生音楽コンクールチェロ部門大学の部第1位を獲得。チェロを宮田豊、林峰男、倉田澄子各氏に師事。室内楽を斎木隆、原田幸一郎、毛利伯朗、山崎伸子、堤剛各氏に師事。現在、桐朋学園大学音楽学部2年在学中。

当日の演奏がNHK-FMで放送されます。また、全日本音楽コンクールの公式サイトでは動画も公開される予定です。
NHK-FM  2017年1月7日(土)午前7時20分〜11時50分(予定)
公式サイト動画 →こちら