髙橋利夫先生を敬愛される米国の指導者たちが、
テネシー州とバージニア州でのサマースクールに髙橋先生を招き、サマースクールを開催。 

 スズキ・フルート・メソードを創設された髙橋利夫先生が、今年もアメリカのサマースクール、ETSU(East Tennessee State University)とSAGWA(Suzuki Association of the Greater Washington Area)に招かれ、子どもたちやフルート指導者にワークショップを行ないました。特に今年37回目の開催となったETSUには、1982年以来数多く招かれ、アメリカにおけるスズキ・フルートの発展のために、非常に大きな貢献をされてきました。
 それぞれの様子をレポートしましょう。

The 37th East Tennessee Suzuki Flute Institute 2019

Join us for a wonderful, inspiring week with TOSHIO TAKAHASHI,
steeped in the love and affirmation of the Suzuki Method.

 6月21日〜29日、テネシー州ジョンソンシティにあるイーストテネシー州立大学の音楽学部で、この呼びかけに呼応された多くのフルート指導者や指導研修生、生徒さんが「イーストテネシー・スズキ・フルート国際研究大会2019」に参加されました。この大学の音楽学部には「スズキ・フルート教育学」科があり、その大学キャンパスが会場となりました。

 髙橋先生は6月23日〜28日、フルート指導者のための特別コース「Developing Tone and Expression through the repertoire」を行ないました。これは鈴木鎮一先生の著書「音楽表現法」の中にある「表現こそは最高のテクニックである。音や指はその表現のためのツールである」との教えを高橋先生が大事にされていて、「オペラのアリアとフルートのレパートリーを通しての音と表現の発展」をテーマとしたワークショップです。
 6月29日には上級生のためのマスタークラスのレッスンをされました。

 6月27日には、スズキ・メソードのフルート科特別講師である宮前丈明先生のリサイタルが開催されました。曲目は以下の通りです。
・モーツァルト:アンダンテ ハ長調
・シューマン:幻想小曲集
・ビュセール:プレリュードとスケルツオ
・ボルヌ:カルメンファンタジー
他に指導曲集より3曲という盛りだくさんなプログラムでした。スズキ・メソード出身者ならではの高い感性あふれる演奏で聴衆を魅了しました。

 最終日6月29日には、参加者全員による祝賀コンサートが、学内のマティスリサイタルホールで開かれ、上級生のモーツァルト作曲フルート協奏曲第1番第3楽章 から順次フルート指導曲集の曲が演奏されました。このコンサートは一般に広く公開され、感動のうちにESTUのサマースクールは幕を閉じました。

ETSUを主宰したレベッカ・パルッツィ先生のコメント
 第37回イーストテネシー・スズキ・フルート国際研究大会には、オーストラリア、2つのカナダの州、(アメリカ国内の)6つの州から参加者が集まりました。私たちは髙橋利夫先生を「私たちの特別な先生」として再びお迎えしました。
 髙橋先生は上級のフルート指導者のための15時間コースで、「レパートリーを通して音と表現を発展させる」というタイトルで教えてくださいました。また、5日間コースでマルセル・モイーズの教本Tone Development through Interpretation と、指導者と生徒のための毎日のレパートリークラス(全員で演奏するグループレッスン)を教えてくださいました。
研究大会では二つの指導者トレーナーのリサイタル、選ばれた一人の生徒のソロリサイタル、非公式な生徒のソロ、室内楽リサイタル、そして髙橋先生が指揮をされて祝賀コンサートを行ないました。研究大会は髙橋先生ご指導によるマスタークラスで終わりました。

The 19th SAGWA Flute Institute in Alexandria

 続いて、バージニア州アレクサンドリアで開催されたSAGWA主催のサマースクールに向かわれました。SAGWAも、 ETSUと同じように、指導者、指導研修生、生徒のための3つのプログラムが併設されたサマースクールです。髙橋先生はその3つのいずれも担当され、ワークショップを行ないました。

 指導者プログラム「オペラクラス」では、サン=サーンスのオペラ「サムソンとデリラ」から「春がやってくる」のアリアを、往年の名ソプラノ歌手マリア・カラスの演奏を題材に行なわれました。この髙橋先生のオペラクラスは非常にレベルの高い内容として有名で、フルートだけでなく、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、声楽などの演奏家や指導者が参加しました。

 指導研修生プログラムは15時間と決まっていて、6月30日〜7月5日まで毎日行なわれ、指導曲集第10巻のトゥルーのグランソロ3番、シャミナーデのコンツェルティーノのレッスンが行なわれました。

 生徒プログラムは、毎日髙橋先生指導のグループレッスンが行なわれ、その成果は最終日の祝賀コンサートで披露されました。参加生徒さんたちには、事前にフルート指導曲集の全曲を立派に演奏できるように練習しておくことが参加条件とされ、その中から選曲されたリストが開催日に発表され、グループレッスンが行なわれました。「参加者全員がよく準備をして参加していたので、とてもレベルの高いグループレッスンになった」と髙橋先生も喜んでおられました。

 参加者全員が演奏する最終日の祝賀コンサートは、髙橋先生の指導と指揮により、感動的なコンサートとなりました。

 髙橋先生は非常に密度の濃い多忙なスケジュールをこなされ、7月7日に帰国されました。

SAGWAを主宰したレベッカ・キャリーさんのコメント
 7月にバージニア州アレクサンドリアで開催した第19回フルート研究会は、マスター講師として髙橋利夫先生をお迎えし、興奮に包まれました。
 このイベントは髙橋先生に直接教えを受けた4人の実行委員が企画しています。その内の2人は松本の音楽院を卒業しています。
 40人を超える生徒たちと指導研修生たちが、台湾、ノースカロライナ、テネシー、ペンシルベニア、ニューヨーク、メリーランド、バージニア、そしてワシントンD.C.から集まりました。髙橋先生が出席されたのは今回で4回目となりました。
 髙橋先生は毎回、とても人気があり、生徒たちはスズキ・メソードの指導曲集にサインをしてもらい、一緒に写真を撮ってもらおうと行列を作っていました。
 髙橋先生の有名なオペラクラスでは、彼の独特で素晴らしい洞察力による音色の発展と表現の講義が行なわれました。そこでは、フルーティストだけでなく、ピアニスト、声楽家、ヴァイオリニスト、チェリスト、聴講者も一緒に受講しました。