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この夏、チェココンサートツアーを実施した品川ジュニアストリングオーケストラが、
「ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会 in Tokyo」(浜離宮朝日ホール)で演奏!

関東地区ヴァイオリン科指導者、野口美緒先生からの報告です。


国際音楽祭ヤング・プラハのポスター 1992年、世界の若手音楽家の育成と若者の国際交流をテーマにスタートしたという国際音楽祭ヤング・プラハ。毎年、約1ヵ月間、芸術文化の国チェコを舞台に、数多くのコンサートが開催され、ポスターには、すでにご活躍の演奏家の方々のお名前が並びます。その左上、オープニングを飾ったのが「どの子も育つ」 スズキ・メソードの子どもたち、品川ジュニアストリングオーケストラ(トゥインクル音楽院)、右下のフィナーレがチェリストの宮田大さんという事実に、参加スタッフ一同、心が震えました。

 品川ジュニアストリングオーケストラは、プロを目指す子どもたちの集まりではありません。卒業生でチェリストの印田陽介さんがプラハ音楽院留学中からご縁があったヤング・プラハ実行委員会のフィンダ志保子さんと、ヤング・プラハ日本事務局長であり、リトミシュル市親善大使の安東和民さんが、未来ある子どもたちのためにと力一杯ご協力くださって、このような幸運な機会をいただくことができました。

 1年以上の練習期間を経て、7月の日本公演、壮行会でのカルテット披露、そして8月26日〜9月4日のチェコツアー、チェコ人アーティストとの共演も経て今回、国際音楽祭ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会 in Tokyo 」で、ヨーロッパや日本の若い音楽家の皆様とともに舞台に上るという栄誉に浴することができたのです。その直前のチェコ大使館でのコンサートには、カルテットのメンバーにお声かけいただき、彼らはチェリストのトマーシュ・ヤムニークさんとも再び共演し、たくさんのあたたかい拍手をいただきました。

ドヴォルザークホールにて プログラムとしては、これまでのヤング・プラハに参加されていた指揮者の太田弦先生とソリストの周防(すほう)亮介さんとの共演を主催者側でアレンジしていただきました。曲目は1年半練習してきたモーツァルトの「ディヴェルティメント ニ長調 K.136」とチェコから帰国して9月に練習を始めたヴィヴァルディの「四季」より「冬」と決まり、初顔合わせはコンサート3日前! 緊張して固まっている子どもたちに、太田先生は「年齢が近いので」とおっしゃってにこやかに緊張をほぐしてくださり、出身地北海道の冬の「痛さ」に触れ、周防さんのヴァイオリンがその世界を音にし、彼らを次々に新しい音色と表現に引き込んでいきました。慣れ親しんだモーツァルトも太田さんのリードで明るく、潑刺と変化していきます。

 そして11月16日(水)16:30。学校から駆け付けた生徒たちが通された浜離宮朝日ホールの舞台裏では、あちらこちらの楽屋から美しいソロの練習が聴こえてきました。「大舞台に来た」という実感とともに緊張が走ります。チェコで共演させていただいたヤムニークさんが廊下に出てあたたかい表情で出迎えてくださり、みんなの目が輝きました。

 出演者の多いコンサートで、通しのみのリハーサル、休憩、そして本番。楽屋ではチェコのフルートアンサンブル「ティカリ」の皆様とご一緒でき、舞台袖では、ソリストが本番直前までどう練習するかも聴こえました。モーツァルトが始まると、太田先生の笑顔とエネルギーで子どもたちからも生命が湧き出て、歌ったり喋り出すようでした。

 そして、ソリスト周防さんの集中力に引き寄せられるように生徒たちも浜離宮朝日ホールに音を響かせます。周防さんの音が飛び立つと、こちらも触発されます。演奏には4名の指導者も加わり、私もその一人として、生徒とともに貴重な体験をさせていただきました。弓順などでミスをした子たちもいたようですが、それも普段の何倍も集中力を使ってこそ(しかも学校から駆け付けた後に!)の経験だったように思います。

 周防さんの素晴らしい「冬」の後でたくさんの拍手をいただき、カーテンコールもあったことに、子どもたち一人ひとりも役割を果たしたと私は信じています。スズキ・メソードで、音楽を通して人を育て、習得の過程でさまざまな能力を高めることを大切にしてきたことで実現したステージだったと胸が熱くなりました。

 さらに、出番の後に出演者が客席で聴くこともお許しいただきました。特に、ヴァイオリニスト、山根一仁さんの変幻自在な音に子どもたちも目(耳?)から鱗、そして最後の演目となったドヴォルザークのピアノ五重奏では、生徒たちもすっかり大ファンになったチェロのヤムニークさんも出演され、大いに感動・癒し・刺激などをいただける、夢のような時間でした。

 このコンサートに出演できたのは、ツアー参加者全員ではなく、在団歴が長めの生徒たちのみで、その中にも学校その他の事情で残念ながら出演できなかった人もいます。幸運にも体験できた人が得たことを周りに伝え、次の機会にはさらに大勢で素敵な音楽体験ができることを切に願っております。そして一人ひとりが立派な社会人として育っていくことを常に念頭に、指導者一同、今後も力を尽くします。

 最後になりましたが、改めてヤング・プラハのフィンダさん、安東さんをはじめ、ツアーとコンサートでお世話になった皆様、今回共演させていただいた太田弦さん、周防亮介さんに心より御礼申し上げます。

ヴァイオリン科指導者 野口美緒

当日のプログラムを紹介します。


ドヴォルザーク:スラヴ舞曲ト短調 (ティカリ)
・クラーク:ジグ ザグ ズー (ティカリ)
・フバイ:カルメン幻想曲 (岸本 萌乃加+太田紗和子)
・ショーソン : 詩曲 作品25 (中村友希乃+太田紗和子)
・ショパン:バラード第4番 (桑原志織)
・マルティヌー:オーボエ、ヴァイオリン、チェロとピアノのための4重奏曲ヨハネス・グロッソ+黒川+トマーシュ・ヤムニーク+ミロスラフ・セケラ)

・モーツアルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136(品川ジュニアストリングオーケストラ+太田弦)
・ヴィヴァルディ:四季より <冬> (周防亮介 +品川ジュニアストリングオーケストラ+太田弦)
・マルティヌー:2台のピアノのための3つのチェコ舞曲(菊地裕介+森田義史)※森田義史さんもスズキ・メソードのピアノ科出身のOBです。

ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品 作品75(山根一仁+阪田知樹)
・スメタナ : 演奏会用エチュード 嬰ト短調 作品17「海辺にて」(ミロスラフ・セケラ)
・ショパン : ポロネーズ 変イ長調 作品53(ミロスラフ・セケラ)
ドヴォルザーク:ピアノ5重奏曲第1番 イ長調 作品5(阪田知樹+ロマン・フラニチカ+黒川+中村洋乃理+トマーシュ・ヤムニーク)

参加の皆様からの声が届きましたので、ご紹介しましょう。

音楽をより愛し、高めてくださることを希望します。

 国際音楽祭ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会にご参加いただき、ありがとうございました。In Tokyoコンサートの演奏はとても素敵でした。スメタナの故郷リトミシュルやプラハのドヴォルザークホールでの演奏が若い皆様にとって貴重な音楽体験となり、音楽をより愛し、高めてくださることを希望いたします。

一般社団法人国際音楽祭ヤング・プラハ日本委員会会長
ピアニスト
岩崎 淑

新鮮な経験でした。

 自分よりも若い方とご一緒する機会は今のところ中々ないので、新鮮な経験でした。皆様のますますのご発展をお祈りいたします。


指揮 太田弦
(プロフィール)
1994年札幌市に生まれる。幼少の頃より、チェロ、ピアノを学ぶ。東京藝術大学音楽学部指揮科を首席で卒業。学内にて安宅賞、同声会賞、若杉弘メモリアル基金賞を受賞。現在、同大学院音楽研究科指揮専攻修士課程に在籍。2015年、第17回東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位ならびに聴衆賞を受賞。これまでに指揮を尾高忠明、高関健の両氏、作曲を二橋潤一氏に師事。山田和樹、パーヴォ・ヤルヴィ、ダグラス・ポストック、ペーター・チャパ、ジョルト・ナジ、ラスロ・ティハニの各氏のレッスンを受講する。

皆さんのエネルギーに触発され、とても良い音楽ができました。

 このたびは、品川ジュニアストリングオーケストラの皆さんと共演させていただけたことを大変嬉しく思っております。初めてご一緒しましたが、皆さんの若いエネルギーと真剣な眼差し、そして生き生きとした音楽にとても刺激を受け、僕自身もそれに触発されて皆さんと一緒にとても良い音楽ができたと思っています。

 これまでにもヴィヴァルディの「四季」は弾いてきましたが、今回はフレッシュな気持ちで演奏できたことを幸せに思っています。これからも品川ジュニアストリングオーケストラのますますのご活躍をお祈りするとともに、またご一緒できますことを楽しみにしております。

ヴァイオリン独奏 周防亮介
(プロフィール)
 7歳よりヴァイオリンを始め、12際で京都市交響楽団と共演。15歳で〈国際音楽祭ヤング・プラハ〉より招聘され、チェコにてプラハ室内管弦楽団と共演し、ヨーロッパデビューを果たした後、パリにてパリ管弦楽団、フランス国立管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、パリ国立歌劇場管弦楽団の演奏家と共演し、話題を呼んだ。2014年には、サンクトペテルブルクの〈音楽の家〉よりアジア人として初めて招聘され、国立サンクトペテルブルクアカデミーオーケストラと共演し、大成功を収めた。その他、日本の主要オーケストラとの共演のみならず、海外でも高く評価をされている。テレビ朝日「題名のない音楽会」、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」などにも出演。2009年 クロスター・シェーンタール国際ヴァイオリンコンクール第1位およびヴィルティオーゾ賞、EMCY賞。2010年 ダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリンコンクールで最高位及びスポンサー特別賞。2011年 東京音楽コンクール第1位及び聴衆賞。2012年 日本音楽コンクール第2位及び聴衆賞.2013年 IMA音楽賞、2014年 出光音楽賞、2015年度青山音楽賞新人賞受賞。2016年10月 ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール入賞及び特別賞。現在、東京音楽大学に特別特待奨学生として在学中。

舞台の上での出来事が、あっという間でした。


コンミスの大役を無事務めることができました! 浜離宮朝日ホールでのコンサートが終わり、長かったような短かったようなツアーがようやく終わりました。コンミスとして大変なことも多くありましたが、思い出に残る経験もたくさんありました。

 11月11日(金)にチェコ大使館でのコンサートに出演させていただき、チェリストのヤムニークさんと共演をしました。ヤムニークさんとの合わせでは英語で会話をしなければならなかったので苦労しましたが、ヤムニークさんの演奏にとても刺激を受けました。ヤムニークさんが入ることで音楽が止まることなく流れていくように感じました。演奏が終わったときにはたくさんの拍手をもらうことができ、とても嬉しかったです。非常に貴重な経験ができました。

 16日の記念コンサートでは、周防さん、太田さんと共演し、いつもと違う指揮者、初めて合わせるソリストの方と演奏ができ、新鮮な感じがしました。練習で初めてお会いしたとき、最初はとても緊張していましたが、太田さんも周防さんも、優しくご指導してくださったり、質問に答えてくださいました。本番前、不安や緊張を感じていましたが、演奏していくうちに指揮者やソリストの方に惹き込まれて演奏に集中することができました。舞台の上での出来事があっという間に感じました。

 チェコ大使館でのコンサート、浜離宮朝日ホールでのコンサート、どちらも一生の思い出に残る素晴らしい演奏会でした。2015年4月から約1年半、コンミスとして務めた経験を今後に活かしていきたいと思います。

 このような機会を作ってくださった方々、長い間支えてくださった方々、本当にありがとうございます。

ヴァイオリン 遠山聡美 高校2年

これからも人との出会いを大切にし、音楽の素晴らしさを伝えたい。

11月13日のリハーサル 今回のコンサートを通して、音楽を奏でるときは笑顔で伸び伸びと弾くことの大切さを教わりました。また、耳をダンボのように大きくして周りを聴き、各パート・一人ひとりが息を合わせて一つの音楽を作り上げていかなければならないということ、作曲家の伝えたい風情や感情を楽譜から読み取り、音で表現し、聴いているお客様に伝えるということなど“音楽の楽しさ”を改めて学ばせていただきました。

 浜離宮朝日ホールで演奏するのは初めてでしたが、会場に響きわたる冴えた音色を奏でる周防さんと、活気あふれる太田さんの指揮と、大好きな仲間たちと演奏できたことを誇りに思います。

 品川ストリングオーケストラはスズキ・メソードの中でも数少ないオーケストラ団体です。これからも人との出会いを大切にし、たくさんの刺激を受け、知識を蓄え、聴きに来てくださった方々に音楽の素晴らしさ、楽しさを伝えていけたらと思います。

ヴァイオリン 御舩安津 大学2年

この経験を今後に活かしていきたいと思います。

 国際音楽祭ヤング・プラハ東京公演では、指揮者の太田弦さん,ヴァイオリンの周防亮介さんと共演させていただき、チェコでのツアーに続いて、とても貴重な経験となりました。1年程前から練習を始めて9月1日、ヤング・プラハ音楽祭に参加して演奏したことは、とても思い出に残る感動的なものでした。その2ヵ月後、今度は東京でプロの方と演奏できて、とても嬉しかったです。 

11月13日のリハーサル 3日前のリハーサルで初めてヴィヴァルディの四季「冬」を周防さんと合わせ、周防さんの素晴らしい演奏を聴いて大きなパワーを感じ、改めて気が引き締まりました。ディヴェルティメントはチェコでも演奏していて、1年以上練習していた曲でした。指揮者が変わって変化する部分もたくさんあり、ついていくのに必死でしたが、太田さんはわかりやすく指導してくださいました。

 本番では最初は緊張しましたが、プロのお二人と弾ける喜びを感じながら演奏しました。ソロの美しいメロディを間近で聴きながら伴奏できて良かったです。綺麗なホールで自分たちの音が響いているのを感じることができ、気持ちよく演奏できました。短い時間でしたがたくさんのことを吸収でき、とても楽しかったです。この経験を今後の演奏に活かしていきたいと思います。

ヴァイオリン 市川明葉 中学3年

 国際音楽祭ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会 in Tokyoに品川弦楽団のメンバーとして娘を参加させていただき、ありがとうございました。今夏のチェコでの公演及び東京公演まで導いてくださったすべての先生方に感謝申し上げます。

市川静香 保護者

「国際音楽祭ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会」に参加させていただいて。

 今回、高1の娘が品川ジュニアストリングオーケストラの一員として、1116日浜離宮朝日ホールにおいて開催された「国際音楽祭ヤング・プラハ創立25周年記念演奏会」に参加させていただきました。

 「第25回国際音楽祭ヤング・プラハ」のオープニングコンサートとしてプラハ・ドヴォルザークホールで演奏させていただいてから、早いもので2ヵ月余りたちました。品川ジュニアストリングオーケストラは34年ごとにヨーロッパでのコンサートツアーを企画してくださっており、今回は6回目のツアーとなります。娘は前回のウィーンツアーに引き続き、2回目の参加となります。

 ヨーロッパツアーの参加者は小学生高学年から大学生まで、1年半前から練習に取り組み始め、1年前から夏合宿・春合宿など練習を重ねます。前回6年生で参加を決めた娘は、同じクラスのお友だちもいない中、練習参加やツアーに行くこと自体も心細く感じていたようですが、お兄さんお姉さん方が優しく接してくださり、とても楽しく有意義なウィーンツアーとなったようで、今回プラハツアーが決定した際にはすぐに「行きたい!」と参加を決めました。

ドヴォルザークホールで八木節 今ツアーでは、前回自分がしていただいたように、初めて参加するお友だちや小さい子どもたちのお世話などを本人なりに心掛けていたようです。また、プラハではドヴォルザークホールという素晴らしい舞台で、世界的チェリストであるヤムニークさんとの共演など大変貴重な経験もさせていただきました。「さくらさくら」や「八木節」の演奏にもチェコの方々からたくさん拍手をしていただき、改めて「音楽は国境を越える」ということを身をもって実感いたしました。

 帰国してからは今回の日本公演に参加させていただけるということで、プラハ公演とはまた違う曲目にもチャレンジいたしました。こちらも25周年記念演奏会ということで出演される方々は過去ヤング・プラハに出演された若手実力派のプロの方々ばかりのなかで、品川ジュニアストリングオーケストラも、太田弦さん、周防亮介さんとの共演という機会に恵まれました。リハーサルも含め、素敵な音色のシャワーを間近に浴びることができ、表現のしかたを考えることにより、本人の音に対する意識も変わってきたように思います。

 最後に、今回もツアー、コンサートと大変なご尽力をいただき、音楽を通して、国境を越え人として成長できる場を提供してくださった先生方、関係者の皆様に厚く御礼申し上げるとともに、ぜひ今後ともヨーロッパツアーを続けていただけますように切にお願い申し上げます。

ヴァイオリン 池田里美 保護者

自分の音楽に対する考え方が変わったようです

 今年の夏、品川ジュニアストリングオーケストラ(以下品弦と表記)のチェロパートトップとして、チェコ・プラハへ演奏旅行に行かせていただきました。今回の演奏会では国際音楽祭ヤング・プラハに参加し、音楽の聖地で奏でられる音に触れ、感じ、楽しむことができました。

 品弦は小学生から大学生で構成される幅広い年の仲間と年齢の枠を超えて、先生方の指導のもと生き生きとした音楽を作っていける素晴らしい弦楽団だと思っています。僕は、過去にも海外演奏旅行に参加し、今回で3度目となりました。最年少で参加し、高校、大学生の方々にお世話をしていただいていた時とは一変、自分が小さい子の面倒を見る立場となって、今回のツアーに臨みました。

 ドヴォルザークホールでの演奏では、世界で活躍されているチェリスト、トマーシュ・ヤムニーク氏との共演をさせていただきました。華美には感じられませんが、音の一つひとつに感情が込められたヤムニーク氏の演奏に心を打たれ、とても感動したと同時に、自分の音楽に対する考え方が変わったように思います。

チェコ大使館での、シューベルト:弦楽五重奏曲 11月11日にはチェコ大使館にご招待いただき、ヤムニーク氏とともにシューベルトの弦楽五重奏曲を演奏しました。この共演は一生の財産であり、とても刺激的なものでした。我々弦楽団と共演してくださったヤムニークさん、そしてこのツアーの成功のためご尽力くださった多くの方々、そして何よりいつも的確な指導で弦楽団をまとめてくださった先生方に本当に感謝しています。

 この先、自分がどのような道に進んでも、この経験は必ず生きると思います。本当にありがとうございました。

チェロ 城所碧泉 高校2年

バロックのチェロの音色に触れて

「私、失敗しないので」――テレビドラマで女医の決め台詞を耳にするたびに、こんな風に言えたらいいなと思っていました。浜離宮でのコンサートでヴァイオリニストの周防亮介さんと一緒にヴィヴァルディ「四季」の冬の伴奏をさせていただくことが決まったときのことです。チェロは2人きり、トップのチェロ奏者とは異なる譜面を一人で弾くことになり、「失敗は許されない」状況になりました。そんな不安は、指揮者の太田弦さんにお会いしたときに吹き飛びました。「楽しんで演奏しましょう、若者らしく!」と太田さんが指揮を始めると、魔法にかかったようにノリノリになっていくのがわかりました。周防さんのヴァイオリンからこぼれる音は、一音一音がとても澄んでいて、優しい音色なのに、私のチェロの音をも研ぎ澄ましてくれるような力強さがありました。浜離宮朝日ホールは音響が素晴らしく、弾いていると自分に羽がついて飛んでいくような、いい気持ちになりました。

ドヴォルザークが愛した庭で、三世に演奏を聴いていただく このコンサートは、夏の演奏旅行で参加した国際音楽祭ヤング・プラハの日本での25周年記念コンサートになります。チェコへの演奏旅行では、モーツァルトやスメタナに加え、ヴィヴァルディの「四季」の「夏」で、チェコで有名な13歳のヴァイオリニストのエダくんの伴奏をしました。その時はドヴォルザークホールの音響とエダくんの堂々とした演奏に圧倒されましたが、今回の浜離宮朝日ホールでの演奏はそれ以上に、音の美しさを心から楽しんで演奏できました。チェコでは、ヴィヴァルディの「2つのチェロのためのコンチェルト」も全楽章、伴奏しました。最終日には、チェコを代表する若手チェリストのヤムニークさんと印田陽介先生による同じ曲の伴奏をしました。「あぁこれがバロックのチェロの音なんだ」とヴィヴァルディが生きていた時代の楽器の音を聴いているような気持ちになりました。私は、それまでは、その曲(ドッペル)は「強く、重く弾くものだ」とばかり思っていましたが、ヤムニークさんは、音を短く、軽く、弓を飛ばして弾いていたのです。私は、いつかあんな音で弾けるようになりたいなと深く感銘しました。

 振り返ると、今年は、学校の合唱祭で「モルダウ」を歌い、金賞を受賞したことに始まり、私にとって「チェコの年」になりました。ドヴォルザークが過ごしたお庭に自分のチェロが在り、そのお孫さんの前で太陽の光を浴びながら演奏するなど、たくさんの貴重な経験ができました。ご指導いただいた先生方や事務局の方々には大変お世話になりました。とりわけ、2年間にわたり、日曜ごとに練習会場に正確に私とチェロを運び続けてくれた父に感謝を伝えたいと思います。

チェロ 釣田夏凛 中学3年

懐かしい土の香りがする音楽。      


 品川ストリングオーケストラのチェコ演奏旅行は、スメタナの故郷、リトミシュルで、地元の有名な合唱団KOSとの共演で始まりました。スメタナと同郷の合唱団が歌う「売られた花嫁」は彼らの体の一部になっていて、木造のスメタナ劇場に響きわたる観客の拍手とともにとても自然体でした。劇場を出ると、漆黒の空に満点の星が輝き、どこからか土の香りがしていました。一方で、品川の子どもたちの演奏は、精巧なガラス細工のような都会っ子独特の繊細さで、観客の心を揺さぶっていたようです。ボヘミアの黒土に東京のビルが建つような、この異質な文化の融合が、ツアー中にどんな化学変化を見せるのか楽しみになりました。

教会でのコンサート ツアー中、最も印象深かったのは、プラハから車で2時間ほど離れた町、ヘジュマヌーヴ・ヌニェステツでの教会コンサートです。英語どころかドイツ語も通じず、かろうじてロシア語がわかる老人がいるような社会主義国時代の面影が残る町でした。品弦による単独コンサートは、この町で1週間催された音楽祭の最終日に当たっていました。

 夕方4時過ぎから仕事を早めに切り上げた町民が続々と集まり、教会は瞬く間に満席になりました。中世ルネッサンス建築の教会は、足元から音が響いてくるようで、観客とオーケストラの一体感を存分に味わうことができました。アンコールで弾いた「モルダウ」には、音楽に合わせて体を揺らす方、目を閉じてじっと聴き入る方、涙ぐむ方などの姿がありました。実はこのコンサートは、難病を抱えた赤ちゃんの治療のためのチャリティでもあったのです。教会の入口に置かれた透明の箱は、いつしか寄付でいっぱいになっていました。演奏後、集まった寄付が音楽祭事務局から赤ちゃんのお母さんに手渡され、お母さんから感謝のスピーチがありました。

満員の聴衆から拍手喝采でした コンサート後は、教会の裏庭のリンゴの樹の下で、チェコの土の恵みたっぷりの地元のご婦人方の手料理をいただきました。建物だけではなく、教会の本来の在り方や文化の違いなど、演奏をする子どもたちの心に残る光景になってほしいと願います。このような素晴らしい機会を企画してくださったヤング・プラハ実行委員会の安東和民事務局長とフィンダ志保子さん、また先生方には心より感謝申し上げます。

 プラハでの夢の舞台、ルドルフィナム(ドヴォルザークホール)のラストコンサートの翌日、子どもたちは郊外のドヴォルザーク氏の生家でお孫さんのために演奏をしました。お庭に突き刺したチェロのエンドピンから、土の力を少しいただいたのでしょうか。浜離宮朝日ホールでの子どもたちの演奏は、ひと回り逞しくなり、プロの方々との共演を心から楽しんでいるように聴こえました。リトミシュルでのヴィヴァルディの四季の「夏」から東京での「冬」へ・・・素晴らしい先生方や仲間と過ごした半年間が、今後の人生の宝物になりますように。

チェロ 釣田美加 母