1年ぶりに開催されたコンサートに、スズキのみなさんがずらり!

  

  7月18日(日)13時30分〜15時30分、愛三文化会館もちのきホール(大府市勤労文化会館)で、スズキ・メソード ヴァイオリン科特別講師で大府市出身のヴァイオリニスト、竹澤恭子さんのコンサートが開催されました。
 
 今回、同じく大府市出身で、かつての竹澤恭子さんと同じく、スズキ・メソードで育ち、現在ジュリアード音楽院でチェロを学ぶ佐藤桂菜さんも出演されました。また、アンコールではバッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲」から第1楽章を、東海地区のスズキ・メソードの生徒たちが竹澤さん、佐藤さんと一緒に演奏。50周年Plus1に花を添えました。
 
 それでは、プログラム順に内容をお知らせしましょう。
  →竹澤恭子コンサートプログラム
 
第1部 竹澤恭子ソロコンサート ・ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」Op.24
・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
  ヴァイオリン:竹澤恭子、ピアノ:津田裕也

 
 感染対策のために客席が半分となったこの日のコンサートには、それでも400名に及ぶお客様が駆けつけ、「世界のTakezawa」の音を堪能しました。1曲目、ベートーヴェンのスプリングソナタ冒頭から、魅力爆発。このところ、オンラインでの竹澤さんを見る機会が多かったこちらも、久しぶりの竹澤さんの生音に引き込まれてしまいました。コロナ禍や夏本番の暑さを忘れさせるような、春風を吹き込みながら、躍動感と生命感に溢れた演奏だったのです。続くフランクのソナタも誰もが憧れる名曲。ヨーロッパ中を熱狂させたヴァイオリニストのイザイの結婚祝いに贈られたというこの曲、大府市制50周年Plus1を祝うにふさわしい曲で、全編が竹澤さんの美音に包まれ、その一音一音に魂が宿っているかのようでした。

 
第2部 大府市出身の若手演奏家との共演
・ピアソラ:ル・グラン・タンゴ
・プーランク:愛の小径
  チェロ:佐藤桂菜、ピアノ:津田裕也

 
 竹澤さんと同じく、大府市出身で、ジュリアード音楽院で研鑽を積む佐藤桂菜さん。この日のプログラムに選んだピアソラは、今年生誕100年を迎えるアルゼンチン出身の作曲家であり、バンドネオン奏者。 「タンゴ界の革命児」と称され、クラシックやジャズの要素もふんだんに取り入れています。チェリストのロストロポーヴィチに捧げられた「 ル・グラン・タンゴ」は、とてもピアソラ節がたっぷりの魅力的な作品です。この日の佐藤さんはこの曲の多彩な面を素晴らしい表現力で弾かれていました。一転して、シャンソンのように愛らしいプーランクの「愛の小径」を表情豊かに描かれた佐藤さん。この曲のファンを一気に増やした演奏でした。

・ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番「大公」より第1楽章
  ヴァイオリン:竹澤恭子、チェロ:佐藤桂菜、
  ピアノ:津田裕也  
 
 そして、ベートーヴェンの「大公」。ピアノ三重奏のジャンルで、ベートーヴェンが到達した最高峰の曲です。1814年の初演時にはベートーヴェン自身が演奏したこの曲の第1楽章、ピアノの津田さんが雄大に奏でる第1主題をチェロが受け、そしてヴァイオリンへ。 その後もキーとなるモチーフがチェロからヴァイオリンにリレーされる場面が多く、まるで若手奏者の想いを温かく迎え入れる熟達の奏者の器が示されたかのよう。今回は第1楽章だけでしたが、第2楽章以降も聴いてみたいというお客様も多かったことでしょう。さらに、竹澤さんも佐藤さんも楽譜を電子化し、タブレットを使っての演奏だったことも、今の時代を感じさせ、興味深いところでした。

 
アンコール スズキの子どもたちとの共演
・バッハ:「2つのヴァイオリンのための協奏曲」より第1楽章
 
 竹澤さんは、これまでもスズキの子どもたちとの共演を舞台で何度も経験されています。 今回はチェロの佐藤さんも加わっての、アンコールとなりました。竹澤さんの他にソロを担当する 子どもたちと伴奏を担当する子どもたち10名との共演となりました。この日を迎えるにあたり、竹澤さんからは、リハーサルのたびに素敵なアドバイスの数々を子どもたちにお話しされていたとのことです。この記事の最後に参加した子どもたちからの感想が寄せられていますので、お楽しみに!

 
第3部 竹澤恭子さんへの大府市民栄誉賞の授賞式

岡村大府市長から市民栄誉賞を授与される竹澤恭子さん
(大府市提供)

  竹澤さんは、大府中学校卒業後、上京され、桐朋女子高校音楽科在学中に日本音楽コンクール第1位、そして世界の檜舞台へと階段を登られたわけですが、故郷の大府への思いも人一倍。2006年からは、3年に一度のペースで大府市内全中学校で「学校訪問コンサート」を開催されています。その活動はコロナ禍の今も続き、密を避けるために同じ学校で3回に分けて開催されるなど、その精力的な姿が大府の子どもたちに明るい夢と希望を与えたことにより、大府市民栄誉賞の受賞が決まり、この日、岡村秀人大府市長からの授賞となりました。受賞は、レスリングの 吉田沙保里さんにつぐ2人目です。
 
 竹澤さんは、受賞を受けて「今日は、1年延期されての開催でしたが、これからの大府市が『音楽の里』となりそうな予感を感じさせるコンサートになったかと思います。そして、私にはもったいない大府市民栄誉賞をいただきました。この賞は、私のこれからの活動へのエールをいただきましたものと受け止め、今後一層芸術への道を精進していきたいと思います。今までご支援をいただきまして、本当にありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶。大きな拍手が寄せられました。そして、竹澤さんがこの日のご挨拶でもおっしゃっていた、「いつの日か、大府から発信できる音楽祭の開催を」との願いは、心に染み入るお言葉でした。聴衆の一人として、その実現に向けて動きがあることを願っています。

 
参加したスズキの子どもたちの感想

・今回、弦楽パートで参加させていただきました。何度も弾いてきたドッペルでしたが、これまで経験したことのない、すべての楽器の音の共鳴に、本番中、身を震わせながら演奏しました。チェリストの佐藤桂菜さんも参加してくださったリハーサルでは、竹澤先生から楽曲の解釈やテンポの大切さをご指導いただき、その場での1秒1秒が新鮮で、とても実りある練習になりました。
 当日朝のリハーサルから本番の舞台での演奏を終えるまでの1日はあっという間に過ぎましたが、お二人の演奏家としての所作や、演奏への情熱、息遣いを間近に感じながら共演させていただいたことは、私の一生の宝物です。
 演奏中に感じた魔法のような特別な高揚感を忘れることなく、貴重な体験をさせて頂いた事に感謝をしながら、これからもますますヴァイオリンを愛し、精進していきたいと思います。素晴らしい経験をさせていただきました竹澤恭子先生、佐藤桂菜さん、先生方、本当にありがとうございました。
大鹿瑶子 高校1年
 
・竹澤恭子さんとのコンサートでは、曲を仕上げるまでの課程を学ばせていただきました。この4小節をどう歌うのか、どこへ向かってメロディを歌うのかなど、音と向き合う時間が長かったように思います。これからの練習では今回学ばせていただいたことを生かして行こうと思います。
小金丸皐月 中学2年
 
・プロの演奏家の方と共演する機会はなかなかないので、貴重な経験をさせていただき感謝しています。演奏中、竹澤さんの背中から感じるエネルギーや、演奏会本番に対する姿勢を目の当たりにできて、とても勉強になりました。
篠原智香 大学3年 
 
・初めての弦楽合奏で竹澤恭子さんと共演できて、夢のようでした。本番はとても緊張したけれど、気持ちよく演奏できました。竹澤さんの演奏は体全体から音楽が聴こえてくる感じで、音もとても美しかったので、本当に素敵でした。これから竹澤さんの音を目指してがんばりたいと思います。
村上真結子 小学4年
 
・コロナ禍でやる気も薄れてたので、久しぶりに大勢で弾けて、竹澤先生の音も間近で感じられて、たくさんの刺激をもらい、ものすごく楽しかったです。
齊藤優衣 中学2年
 
・僕はこのコンサートへの出演の話を廣岡先生からいただいた時、プロの先生方と弾けると知って、とても嬉しかったです。しかし、事前の練習ではチェロが1人だったので、どう弾いて良いのかよくわからず、不安でいっぱいでした。
 本番2日前のリハーサルからは、竹澤先生と桂菜さんが加わってくださり、始めは大変緊張しました。でも、竹澤先生や桂菜さんはみんなに優しく声を掛けてくださり、徐々に緊張がほぐれていきました。僕は、隣にいる桂菜さんとなるべく同じ音色が出せるよう、必死についていきました。本番はみんな息が合った演奏になったと思います。僕もみんなで合わせて弾くことの楽しさを感じることができました。カーテンコールで鳴り止まない拍手を目の当たりにして、チェロをやってきて良かったと思いました。
 終演後、桂菜さんのお母様から『チェロのドッペルコンチェルトも、いつか弾こうね!』と仰っていただいて、これからもっと練習していこうと思います。竹澤先生、桂菜さん、ヴァイオリンの仲間たちと一緒に弾けたことは、僕にとってとても良い勉強になりました。このような良い機会をいただき、ありがとうございました。
柴田翔太 中学2年
 
・竹澤恭子先生とともに演奏できたこと大変、素敵な経験になりました。 本番までの2日間という短い期間でしたが、とても熱心に指導していただき、その時間はとてもあっという間でした。普段はあまり気にかけなかったような細かい1音も丁寧に指導していただき、感謝すると同時に、1音ずつ大切に弾くことの大切さを改めて学ぶことができました。 この貴重な経験が実になるように日々練習に励みたいです。
後藤あずさ 高校1年
 
3歳から16年間ヴァイオリンを続けてきて、これまでさまざまな舞台に立ってきましたが、今回の演奏会ではこれまで感じたことのないものを感じることができました。それは「本番を楽しむ」ということです。これまで、私はいかに練習通りに本番の演奏をできるかを大切にしてきました。本番では緊張することなく落ち着いて演奏することがなによりも大切だと思っていました。
 しかし、竹澤恭子先生のドッペルを演奏する姿は落ち着いて弾くどころか、まるで踊りながら、歌いながら演奏しているように感じました。本番独特の緊張感の中で「演奏を楽しむ」という感覚を掴めた気がしました。
 これまで「本番楽しんで!」と声をかけられたことは多々ありましたが、今回の演奏会でその本当の意味を知ることができました。これはわたしのヴァイオリン人生で大きな出来事であると感じています。貴重な機会を与えてくださり、ありがとうございました。
飯田かさね 大学2年 
 
・僕は今回、小さい頃、夏期学校で竹澤さんの演奏を聴いた時にはわからなかった竹澤先生の演奏の凄さが、少しずつわかるようになってきたのだと感じました。近くで竹澤先生の生の演奏、聴いた瞬間、体に電気が走ったように衝撃を受けました。本番でも弾きながら竹澤先生の演奏に耳を澄ませて、同じ舞台に立っていながら、自分も竹澤先生の演奏の観客のような不思議な気分でした。人を惹きつける演奏とは、僕たちが目指すべき演奏とは、このような演奏なのだと強く感じました。
飯田光博 高校2年
 
・竹澤先生との共演が決まった時、嬉しいと同時に自分でいいのかという不安やプレッシャーを感じました。不安をなくすためにみんなと集まってご指導いただいた時のアドバイスを楽譜にメモしたり記憶したりして、それを見ながら練習しました。練習を積み重ねていくと不安が自信に変わっていきました。
 本番前、竹澤先生に「みんなで楽しんで演奏しましょう」と言われて、緊張がほぐれていき、楽しんで弾けました。今回は貴重な機会をありがとうございました。
犬飼龍之介 中学2年