鈴木鎮一の音楽をたどる
記念館開設30周年、竹澤恭子・東誠三両特別講師を迎えて
出演は、スズキ・メソード特別講師で世界的に活躍するヴァイオリニストの竹澤恭子先生と、才能教育研究会会長でピアニストの東誠三先生。そして松本大学アンサンブルsolaeの皆さんです。
幕開けは「松本大学校歌」。作曲は鈴木鎮一先生です。この旋律はもともと松商学園と深い縁を持つ鈴木先生の遺作として残され、松本大学開学にあたり校歌として受け継がれました。作詞を手がけたのは松崎一(まつざき・はじめ)氏(1917〜2011)。専門の作詞家ではなく、東京帝国大学で物理学を学び、信州大学教授・教養部長などを歴任した物理学者であり、松商学園短期大学学長として地域の教育にも長く尽力した人物です。
その歌詞には、筑摩野、梓の森、アルプスといった松本の自然が描かれる一方、「独立と自主の心」「理想の灯」「真理の道をひたすらん求め進まん」と、学問に向き合う若者への力強い願いが込められています。物理学者であり、教育者でもあった松崎氏の言葉と、鈴木先生の旋律が出会った校歌を、松本大学アンサンブルsolaeが歌います。
続いて演奏されるのは、鈴木先生による「キラキラ星の主題によるパラフレーズ」、コレルリ作曲「ラ・フォリア」、ヴェラチーニ作曲「ソナタ ホ短調」。いずれも鈴木先生が編曲を施し、スズキ・メソードの歩みとも深く結びついてきた音楽です。竹澤先生と東先生という第一線の演奏家によって、これらの作品がどのような響きを見せるのか、大きな楽しみです。
そして最後を飾るのは、フランクの「ヴァイオリン・ソナタ イ長調」。鈴木先生がドイツ留学中の1928年、ベルリンで録音し、翌1929年にSP盤として発売された、いわば鈴木先生の若き演奏家時代を伝える歴史的な作品です。教育者として世界に知られる以前、ヴァイオリニスト鈴木鎮一がどのような音楽を求めていたのか。その足跡に、約100年の時を隔てて竹澤先生と東先生が向き合います。
「鈴木鎮一の音楽をたどる」というタイトル通り、作曲家、編曲者、演奏家、そして教育者―さまざまな顔を持つ鈴木先生を「音楽」そのものから見つめ直す今回のコンサート。30年間にわたりその足跡を伝えてきた記念館という空間で聴くことにも、特別な意味があるでしょう。
当日は「鈴木鎮一先生直筆楽譜特別展示」も同時開催されます。演奏と資料の双方から、鈴木鎮一の音楽の原点に触れる一日となりそうです。
竹澤先生から、この日のコンサートへのメッセージを特別に寄せていただきましたので紹介しましょう。
小学1年生の頃から「テン・チルドレン」の一員として海外演奏旅行に参加し、リハーサルや個人レッスンを通して、鈴木先生は録音テープから聴こえてくる「声の先生」から、次第に身近な存在になっていきました。
お会いするたびに感じたのは、優しさと厳しさ、そしてユーモア。そのお人柄に、子どもながら知らず知らずのうちに引き込まれていったことを覚えています。当時、山村晶一先生のレッスン室に掲げられていた「人は環境の子なり」という言葉も、いつも心に残っていました。
今回の鈴木鎮一記念館開館30周年の記念コンサートにあたり、鈴木先生が編曲・作曲された作品を演奏するため、初めて先生の自筆譜を拝見しました。驚いたのは、音符や指示、フィンガリングまで、実に読みやすく精密に記されていたことです。そこから、先生の規律正しい生き方と繊細なお人柄まで伝わってくるようでした。
初めて目にした「キラキラ星の主題によるパラフレーズ」も、キラキラ星のメロディが長調から短調へと表情を変え、シンプルな旋律から豊かな音楽が広がっていきます。そこに、鈴木先生の芸術家としての息吹を感じました。
そして今回は、鈴木先生が日本人として初めてレコード録音されたというフランクのヴァイオリン・ソナタも演奏します。その録音を改めて聴き、教育者としてだけではない、芸術家・鈴木鎮一の素晴らしさをあらためて感じています。
このコンサートでは、鈴木先生が遺された音楽とその芸術性に少しでも近づき、その素晴らしさを皆様にお伝えできればと思っています。
コンサートは、当日、同時配信されます。下記URLを当日クリックしてください。
https://youtube.com/live/OanBKPDLGX4?feature=share
学習会の様子