鈴木先生の著書「愛に生きる」は、もはや「文化資産」の領域に。
100刷を重ねてきた意義を考えてみます。
鈴木鎮一先生の著書「愛に生きる」(講談社現代新書・税込990円)が、1966年8月16日に初版を発行以来、増刷を重ね、2025年4月30日についに100刷を迎えたことが、出版元の講談社から発表されました。
重版出来(じゅうはんしゅったい)とは、出版物にとって「重版が刷り上がった!」という非常に嬉しいニュースのことです。なぜなら、市場である読者の評価が明確に示されたことになりますし、出版社にとっては初版よりも利益率もあがります。それが100刷を迎えたということは、どんなにすごいことか、私たちの想像以上に本当にすごいことなのです。言わば「伝説的ロングセラー」として位置付けられ、時代を超えて支持され続けていることがわかります。そして単に出版物としての成功以上に、社会の中に定着した「読み継がれるべき価値」のある書物であることを明示していることになります。もはや「文化資産」の領域に到達していると言っても、過言ではありません。
この写真をご覧ください。
ここで紹介されている10冊は、講談社現代新書の発行部数ランキングでベスト10(2023年8月18日時点)の書籍になります。左端の「知的生活の方法」(渡部昇一)から右への順となっており、鈴木先生の「愛に生きる」は、2,700点を越える品数のある講談社現代新書の中でベスト8の位置にランクインされています。講談社現代新書編集部によりますと、2025年4月30日の100刷の段階で、トータルの発行部数は411,500部を数えているとのこと。本当によく読まれていることがわかります。
また、電子書籍としても販売されていますが、これはこの数字にはカウントされていません。左端の栞(しおり)は、現在発売中のすべての講談社現代新書に挟まれているものですが、ここでも発行部数ランキングが表示されています。書店で、一度皆様もお確かめになってみてください。
初版発行が1966年8月。最初のデザインは、イラストレーターで装丁家、SFアートの先駆者だった眞鍋博さん。白地に幾何学的で抽象的な図案は、講談社現代新書が意図した「スタイリッシュな文化」を表していました。1971年までこのカバーデザインでした。
初版以来59年間にわたり、「愛に生きる」は世代を超えて読み継がれ、教育関係者や音楽指導者の現場で教材や参考書として使われてきました。0〜3歳児コースでは、保護者向けに「愛に生きる」を教材として使われることが多く、単なる音楽教室ではない、スズキ・メソードの考え方や真髄を伝えています。また、東 誠三会長もお話になる多くの機会を通して、「愛に生きる」を引用され、スズキ哲学を説明くださるなど、今なお、「愛に生きる」は私たちの大切な原点になっています。
さらに、スズキ・メソードを幼児教育の要と捉え、活動されているスズキ・メソード幼児教育研究会の皆様は、今年8月の定例夏期研修会において、「愛に生きる」をテーマに研究を重ねることを予定されています。それほど、この書物は今も光り輝いています。
1966年9月当時、鈴木先生のニューイングランド大学名誉博士号受賞と「愛に生きる」出版を記念するパーティが松本のレストラン「鯛萬」と、東京の帝国グランドホテルで2度開催されました。特に帝国ホテルには、徳川義親侯爵、外務大臣や大蔵大臣を歴任された愛知揆一衆議院議員、ソニーの井深大名誉会長、声楽家の柳兼子さんなど政界、実業界、教育界の重鎮が集い、盛大に祝われたほど。当時の才能教育通信からも、「愛に生きる」に展開された鈴木先生の教育理念や人間感が、いかに多くの読者に支持されたかということが伝わってきます。
では、どうやってこの「愛に生きる」は生まれたのでしょうか。鈴木先生お一人の力でこの本が形になったのでしょうか。そもそもどうやって講談社現代新書編集部とのつながりができたのでしょうか。
マンスリースズキ編集部は、その秘密が講談社現代新書編集部の熱き想いと、さらには絶妙な編集作業によるものだろうと推測。そして、ついにと言うか、奇跡的に1966年当時、鈴木先生の「愛に生きる」を担当された編集者の方に、6月初旬、都内でお話を伺えることになりました。ということで、この続きは、スズキ・メソードの会員向け機関誌222号(6/20発行)の特集記事に続きます。どうぞお楽しみに!