新型コロナウイルスの影響を受けながらも、
開催へのさまざまな努力を惜しまず、無観客・ライブ配信の形で無事開催!

 
 「コンチェルティーノ・ディ・キョウト」は、才能教育研究会京都支部(現在はスズキ・メソード京都)のヴァイオリン指導者、故新井覚、チェロ指導者、故野村武二、そして指揮者に井手章夫氏を迎えて1959年に創設された上級生による合奏団です。以来、フェリックス・アーヨやモーリス・ジャンドロン、ルイ・モイーズといった世界的な巨匠とも数多くの共演があります。その歴史については、2018年11月号のマンスリースズキで詳しく紹介させていただきました。
→コンチェルティーノ・ディ・キョウト60周年
 
 その第62回演奏会が、2月23日(火・祝)、無観客・ライブ配信のスタイルで、京都二条城をのぞむ素敵なサロンから演奏が届けられました。コンサート開催に向けては、新型コロナウイルスによる影響が大きくあり、当初の予定とは大きく様変わりしました。マンスリースズキでは指揮者の江村孝哉先生始め、参加された4名の奏者の皆さんから、このコンサートへの思いを寄せていただきました。
 
 演奏曲目は以下の通りです。
・ヴィヴァルディ:弦楽のための協奏曲 ニ短調 RV129「マドリガレスコ」
・ヴィヴァルディ:合奏協奏曲「調和の霊感」Op.3-11 RV565(バッハ・江村編)
            独奏 : 吉村 椛 ・ 廣瀬 真優
・ヴィヴァルディ:二つのチェロのための協奏曲 ト短調 RV531
            独奏 : 木幡 真理子 ・ 和田 道惟
・ヘンデル:ヴィオラ協奏曲(バルビローリ編)
            独奏 : 市川 雄一  
・ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調Op.8-7 RV242
            独奏 : 田﨑 祐成
 
  当日ライブ配信された動画は、アーカイブ配信されており、次の画像をクリックすると全編をご覧いただけます。


 

なんとか、タスキが繋がりました。
関西地区ヴァイオリン科指導者 江村孝哉(指揮者)
 コンチェルティーノ・ディ・キョウトの第62回定期演奏会、YouTube公開という形ですが、なんとか実施することができました。
 コンチェルティーノ・ディ・キョウトは、スズキ・メソード京都の上級生による弦楽合奏団です。年に1回の定期演奏会ですから、62年の歴史があります。
 当初は2021年1月17日に、京都コンサートホール・小ホールで開催を予定していました。何しろ、ホール予約は1年半前、コロナウイルスのコの字もない頃でした。昨年3月頃より、コンサート開催も危うい社会状況となって来ましたが、幸いにも、保護者の方から、十分なソーシャルディスタンスを確保できる会場の提供を受け、ともかくベストを尽くしたいと、練習を続けてきました。
 2020年の年末、予想通りではありましたが、ますます厳しい状況になってきました。ホールでのコンサートとなると、客席のソーシャルディスタンスも確保しなければならず、それに、年内にキャンセルしないと会場費が返却されないという事情もあって、中止を決定しました。
 メンバーの皆さんと積み上げてきたものを考えると、苦渋の決断でした。毎年のことで、当然のことですが、指揮者としては、前年のコンサート開催よりも前から、曲目などの構想を練り、楽譜を入手し、勉強し、場合によっては、ボツにして、新しい曲を探したりと、準備をしてきました。
 これまで、その作業を大変だと思ったことなど一度もありませんでしたが、今回、中止と考えた時点で、初めて、その作業の多さが感じられて、1年以上前から積み上げたものを崩してしまう虚無感を痛烈に感じました。
 世の中は、余談を許さない状況に変わりはないのですが、メンバーのために、なんとかならないものかと模索して、同じ日程で会場を変え、無観客でYouTubeライブ公開を考えました。年末年始は、準備、打ち合わせなどに忙殺されました。
 ところが、緊急事態宣言の発令!
 強行する選択肢もありましたが、リスクを避けて、延期と決めました。延期となると、出られないメンバーがいるかも知れないとの危惧がありましたが、日程の候補を考えて、一人ずつ確認したところ、全員参加可能との回答。ほっとしました。合奏団の性格上、メンバーの入れ替わりは避けられず、今回のコンサートが最後というメンバーもいましたので。
 京都の感染者は減少傾向であったことも含めて、こうしてなんとか実現にこぎ着けられたことは、若干形は違うとはいえ、駅伝で言うと、たすきが繋がったような気分です。
 感染症対策としては、消毒、手洗いなどの徹底、譜面台は一人1本、舞台衣装に着替えるのもリスクを伴うのでとりやめ、ソロを弾くメンバーもマスクを常用、毎週の練習は自粛して、個人練習に期待をして、2日前の久しぶりの練習だけが最後の仕上げという感じでした。
 会場は、窓から二条城を臨める、素敵なサロンをお借りしました。
 ライブ配信を開始して、マイクのスイッチが入っておらず、無音で始まってしまいましたが、すぐにご指摘を受け、最初からやり直させていただくなどハプニングはありましたが、それも良い思い出となりました。
 曲に関しても、少し触れさせてください。
 まず、ヴィヴァルディの作品3-11です。バッハの作品には、自作や他の作曲家の作品をアレンジした作品が何曲かあります。原曲が失われたものも数多くあり、復元した形で演奏されることも多いと思います、この弦楽団も、何曲か取り組んできました。原曲の残っている作品と編曲を比較して、バッハは音を変えたり、増やしたりしています。このヴィヴァルディの作品も、バッハがオルガン独奏用にオルガン協奏曲として編曲しています。そこで、バッハが変更した音で演奏することを考えました。仮にヴィヴァルディの作品が消失していたと仮定して復元すると、このような形になるのでは無いかと思います。
 ヘンデルのヴィオラ協奏曲は、指揮者のジョン・バルビローリが、ウィリアム・プリムローズのためにヘンデルの作品から(オペラアリアなど)5曲を選んで編曲したもので、ずっと昔に、行きつけの中古レコード店のマスターから紹介され、いつか演奏してみたいと願っていたものです。
 演奏に関しては、上記のYouTubeアーカイブ配信をご覧いただけると、幸いです。

 

 今回、僕は初めてこのコンチェルティーノに参加しました。アンサンブルでは、独奏とは違って自分1人のミスが全体のミスになってしまうので、責任を感じました。技術的な難しさはもちろん、音程を正確に取ることが大変でした。同じ音でも、場合によって高めに取ったり、逆に少し低めに取ったり、かなり細かく突き詰めなければいけないことがわかりました。また、自分の楽譜を正確に弾くだけでなく、他のパートと合わせることが必要ですが、合わせようと思いすぎると、休符の長さやリズムを間違えてしまうこともありました。特にチェロのパートは、音源を聴いてもわかりにくいことがあるので、始めのうちは苦労しました。
 でも、皆と一緒に弾くのは独奏では味わえない気持ちよさがありました。2回目の緊急事態宣言発令で、この演奏会は1回延期になり、合奏練習も一時できなくなってしまいましたが、久しぶりに皆と合わせた時、一緒に弾いて音楽を作ることの楽しさを改めて感じました。やはり1人で弾くのとは全然違ったし、緊張感はあるけれど、とても素晴らしい経験でした。 ( Vc 和田道惟:中1)

 

 1月17日に予定されていたホールでの演奏会が年末に中止となり、同日に配信を行なう計画となりましたが、緊急事態宣言によってそれもストップ、再度の延期を経て、2月23日、コンチェルティーノ・ディ・キョウト第62回定期演奏会が無事終了しました。62回目にして初の生配信による演奏会でした。
 プログラムの選定、練習の計画、ソーシャルディスタンスに対応する練習場所の準備、たび重なる計画変更、そのたびに各方面への多大な連絡や調整、そのすべてに対応され、この難しい状況の中で新しい形での演奏会を実現された江村先生に心から敬服いたします。また、細やかな対応と心配りで支えてくださった保護者の方々に深く感謝申し上げます。先行きが見えない中で、集中力を切らさずに練習を続けられたメンバーの皆さまも本当にお疲れさまでした。すばらしいです。
 コロナ禍の中、お客様の目前で演奏できないことは少しさみしいですが、配信であれば世界のどこからでも視聴できるわけで、たとえばVivaldiのおひざ元のヴェネツィアでも誰か聴いてくださっていたら・・日本の若い人はこんな風にVivaldiを弾いてるんだなあと思っていただけたら・・と想像するとおもしろいものです。
 お手伝いの機会をいただき、うれしく思います。どうもありがとうございました。(Vn南部 史:OG)

 

 まず何より、この大変な状況下で演奏を発表する機会をいただけたことをありがたく思っています。オンラインの同時配信という形での本番は初めてで、見てくださってる人の顔が見えない安心感と緊張感に不思議な感覚を覚えました。1年間協力しながら練習に取り組んだ団員の皆さん、指導していただいた先生方と、ソーシャルディスタンスは保っても心は一つに、コロナに負けない演奏を披露できました。(Vaソロ 市川雄一:高2) 

 

スズキ・メソード、チェロ科で、生徒として14年がたちました。今まで、手ほどきを受けた杉山實先生をはじめとして、たくさんの指導者の先生方にお世話になりました。所属が京都になって5年経ちました。それからこのコンチェルティーノに入れていただきました。みんな、あたたかく、楽しく、優しく受け入れてくれて、アンサンブルの練習、そして演奏会が、楽しくて楽しくて、スズキでよかった!京都でよかった!と心から思います。自分だけ、練習に来るのに大阪から通うので、遠くて、何度も電車で乗り過ごしたこともあります。
 学校では、陸上部長距離のマネージャーをしていたので、試合やクラブ活動から、直接、京都行くので、ジャージのまま練習に参加することもありました。メンバーだけでなく、お母さん方や先生もいつもいつも、応援してくださって、感謝はつきません。今年の4月から大学進学に伴って、関西を離れます。
 私にとっては、今回のコンチェルティーノの定期演奏会が、スズキっ子としての最後の舞台となりました。今まで、関西地区大会、卒業演奏会、夏期学校、林峰男先生とのコンサート、様々たくさんの舞台がありました。最後の演奏会、と心待ちにしていたものの、年末に会場変更。そして、あと前日リハーサルと本番を残すのみ!という時に、緊急事態宣言発令。
 本番直前での日時未定の延期決定。ただでさえ、夏の夏期学校がなくなって、相当落ち込んだ私でしたが、この時は【不安】がよぎりました。無理に開催したい!とは、絶対に思いませんし、何をもっても、まず【安全】【安心】が最優先のことは、よくよく理解していました。だからこそ、アンサンブルの練習ができなくなっても、いつでもできるように!との心構えでいました。チェロ科の森田先生は、個人レッスンの合間に、チェロのソロふたりのレッスンをしてくださり、ふたりででも合わせられることが、どれほどありがたいか、どれほど嬉しいか、痛感しました。そして、指揮者の江村先生が、大きな大きな決断をしてくださり、ライブ配信での開催となりました。
 再会したのは、1ヵ月ぶりで、本番前々日。極々短時間で、即解散。お母さんのたちの工夫もあって、集まること、密になることを避けながら、みんな一人ひとりが努力をしながら合わせました! 本当に、アンサンブルできることの喜びを感じていました。そして、メンバー全員が、誰ひとり欠けることなく、本番に集まることができ、初のライブ配信での演奏会を行なうことができました。
 ライブ配信になったからこそ、日本各地だけでなく、世界各地で、視聴してくれて、たくさんたくさんメッセージをもらいました。今回、一緒にソロを演奏してくれた、和田くん。初の定期演奏会にも関わらず、一緒にがんばってくれて、嬉しかったです。
 スズキ・メソードは、本当にたからものの場所です。科は違えども、小さいときから、見守ってくださった、杉山笙子先生、江村美由紀先生、北淳子先生。夏期学校で、いつも声をかけてくださる、チェロ科の指導者の先生方。そして、今日まで、たくさんの先生に教えていただきました。河地正美先生、伊藤岳雄先生、塚尾(山田)桃子先生、そして、この自分を受け入れてくださった、森田先生!演奏会を迎える歓喜を教えてくださった林峰男先生。ここには、書ききれませんが、たくさんの方に、心からの感謝で迎えた演奏会となりました。
 この演奏会で、大きく舵をとってくださった、江村孝哉先生、森田健二先生に、感謝の思いで、締めくくります!本当にありがとうございました。(Vc 木幡真理子:高3)