初のオンライン開催となった全国指導者研究会

 
 6月1日(月)9時半頃からスタートした全国指導者研究会。例年でしたら、松本に全国から集合した指導者たちが、4日間にわたり、多彩なテーマで様々な研究を重ねるのが普通でしたが、今年は、新型コロナウイルス感染拡大のため、3密をもたらすような、一堂に介しての研究会の開催は無理でした。
 
 そこで、早野会長のアイデアで、初のオンラインでの指導者研究会の開催となりました。画面に全国の指導者、そして特別指導者の先生方が加わってゆきました。9時40分くらいからは、いつもの指導者研究会のように、鈴木鎮一先生の溌剌とした声が響きわたる記録映像が上映されました。1970年代、80年代の貴重な映像には、現在も活躍される指導者たちの若き日の姿が活写されていましたし、何よりも鈴木先生の教えが、現在にもそのまま通じることが伝わってくる内容でした。
 
 10時になったところで、運営委員長の中島顕先生の進行で、まず早野龍五会長から、大変わかりやすいメッセージが届けられました。以下、その内容を余すところなく、速報します。
 

早野龍五会長 挨拶


 今年のお正月ごろは、誰一人として、全世界がコロナによってこれほど大きな影響を受けるとは考えていませんでした。
 
 2月に(メール審議の)臨時理事会で、各地で予定されていたピアノ科の卒業式の中止を決めた頃は、会の大切な行事を中止することが本当に必要なのかという声もありました。しかし、全国で休校措置が取られ、東京オリンピック・パラリンピックが延期され、緊急事態宣言が出されたのを受け、
 

  1. ・対面レッスンを控えていただくこと、

  2. ・先生方の会議もオンラインでやっていただくこと、

  3. ・先生方に松本に集まっていただく形での全国指導者研究会は開催しないこと、

  4. ・今年の夏期学校を中止すること、

 
など、先生方にはいろいろなことを、次々とお伝えし、お願いしてまいりました。ご協力ありがとうございます。そのほか、
 

  1. ・理事会をオンライン会議で行なうこと、

  2. ・4月、5月の本部会費を免除すること、

  3. ・才能教育通信を郵送ではなく、ホームページ版として発行すること、

  4. ・事務職員を、東京は全面的に、松本は交代で自宅勤務にすること、

 
など、どれもすべて前例のないことですが、刻々変化する感染状況に対応して、2月から5月まで、激動の4ヵ月を乗り切ってきました。
 
 ♪そのような中で迎えた全国指導者研究会です。
 オンラインでの開催は到底無理だろうというご意見も寄せられておりましたが、4月13日以来、毎週月曜の朝に、Zoomを使った、いわば「指導者研究会の練習」のようなことを6回行ない、また、特別講師の先生方とも、3回にわたってZoomの練習にお付き合いをいただき、本日を迎えることができました。
 おかげ様で、今現在、519人が参加しておられます。
 

 ♪先週、5月25日(月)に、緊急事態宣言が全国で解除されました。それを受けて、週末に本会のホームページを更新し、会長メッセージビデオも掲載しましたが、ご覧いただけたでしょうか。ぜひ、生徒さん、保護者の方々にも、お知らせください。

 
 専門家の方々が口を揃えて言っておられるように、緊急事態宣言解除は、新型コロナウイルスの撲滅を意味しません。第二波、第三波は来ると思わなければいけません。すぐに、元の日常には戻れないのです。いわゆる「新しい日常」が、子どもたちと、先生方を守るのです。くれぐれも、そのことをお忘れにならないようにお願いします。
 
 レッスンについては、地元の学校の再開状況を見て、保護者の方々と十分に連絡を取った上で、オンラインを併用しつつ、徐々に、慎重に再開していただくよう、お願いいたします。

 
 東京都の「ロードマップ」の中にある「学校の段階的再開」にも、対面とオンラインの組み合わせによって、学校での「新しい日常」を定着させていく考え方が示されています。
 
 私たちスズキにおいても、たとえば個人レッスンは対面、グループレッスンはオンラインなどという工夫が必要かと思います。
 
 コンサートについては、政府が移行期間としている7月末までは、練習も本番も控えていただきたいと思います。その後についても、政府の資料では「収容率」を50%以内とするようにと書かれていますので、イベント主催をお考えの先生は、ご配慮ください。

 
 また、先生方の会議については、今後もオンラインでお願いしたいと思います。
 
 ♪さて、コロナの休校措置によって、子どもたちは深刻な影響を受けています。入学式すらできなかった1年生、受験を控えた学年、それぞれ大変でしょう。保護者の方々も、教育の遅れをさぞかし心配しておられることでしょう。
 
 このように大変な時代を迎えた今こそ、「スズキで楽器を習っていて良かった」と、保護者の方々に感じていただきたい。
 
 そして、お子さんたちにも、将来、「2020年の春はコロナで大変だったけれど、スズキで楽器のおけいこをしていてよかった」と思っていただきたい。
 
 ♪「才能教育通信」の最新号に書きましたが、なんと言っても、大事なのは「毎日のおけいこ」です。もちろん、スズキでは普段でも「毎日のおけいこ」が大事ですが、今はもっと大事です。毎日、決まった時間にお稽古をすることで、生活にリズムが生まれます。

 
 鈴木先生は「おけいこをしなくてもよい日があります。それは朝から晩まで何も食べない日です」とおっしゃいました。私も子どもの頃はこれを守っていました。
 
 学校がなかなか正常化しなくても、毎日のおけいこによって、生徒さんの「非認知能力 – やる気、忍耐力、集中力など」がしっかりと育まれます。
 
 毎日おけいこして、上手になるまで繰り返すことで、生徒さんには立派な「非認知能力」が育ちます。その能力が育っていれば、学校が再開されたあと、遅れを取り戻すことができることでしょう。
 
 「毎日のおけいこ」は、スズキの生徒さんの持つ大きなアドバンテージです。普段は、お子さんのおけいこを聞く機会がほとんどないお父様(あるいは、お母様)が、在宅で仕事をしながら、お子さんのおけいこをご覧になっている、というご家庭もあるかもしれません。コロナは、「スズキの三角形」 - お子さん、お父さん・お母さん、先生、の三角形を、強固なものにする機会なのかもしれません。しっかりと生徒さんの指導をなさってください。
 
 ♪「そんなこと言われても、オンラインレッスンは無理、できない、本物じゃない、やりたくない」様々な声もいただきました。
 
 しかし、先生方には、ぜひ思い出していただきたいことがあります。鈴木先生のことです。
 
 今から60年以上前、鈴木先生はテープレコーダーを使って、卒業録音をはじめられました。

 
 私は、鈴木先生が、松本の旭町の御宅(今の鈴木鎮一記念館)で、全国から送られてくるテープを聞き、ご自分でマイクを持って、そのテープに感想を吹き込んでおられた姿を覚えています。
 
 コロナの時代に、半世紀以上前の鈴木先生のお姿を思い返すと、あれは、当時の最新技術を駆使した「リモートレッスン」だった、ということに思い至るのです。松本から遠いところにお住まいの生徒さんお一人お一人の録音を聴き、メッセージを返しておられたわけですから!
 
 もちろん、今は、スマホがあれば手軽に「オンラインレッスン」は可能ですが、必ずしも、オンラインにこだわる必要はないかもしれません。きちんと生徒さんの音を聴いて、それに対して適切な指導ができる方法を、先生方が、研究し、極めていただくことが大事なのです。半世紀前の鈴木先生のように。
 
 なお、今後しばらくは「教室見学から入会へ」というやり方で生徒さんを集めるのが難しいでしょう。「オンラインでのレッスン体験」を取り入れる必要があるかもしれません。
 
 一方、仕事を持っておられるお母さんが「土曜日しか子どもと一緒にレッスンに行けません」とおっしゃる問題を、対面とオンラインの上手な組み合わせによって、解決できる可能性があるかもしれません。

 
 ♪繰り返しになりますが、コロナで生じた社会的な変化は、そうすぐには元どおりにはならないでしょう。そんな中で、子どもたちが立派に育つようにするには、どうすれば良いか、今こそ、先生方が研究し、その成果を語り合い、工夫することが大事なのです。
 
 「コロナの時にスズキの先生は、うちの子を本当に良く指導してくださった」という声が、一人でも多くの保護者から聞こえてくることを願っています。そうなれば、コロナ終息後のスズキに期待が持てます。逆ならば、スズキは潰れます。
 
 先生方お一人お一人が、今教えておられる生徒さんをしっかりと育ててくださること、そのために、「新しい日常」に見合ったレッスン方法を工夫してくださることを、強くお願いいたします。
 


 
豊田耕兒名誉会長 ご挨拶
 

 本当にたくさんの先生が、才能教育研究会のために力を尽くし、たくさんの生徒さんを育ててくださったことに感謝しております。日本は、スズキ・メソード発祥の地、日本人としてこれからも力を尽くしていただければと思います。
 
 最近は、才能教育研究会で育った皆さんが、世界で活躍するようになり、高い評価を受けていらっしゃいます。その方たちが、今度は特別講師としてここに戻ってきてくださり、教えていただけるということで、新しい血をいただいた思いです。どうかみなさん全員が、この大切な教育=スズキ・メソードを大事にしてください。お願いします。