この11月は、図らずもスズキ・メソード出身の若手演奏家たちによるデュオ・コンサートが目白押しですので、ここでは、ご本人たちからのメッセージで紹介しましょう。いずれも魅力的なプログラムが並んでいます。ぜひ会場に足を運ばれ、その演奏をご堪能ください。

 まずは、印田千裕さん(ヴァイオリン科出身)と弟の印田陽介さんによる姉弟デュオ・コンサートです。お二人によるデュオは、2016年11月のマンスリースズキでも詳しく紹介させていただきました。
→マンスリースズキ2016.11

印田千裕&印田陽介デュオリサイタル
〜ヴァイオリンとチェロの響きVol.6〜
2017年11月8日(水)19:00開演
銀座王子ホール
印田千裕(ヴァイオリン)、印田陽介(チェロ)
【入場料】前売り:3,500円、当日:4,000円(全席自由)

曲目
トッホ:ディヴェルティメントOp.37-1
・ホフマン:協奏的大二重奏曲Op.5-2
・クンマー:シューベルト:歌劇「ザンパ」の主題によるデュオ・コンチェルタンテ
・クーカル:プレゼントOp.12
・西村 朗:雅歌IV ~ヴァイオリンとチェロのためのヘテロフォニー
モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
《問》王子ホールチケットセンター tel.03-3567-9990

印田千裕さんからのメッセージです。

【今回の聴きどころについて】
 ヴァイオリンとチェロのデュオという組み合わせは、最小編成のアンサンブルです。8本の弦のみでスケールの大きい音楽を作るには、作曲家が楽器の特性を熟知していることが欠かせません。
 今回は特に、弦楽器の特性を熟知した古今東西の作曲家が効果と技法を活かし、超絶技巧や特殊効果を織り交ぜて作った作品を中心に並べました。
 20世紀前半「新しい音楽」を模索していたトッホがウィーン弦楽四重奏団のために書いた「ディヴェルティメント」(1番は第1ヴァイオリンとチェロ、2番は第2ヴァイオリンとヴィオラのために)、自身が演奏家としても活躍したホフマン、そしてチェリスト・クンマーとヴァイオリニスト・シューベルトが当時流行の歌劇「ザンパ」をもとに書いた合作、現代の作曲家チェコのクーカルと日本の西村朗。西村氏の「雅歌Ⅳ」は、開放弦のDとAを軸に、あらゆる奏法により、その極近辺に派生して揺らぐヘテロフォニーが鮮烈な緊張感と東洋的な響きをもたらす非常に効果的な作品です。
 最後に言わずと知れたモーツァルトの名曲「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲」をヴァイオリンとチェロで演奏します。

【姉弟でのデュオについて】
 姉弟でデュオリサイタルを始め早くも6年目となりました。毎回新しいレパートリーを開拓し、様々な作品を演奏してきましたが、今回は特に技巧的な作品の多いプログラムとなりました。
 技術的にもアンサンブルにもようやく少し余裕が出て来たようで、「今だからできるプログラム」と感じています。超絶技巧オンパレードの中に、姉弟ならではの寄り添った音色で、息の合った競演ができるよう、そして何よりも皆様に楽しんでいただける演奏会にしたいと思っております。

 次は、五味田恵理子さん(ピアノ科出身)が新しく結成したデュオ「PIANO DUO ISAR」による、デビューコンサートです。

PIANO DUO ISAR
DEBUT RICITAL
2017年11月12日(日)14:00開演
五反田文化センター音楽ホール
五味田恵理子(ピアノ)、関屋茉梨子(ピアノ)
【入場料】一般:3,000円、学生:2,000円(全席自由)

曲目
・ブラームス:16のワルツ 作品39
・ビゼー=アンダーソン&ロエ:カルメン幻想曲
・メトネル:2台のピアノのための作品 ロシアの踊り 作品58-1
・ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲 第2番 作品17
《問》pianoduorecital1112@gmail.com

五味田恵理子さんからのメッセージです。

 ピアノデュオの本格的なプログラムから、親しみやすい名曲まで、幅広いレパートリーを演奏していきたいと考えています。「一人では不可能な表現の領域まで、踏み込んで行きたいね」と二人で話しております!
 今回のプログラムでも、デュオの醍醐味を感じ楽しんでいただきたいと思い、誰もが聴いたことのある馴染み深い連弾曲から、2台ピアノの最難曲まで並べてみました。二人の出会いはドイツでして、私の留学先を、パートナーがセミナーに参加するために訪れて会ったことがきっかけです。演奏を聴き、「デュオで演奏してみないか」と誘ってくださいました。
 そんなわけで、デュオ名のISARはミュンヘンを流れる川の名前です。名前は私のミュンヘンの師匠に付けていただきました。海のないミュンヘン市民にとって、憩いの場であり、大きな拠り所であるイザール川のように、このデュオもたくさんの人に愛され、また心の憩いとなり、大きな魅力のあるデュオとなるように…との想いを込めて付けてくださいました。とても嬉しく、この名前を大切に精進したいと思っております!

【デュオの魅力について】
 2人で1つの音楽を作ることは、それぞれのやりたいことや想いや表現の仕方、解釈が違い、凄く大変なことだと思います。それを1つの音楽にするために、自分1人ではできない、新しい発想やヒントを得て、音楽ができる瞬間や、音楽で会話ができた時に、デュオの醍醐味を感じます。様々な試行錯誤を重ねて、"あっ音楽が一つになったな"と感じられる瞬間が最も魅力だと思います。特に、同じ楽器でデュオをするということは、他の楽器とデュオをするより、より心と心が密になると最近実感しています。音楽的な相性のみならず、人と人の相性も大事ですし、そのすべてがうまくいった時には、表しようのない喜びを感じます。

 そして、大澤愛衣子さん(ヴァイオリン科出身)は、ヴィオラとのデュオ、チェロとのデュオと盛りだくさんのラインナップです。

大澤愛衣子&樹神有紀デュオコンサート
『悲喜こもごも』
2017年11月9日(木)19:00開演
ANNEX HITOMIホール(名古屋)
大澤愛衣子(ヴァイオリン)、樹神有紀(ヴィオラ)
【入場料】3,500円
曲目
モーツァルト: ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
・ハルヴォルセン: ヘンデルの主題によるパッサカリア
《問》On music project tel.080-4300-7611(北川)

On music project トライアルコンサート
「tenporary(儚い気持ち)」
2017年11月20日(月)19:00開演
Studio HARU(名古屋)
大澤愛衣子(ヴァイオリン)、三谷野絵(チェロ)
【入場料】2,500円(全席自由)

曲目
「ヴァイオリンとチェロのための6つの古典的作品集」
・バッハ:イギリス組曲 第3番 より ガヴォットとミュゼット
・ヴァレンシン:メヌエット
・ラモー:タンブラン・フェルディナンド
・フンメル:ロマンス・クープラン:淫蕩な女
・ヘンデル:クーラント
・ベートーヴェン:ヴァイオリンとチェロのための3つの二重奏曲 WoO 27
・オネゲル:ヴァイオリンとチェロのためのソナチネ
・ヘンデル/ハルヴォルセン:パッサカリア
《問》On music project tel.080-4300-7611(北川)

大澤愛衣子さんからのメッセージです。

【11月9日のデュオ・コンサートについて】
 『悲喜こもごも』というタイトルがついておりますが、これは『一人の人間に、喜びや悲しみが代わるがわる訪れること』を意味します。
 似ているところも、また対照的な部分もある2人の中に現れるいろいろな感情が、混ざって皆様の元に届くとどうなるのか。悲しみや喜びに限らず、様々なできごとや感情が互いに影響してでき上がっていくアンサンブルに、とてもわくわくしています。
 ヴィオラの樹神有紀さんとデュオとしては初めての共演です。これまで室内楽やオーケストラで何回かご一緒していますが、前々から彼女の人間性にとても惹かれていて、なんだか親戚のような不思議な感覚もおぼえる有紀さんとの共演、嬉しく思います。
 ヘンデル/パッサカリアのような名曲から、マルティヌーのような変わり種ともいえる色彩豊かな作品まで、プログラムも幅広く揃っております。

【11月20日のデュオ・コンサートについて】
  10月末、有松でのイベントで演奏させていただいたプログラムに、新たな曲目を加え、また素敵な響きのするホール「スタジオハル」さんにて皆様に聴いていただけるという嬉しい機会です。
 チェロの三谷野絵さんとは高校時代からの先輩・後輩の関係でもあり、大学に入ってからカルテットなどでよく共演しておりますが、今回、デュオに取り組むのは約3年ぶりです。
 室内楽トライアルコンサートシリーズは、「感情」がテーマとなっています。今回は《儚い気持ち》を取り上げました。すぐに無駄になったり、消えたりしてしまうけれども、そこにしかない美しさや、虚しいからこそ手に入れられる大事なことが『儚いもの』にはあると思います。今、ここにしかない音を追い求めながら、想いを込めてお届けできればと願っております。
 曲目は、気軽に聴いていただける小さな作品集から、重厚感と華やかさを持ち合わせたベートーヴェンまで、充実したプログラムとなっています。

【デュオの醍醐味について】
 トリオやカルテットなど様々な編成のアンサンブルがありますが、「デュオ」は一対一の最も親密なものです。相手が投げたものを独り占めで受け取ることができますが、自分をも受け取ってもらうためにパワーのある対話をする必要があり、信頼関係がとても大事なのではないでしょうか。一人ひとりの個性を知っていただきながら、2人合わさったときの化学反応も、ともに楽しんでいただけたらと思います。