松本音楽院第一期生による松本音楽院の思い出と音楽鑑賞会を開催

 

 6月26日(土)、松本市城山にあるGallery&CAFE ”憩の森”で開催された第44回”憩の森”音楽鑑賞会にお邪魔してきました。会場は、松本駅を背にアルプス公園に至る高台の途中の城山公園に隣接したカフェで、静かな空間の中にありました(なんでも春の桜は見事だそうです)。今回のテーマは「松本音楽院の思い出」。

 

 少し早めに到着すると、カフェの隣のギャラリーに30席ほどの椅子が用意され、この日の主役、松本音楽院第1期生の林 貞永さん(85歳)が、観賞会の準備をされているところでした。さっそく、昭和23年4月18日に撮影された松本音楽院幼年部の生徒さんたちが、松商学園講堂に集まった時の記念写真(先月号とは別の写真)を前に、具体的に手で示していただきながら、林さんのお分かりになる範囲でお名前を確認させていただきました。
 
 それがこの写真になります。松本音楽院の黎明期を彩る懐かしいお名前が並びました。
 

 三々五々集まった皆さんを前に、「今、85歳になります。元気なうちに鈴木鎮一先生のことを話したくて、こういう会を開くことになりました」と林さんからご挨拶がありました。
 
 まず鑑賞したのは、「グレイト・メッセージ〜郷土の礎を築いた人 鈴木鎮一先生」(テレビ松本制作 30分)、松本に才能教育が誕生して70周年を記念した動画でした。
 

「赤本」と呼ばれた当時の指導曲集を
紹介される林さん

 林さんの自己紹介です。「当時、私は麻績(おみ)から通っていました。まだ石炭がなくて、薪を燃やして動力にする車で通っていました。1時間くらいかかりましたね。中には長野から2時間かけて通ってくる子もいました。私の教室は、玄関を入って左、右がピアノの教室でした。2階に上がった時に、3歳上の豊田耕兒さんがキャッチボールをしていましたね。それをよく覚えています。その後、40年振りでしたか、松本教会での鈴木先生の追悼のミサで会った時に、私のことを覚えてくれていて、それが嬉しかったですね」

 「その豊田耕兒さんがアルトゥール・グリュミオーとバッハのドッペルを1970年に録音していますので、それを聴いてみましょう。エド・デ・ワールト指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団の演奏です。私は、特にこの第2楽章での、二人の寄り添うような演奏が好きです」

 と、こんな感じでプログラムが進みました。
 豊田先生の録音で、コレッリの「ラ・フォリア」、フィオッコの「アレグロ」。いずれも初めて聴く音源でしたが、その気品と端正な空気感の素晴らしいこと。大学生の頃、一杯のコーヒーで名曲喫茶に入り浸っていた頃を思い出させます(こちらのカフェでは、コーヒーが飲み放題!)。
 
 林さん、先ほどの松商学園での写真を指し示しながら、エピソードをお話しされます。「実はこの写真を撮影した時の演奏会で、豊田耕兒さんはツィゴイネルワイゼンを弾かれたのです。ところが途中でE線が切れてしまいました。それで途中で張り替えて、また弾かれたのを思い出しました」。そのほかにも、若くして亡くなられた山本恵子(あやこ)先生や中町通りの思い出話もありました。

 
 続く鑑賞曲は、ミッシャ・エルマンが70代の時に録音したツィゴイネルワイゼン、アヴェ・マリア、ユーモレスク、ゴセックのガヴォットです。往時のゆったりとした演奏は独特。節回し、抑揚、テンポの揺らぎなど、どの曲も新鮮に聴こえました。
 
 さらに、ユーディ・メニューヒンの演奏するスケルツォ・タランテラ(ヴィエニヤフスキ)の動画、パブロ・カザルスが国連で演奏した「鳥の歌」の動画など林様が所有されるお宝コレクション映像が続きました。
 

お店からの心憎い演出

 休憩を挟み、「愛に生きて〜星になった鈴木先生」(テレビ信州制作25分)を鑑賞。松本音楽院の当時の様子が、丹念に取材されていました。「鈴木先生は優しい先生でした。まず怒りません。それにユーモアがありました」と林さん。

 この後、少し余興で別の曲(パガニーニのヴァイオリン協奏曲第4番、サラサーテのバスク奇想曲)を聴き、最後は「小野アンナ〜激動の20世紀を生きたバイオリン教師」(NHK札幌制作50分)という盛りだくさんな内容となりました。林さんによれば「激動の20世紀を生き抜いた小野アンナという女性は、鈴木先生と共通するものがあります」とのこと。この辺り、改めてお話を伺いたい部分でもあります。
 
 
 
 Gallery&CAFE ”憩の家”のオーナー、布施智浩さんにお話を伺いました。

 主催者の林さんは、以前から街の方で『レコードコンサート』と題してご自身のレコードコレクションを皆さんに紹介されていたようです。”憩の森”の近くにお住まいの林さんが、定期的にお仲間とコーヒーを飲みにいらしてました。私もクラシック音楽が好きでいつもBGMに流していましたし、林さんはご自身でコレクションされているたくさんのレコードやLDやCD、またその宝のような音楽知識を皆さんにシェアしたい、そうしないともったいない、というかそうするべきだと思われていましたね。それならばと、うちでやることになったわけです。
 当初は、月1回の会がこんなに続くとは想定していませんでした。これまでの中で、いくつかタイトルを列記してみましょう。
「マタイ受難曲」「モーツァルト レクイエム」「フルトヴェングラーその生涯」「グレングールド 演奏の秘密」「エディットピアフ〜シャンソンを聴く」「山と音楽を愛した深田久弥」「クリスマス音楽特集」「八千草薫を偲んで」「パイプオルガンの魅力」
 これらはひとえに林さんの音楽に対する熱意であります。そこにこれからもできる限り協力させていただきたいと思ってます。もちろんお店の存在を広く知ってもらえることも嬉しいですね。

 

 松本音楽院第1期生の林貞永さんが、このように今もなお、鈴木先生をはじめ、多くの音楽家から影響を受け、市民の皆様に思いを伝え、知識を還元されている姿に感銘を受けました。最後に、林さんを囲んで、関係者の皆様で記念撮影をしました。