「急がず休まず諦めず」
いつもこの言葉を自分自身に言い聞かせ、
子どもとともに歩んできました。

丹治園実さん奏(かなで)さん親子の場合

 0〜3歳児コースへは、1歳9ヵ月から参加させていただきました。実はその半年前、1歳2ヵ月から別のリトミック教室に参加していましたが、その教室に満足していなかったため、他を探していて、その時にスズキ・メソードの0〜3歳児コースを知りました。当時の職場の上司のお嬢様がスズキでヴァイオリンを習っており、サントリーホールや武道館での演奏などを通して、その評判を伺っていたため、すぐに見学の連絡をしました。当時は早稲田教室(現在の麻布十番教室)へ問い合わせましたが、早稲田教室の定員が満員でしたので、所沢教室へ見学に伺うことになりました。自宅から所沢教室へは高速を使って車で1時間ほどかかるのですが、2週間に1回のペースであれば大丈夫、と参加を決めました。

家では自分で俳句かるたを並べ、遊んでいました コースでは、小林一茶の俳句を100句覚えて、教室のみんなの前で一人ひとりが発表するのですが、喋り始めるのがゆっくりだった奏は、前に出てもなかなか言葉として句を発表することができませんでした。その時の正直な気持ちとしては「まだ話せないのに、前に出てポーズをすることにどんな意味があるんだろう」と感じていました。

 ある俳句の発表の時間のことです。俳句のボードを手に持って皆の前に立ち、私が上の句を読んでしばらくの沈黙の後、ヴァイオリン科の武井玲子先生が「立派に心の声で発表ができましたね」と言われました。沈黙の中、奏がその先の句を心の中で発表しているという発想は私の中にはまるでなかったので、武井先生の言葉を聞いて自分のそれまでの考えをとても 恥ずかしく感じました。同じくらいの年齢の子がスラスラと発表する姿と比較して、気後れした気持ちもあったのだと反省しました。子どもの成長はそれぞれで、親がそれを理解していなくてはならないことを教えていただいた瞬間でした。

初めての発表会で、一茶の俳句を詠んでいるところです。「秋風や むしりたがりし 赤い花」を詠みました。偶然かもしれませんが、初めて作った曲のタイトルが「秋の花」でした。奏の中の俳句の思い出がこの曲に繋がっているかもと思うと、子供の想像力が自分の想像よりはるかに大きなものなのかもしれないと思わされます。 1歳になる前からクラシックが好きな子で、特に「クインテット」というクラシックの人形劇が大好きでした。それ以外の曲を家や車でかけると「ぎゃーっ」と叫んで全身で拒否をして、そればかり聴きたがるほどでした。音楽好きなのは早くから感じ取っていたので、まずは家の近くでリトミック教室があるか探し、通い始めたのでした。

 スズキの0〜3歳児コース前に通っていたリトミック教室では、親や先生の自己満足の場であるように感じていました。CDの音楽を流して太鼓を叩いたり踊ったり、それがいけないというわけではなく、子どももそれに合わせてやってみようという姿は見られましたし、楽しそうにはしていました。ただ、奏の場合はあまり集中することはなく、走り回っていることが多かったことをよく覚えています。客観的に見たときに、なんだか親のエゴのように感じている自分がいました。リトミックに行っているというだけで、どこか押し付けのように感じたのかもしれません。こことは違う、もっと本人が心から楽しめる、子ども主体の教室はないかと考えるようになりました。

指遊びに使用した物です。宮川彬良さんが大好きだったので、お父さん指はアキラさんのように作ったら本人は大喜びで、作った甲斐がありました。0〜3歳児コースは親も子も一緒に取り組めることが多く、それも学びに繋がっていたと思います。喜びを共有できることで、楽しみの幅も広がりました。 スズキの0〜3歳児コースを見学し、すぐに参加を決めました。決め手は「楽器の生演奏」でした。ピアノやヴァイオリン、歌やアンサンブルなど、毎回内容の違う趣向を凝らした生演奏が目の前で聴けることはとても大きなポイントでした。明らかに奏の反応が今までと違い、目がキラキラして、リズムに乗って体を揺らし、全身で音楽を感じ取っている様子が見て取れました。参加してからは生演奏の時間はピアノの前が定位置となり、一番前で楽器演奏を聴くようになりました。

 0〜3歳児コースに参加する前から音楽は好きで、特にクラシック音楽に興味を示していましたが、参加してからは、それまで以上に「音楽を自分から楽しむ姿勢」が育まれていったように感じます。家のピアノをコンサートで演奏しているつもりのように弾いてみたり、階段でエアピアノのように弾く真似を繰り返したり、ジュースのケースを持って首に当てストローを持ち、ヴァイオリンを弾くような真似をしてみたり、毎日の遊びの中に「音楽」が常にありました。生演奏や楽器を身近に見させていただいたことで、楽器からアンサンブル、オーケストラへと興味の幅も広がっていき、2歳を過ぎるとオーケストラの演奏を見ながら指揮者の真似をするようになりました。毎日毎日、1日も欠かすことなく、自分から指揮を振るのです。特に好きな曲がエルガーの「威風堂々」で、自分でCDや録画、DVDなどを再生させ、毎日振っていました。「威風堂々」以外にもたくさんの曲を覚え、外に出かけていて音楽が聴こえてくると、それに合わせて指揮を振ってみたり。オーケストラの楽器の名前もほとんど覚えてしまいました。今では、いろいろなジャンルの音楽に興味を示すようになり、曲や音を覚えるのは早く、音感を鍛えさせていただいたように思います。

家で指揮の練習をしているところです。マイ指揮棒には佐渡裕氏にサインをしていただき、本人の宝物となっています
 俳句を覚えることは記憶力の強化とともに、四季への興味にも繋がりました。0〜3歳児コースに入って半年、2歳2ヵ月の頃、「菜の花や 霞の裾に 少しずつ」の句を私が詠むと、奏が「なのー」とよく言っていました。よく通る道に菜の花がたくさん咲いているのを見て、「あ、なのー」と喜んで指差していた姿は今も目に焼き付いています。また、俳句の書かれたカードは、すべて漢字が書かれていたためか、漢字をすぐに読めるようになりました。幼稚園の頃には漢字の書かれた本なども、簡単なものであれば読め、読めない漢字は「これなーに?」と進んで聞いてきて、すぐに覚えるほどでした。

 家でも車の中でも、鈴木鎮一先生が詠まれた一茶の俳句のCDをかけていました。ゲームのように俳句カルタで遊んだり、CDを聴きながら下の句を詠んだり、日常の遊びに取り入れていました。

 私が仕事で忙しく、所沢まで一緒に行けない時は、主人や私の母が代わりに付き添って行ってくれていました。主人からは、「落ち着きがなくてレッスンに集中できないことがしばしばあったけれど、先生方が辛抱強く見守ってくださっていた」と聞いていました。母からは、「教室に着くまでの車の中で必ず寝てしまって、着いてからなかなか起きられず大変だった時期があったけれど、それでも毎回楽しそうにレッスンを受けていた」と聞きました。

 家のピアノをよく弾いていたことや、寝る前に寝室へ向かう階段で必ずエアピアノのように弾く真似を続けたりと、ピアノが好きでした。しかし、ヴァイオリンのおもちゃで遊んでいたりして、どちらも好きな様子であり、どちらを選んだらいいのかしばらく迷っていたため、0〜3歳児コースでお世話になっていた堀佐和子先生に相談しました。私自身がピアノを子どもの頃に習っていたので、家である程度は教えられること。指揮の真似が好きなことをよく知ってくださっていたので、今後もし指揮を勉強したいということになった場合、ピアノが弾けた方がいいのではないかということ。ヴァイオリン科では普段のレッスンとアンサンブルなどもあるため、仕事を持っているお母さんとしては負担が増えてしまうのではないかということ。今後のことを一緒に親身になって考えてくださり、最終的にピアノ科へ進むことに決めました。

 堀先生の教室に入るようになった経緯は、0〜3歳児コース見学の時から、些細なことでもなんでも堀先生に相談させていただいていました。ユニークな子どもですので、この子の特徴をよくわかってくださっている堀先生であれば安心という思いもあり、ご指導をお願いいたしました。奏自身が人好きで、堀先生のことも大好きだったので、楽器科に進む際に違和感なく始められるのではという思いもありました。

 家での練習では、CDをかけてすぐに曲は覚えるのですが、曲としてピアノを弾けるようになるまでとても時間がかかりました。1年経ってようやく「キラキラ星」と「ちょうちょう」を弾けるようになったくらい、スタートにとても時間がかかりました。そのため、初めての発表会はピアノ演奏ではなく、一茶の俳句の発表だけの参加でした。同時期に始めた子はどんどん先に進んでいて、私自身焦る気持ちが強くありましたが、他の子と比較しても仕方がないと腹をくくり、この子のペースを見守るしかないと自分に言い聞かせるよう、焦りを抑えていました。それでも初めての発表会はとても嬉しく、本人も終始ニコニコして、胸を張ってはっきりと俳句の発表をすることができました。

毎日ピアノに触れていて、思うままに音をだしていました うまく弾けないと癇癪のように泣いたり叫んだり、自分の頭を叩いてしまったり、自分が思うように弾けない時には、ものすごく悔しがったり、自分で頭で納得してからでないとなかなか行動に出にくい慎重なところがあったり、練習を通して様々な特徴が見えてきました。感情をストレートに表現して練習に向き合っていた幼稚園時代でしたが、だんだんと癇癪も治まり、粘り強く繰り返しの練習ができるようになっていきました。

 自分で自分のやりたいようにやるのが好きで、先生の話を聞いていないことが多々ありました。教えていただいても上の空。家でも教わるのが嫌で、「ふんっ」と聞く耳を持たず、反発することも多かったです。こちらも一緒に練習を見るのが疲れてしまうことが多々ありましたが、指導曲集のCDを聴いたり、CDに合わせて弾く練習を繰り返し、自分の体に覚えさせるようにすることで、だんだんと音色も良くなり、指もスムーズに回るようになっていきました。

 家での練習は本人の反応を見ながら、試行錯誤でやっています。数字が好きで小さい頃から時計を読むことが好きだったため、始めのうちは「○時○分から始めようね」と開始時間を決めて、練習を毎日の日課となるよう繰り返し行なっていきました。段々と自分で開始時間をどうするか決めさせるようにして、今ではこちらから「何時から練習する?」と聞くのを控えるようにしています。練習時間はだんだんと長くできるようになり、幼稚園の年長頃には1日1時間半、長いと2時間練習できるほど、集中力も養われていきました。

いろいろな楽器に興味を示し、自分でやりたがります。自宅で私のサックスを吹こうとしているところです。 「練習は?」の声かけを控えてから、面白い反応が見られるようになりました。自分で作曲をするようになったのです。「曲を作ったから録ってー」と録音したいと言い出し、その曲にタイトルを付け、「ここはスケートで滑ってるイメージなの」などと説明も加えて教えてくれます。そしてその曲を寝る時に自分でかけ、聴いているうちにスヤスヤと気持ち良さそうに眠りにつきます。「秋の花」「いつまでも友達」「流れ星ワールド」「サツマイモとの出会い」など、9曲ができました。こちらは常に自分で考えさせたり、自主性に働きかけられるような声かけを心がけるようにしています。0〜3歳児コースに参加したことで、曲のメロディを覚えるのが早く、指導曲集のCDをすぐ覚えられるため、イメージを作りやすいようです。

堀先生は本当によく奏のことを理解してくださっていて、本人のやる気の引き出し方がとてもお上手です。中でも練習シールノートは、レッスンを始めた頃から今でも続いています。練習して上手に弾けたらシールを貼っていくのですが、本人が楽しんで練習できる工夫を、常に一緒に考えてくださいます。オススメのCDや本を貸してくださったり、相談も熱心に聞いてくださったり。コンサートや公開レッスンの見学など、様々な機会に声を掛けてくださり、その度に奏も刺激され意欲も高まり、ピアノの音色もきれいになります。刺激の吸収と反応がそのまま音に出るので、聞いているこちらもとても面白いです。 また、0〜3歳児コースで毎回最後に先生とお母さんたちだけでお話をするお母さん教室が、私にとっては現在の毎日のお稽古に役立っていると感じています。様々なお母さん方の子育てに関する考え方を聞くことができ、勉強になりました。楽器科に進まれているお子さんのいるお母さんのお話を伺うこともあり、その後の楽器科でのイメージをするのに役立ちましたし、他のお母さんがどんな風に子どもと向き合っているのかを聞ける機会も貴重な時間であったと思います。子育てに正解はないけれど、それぞれ悩みながらも子どもに向き合っていることを話し合い、悩みを共有できたり、先生から直接アドバイスいただけることも心強かったです。

今年の発表会では「ミュゼット」を弾きました。楽器科に移って初めのうちはなかなか曲が進まず、こちらもヤキモキしていました。2年目を過ぎたあたりから、トントンと覚えた曲を弾けるようになっていきました。次の発表会では初めて、ピアノとヴァイオリンとチェロのアンサンブルに挑戦させていただくことになりました。本人はとても喜んで、意欲もこれまで以上に高まっています。ピアノ一曲の発表だけでなく、他ではあまり経験できない機会を与えてくださることも、スズキの魅力だと思います。 子育ての考え方について、スズキに関わっての変化として、自分自身だけでは気づけなかったことが多くあったのではないかと思います。0〜3歳児コースで毎回「子どものいいところ」を書いてくるという宿題がありました。日々の育児の中で見過ごしがちなところを長所として捉えてレポートすることは、私自身苦手とするところでした。思えば、「できること」よりも「できないこと」ばかり目がいってしまっていて、それが他の子と比較してしまうことに繋がっていたのだとも思いました。

 そこで「急がず休まず諦めず」いつもこの言葉を自分自身に言い聞かせ、子どもとともに歩んできました。スズキ・メソードでお世話になるようになり、音楽を通して子育てという勉強をさせていただいていると感じます。音楽と向き合うことは、自分自身と向き合うこと。自分の特徴がそのまま出る音楽は、奏でる方も教える方も同じで、それゆえ毎日一緒に練習をしている親もその特徴がそのまま出るのではないでしょうか。私自身堪え性がなかったり、自分自身と向き合うことばかりで反省の毎日です。ですが、それに気づけたのも一緒に音楽に向き合ってきたからこそで、「気づき」を与えてくださっていることにいつも感謝しています。スズキでなかったら、ただピアノの技術ばかりに目がいっていたと思います。

 音楽と向き合うことで、奏自身のユニークさはそのままに、今後困難に立ち向かえる力やしなやかに物事を考えられる心、自己肯定感が養われていってくれたらと思っています。

0〜3歳児コース所沢教室