80年の歩みと新しいスタート
黒河内健(理事長 2026年〜)
早野前理事長のご尽力により、2年前に始まった「会長」と「理事長」による運営体制も、生みの親の手を離れ、次の段階に入ります。これまで築かれてきたものを大切に受け取り、その価値を次の時代にどうつないでいくか。今は、長いリレーのバトンを手にしたような気持ちです。
私は60歳で理事に選任いただき、この8年間、さまざまな活動を通して、80年前に才能教育運動を始められた鈴木鎮一先生の理念と、その発展の歩みを学んでまいりました。そして、その精神が今も、指導者、事務局、保護者、生徒をはじめ、多くの方々の中に、そして組織の運営そのものにも息づいていることを実感しています。
一方で、80年の歳月で社会も教育を取り巻く環境も大きく変わりました。誰もが思い出せるたった6年前には、コロナ禍があっという間に社会常識を、そして人の心までも変えてしまうことを経験しました。収束5年目の今、我々は何事もなかったように大転換した社会を当たり前のように受け取り、生活しています。スズキ・メソードも例外ではありません。これは驚くべき、恐るべきことだと感じます。
そうした中で私が感じているのは、今のスズキ・メソードには、これからの成長につながる多くの「宝」が我々に宿っているということです。「どの子も育つ、育て方ひとつ」という鈴木鎮一先生の信念を源流に、実績が示す指導体系や指導曲集、これまで実践してきた膨大な指導や研究の記録、組織継続や大規模イベント開催を可能にする様々な運営ノウハウ、さらにはスズキ・メソードの指導法の確かさを科学的に示す研究など。そして何よりも、理念を体現し、確かな指導を実践するたくさんの指導者とそこに集う多くの生徒さんや保護者の皆さん、日本や海外に広がったOB・OGや支援者の輪。このような見えざる資産を我々は豊富に抱えています。
大切なことは、これらを保存するという守りの姿勢でなく、今の時代にどう生かしていくかという攻めの姿勢だと思っています。歴史を尊重しながら、必要な変化には前向きに取り組む、さまざまな声に耳を傾け、考え、試し、より良い形へと育てていく。その積み重ねの先に、新しいスズキ・メソードの姿が見えてくるのではないかと思います。
このような取り組みのために、東 誠三会長をはじめ、多くの皆様との対話を大切にしながら、80年の歩みを次の時代へ、つないでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。