豊田耕兒先生の長年の研究が、1冊にまとまりました! 
存分なエネルギーと師事されてこられた先生方へのリスペクトに溢れています!

 

  才能教育研究会名誉会長の豊田耕兒先生が、「ライフワーク」とされていたバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ全6曲の研究成果となる楽譜を、全音楽譜出版社より、8月15日に出版されました。まさに入魂の1冊。巻末の詳細な注釈を見るだけでも勉強になります。
 
 さっそく開いてみましょう。中表紙のすぐ後に、「謝辞」とあります。それに続く3名の恩師の名前を見て、そのインパクトの大きさに驚かされます。
・鈴木鎮一
・George Enescu
・Arthur Grumiaux
とあります。ジョルジュ・エネスコは、ルーマニア生まれのヴァイオリニスト。20世紀前半の三大ヴァイオリニスト(他はクライスラー、ティボー)の一人と言われました。豊田先生は、パリ国立高等音楽院を卒業後、エネスコに師事されました。2年後にエネスコが亡くなると、ベルギー生まれで、ブリュッセル王立音楽大学のアルトゥール・グリュミオに師事され、ともに室内楽の活動をされるなど、強い絆で結ばれていました。これらのエピソードは、鈴木先生の著書「愛に生きる」でも紹介されています。そして、もちろん鈴木先生の名前が最初にあるわけで、この音楽史に残るヴァイオリニストたちへの謝辞から始まる姿に、まず圧倒されるわけです。

 
 楽譜を見て行きますと、豊田先生のこだわりに溢れた研究の成果が随所にあります。
 
 たとえば、Partita No.1の2曲目、Doubleの譜例を見てみましょう。ここで紹介する指遣いは、ハーフポジションを巧みに生かして、無駄のない運指が検討されています。慣れないうちは、少し大変ですが、何度か弾いてみると、よく考えられていることがわかります。

 
 そして、豊田先生独特の「5」の指遣いも、いくつか採用されています。「5」とは、「4」指をポジションを変えずに半音、もしくは一音上げる意味で使うことを表していますが、これも慣れてくると、わざわざポジション移動をしなくても音取りができるようになります。不思議ですね。譜例はPartita No.2の終曲、有名な「Ciaccona」の一部分です。

 
 また、巻末に用意されている詳細な注釈では、かなりの部分で、エネスコの助言や指遣い、レッスンの時の内容が反映されていることに驚かされます。この辺りに、豊田先生がヴァイオリンを勉強している皆さんにどうしても伝えたかった部分なのでしょう。エネスコという巨匠の最晩年に豊田先生が受けられたレッスンが、目の前で展開されているかのような錯覚を覚えるかもしれません。
 
 9月になってから、豊田先生にインタビューする機会をいただきました。後日、こちらでその内容を紹介させていただきますので、楽しみにお待ちください。
 


 
 今回の出版をお祝いしようと、ヴァイオリン科指導者から、素敵なメッセージをいただきましたので、紹介しましょう。
 
山邊亮子先生(関西地区ヴァイオリン科指導者)

 この楽譜を開けると、最初のページに豊田先生の『謝辞』が載っています。

「本書を恩師  鈴木鎮一、George Enesucu 、Arthur Grumiax の諸氏に心からの敬愛とともに  深い感謝を込めて捧げます」
  この言葉からも先生の素晴らしいお人柄を感じることができ、深い感銘を受けました。
 
  今から23年前、国際スズキ・メソード音楽院生として3年目の時に、豊田先生から、バッハの無伴奏パルティータ第3番を初めてレッスンしていただきました。
  プレリュードから始まり、ルーレ、ガヴォット、メヌエット、ブーレ、ジーグと続きますが、一瞬の「間」のとり方の違いで印象の変わる舞曲である上に、無伴奏という難しさを感じながらも、豊田先生のレッスンを受ける中で、自分自身のこの曲との向き合い方を教わった気がいたします。
 
 この楽譜は先生の長年の研究の集大成ともいえるものではないでしょうか?
 この楽譜には先生の「奏法注解」が巻末に載せられてあり、解説もされていますので、この曲を初めて弾く方も、練習に取り組みやすいでしょう。 
 
 今日、9月1日に87歳を迎えられた豊田先生の、音楽に対して常に真摯に向き合われておられる姿には、私自身、いつも感動しています。レッスンを受けた当時の楽譜と見比べながら、この新しい楽譜を通して私自身もバッハをより深く勉強できるのが、とても楽しみです。
 


 
野口美緒先生(関東地区ヴァイオリン科指導者)

 豊田耕兒先生のマスタークラスコンサートが行なわれた1月末、新型コロナウイルスの影響がこれほどのものになるとは ってもみませんでした 3月を最後に、長野県外からのマスタークラス受講はできなくなりました。お会いして音楽するということがどれほどの奇跡的でありがたいことだったか…。私がこの状況にあたふたする間も、先生は粛々と出版に向けて進めていらしたことの重みを感じます。

 豊田先生はお若い時に、バッハの無伴奏を全曲録音をされて以来、長年にわたってこの曲に取り組み、研究し続けていらしたことでしょう。指導者研究会の講義やマスタークラスでも、ご自身のお考えを惜しげもなく共有してくださってきました。
 
 出版については、何年も前からおっしゃっていましたが、その間も次々と「もっとこうしてみよう」と、解釈に沿った奏法を検討されていました。

 先生の指使いの中には、初めて弾くと全然弾けなかったり不思議に感じるものもあるのですが、慣れてくると「この音楽がこう聴こえるための指使い」であることに気づきます。バッハの意図に思いを馳せての取り組みです。
 
 常々、先生のバッハへの深い敬愛を肌で感じてきました。それは先生が敬虔なカトリック教徒であることともつながっているように思います。鈴木先生の毎年のミサで奏でられる音楽。そして昨年秋にローマ教皇様が来日されて、豊田先生の指揮で御前演奏をした時、音楽を神様に捧げるということがどういうことかが、先生を通して私の心にも深く降りてきました。
 
 今回の出版は、先生のバッハ研究の集大成、愛と尊敬の結晶!と胸を熱くしてページを開くと、謝辞に射抜かれました。この本には鈴木先生とエネスコ先生とグリュミオ先生への敬愛も詰まっている・・・
 
 豊田先生は、エネスコ先生のバッハの講義の話もしてくださいます。ある曲のこの部分が、このカンタータと似ている。そこにはこういう歌詞がついているから・・などとバッハの深遠な世界が広がったとか。今回の楽譜の解説ページには、エネスコ先生の解釈もバッハの自筆の引用とともに収められています。
 
 豊田先生の渾身の一冊を受け、またカザルス先生が毎朝バッハの無伴奏(チェロ組曲)を1曲ずつ弾いていらしたというインタビューを思い出し、私もできる限り毎日バッハを弾くことにしました。まだまだ「弾いてみている」状態ですが、先生の解説も味わいつつ、そのお力を借りて、バッハの遥かなる宇宙を進んでいきたいと思います。
 


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