ドヴォルザークホールで、ドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏!
「第76回プラハの春国際音楽コンクール」チェロ部門は、2025年5月7日から開催され、203人のチェリストが参加。本選は5月14日にルドルフィヌム内のドヴォルザーク・ホールで行なわれ、セミファイナルを勝ち抜いた3人のファイナリストが、プラハ交響楽団と指揮者マルケ・プラシルとともに演奏しました。本会出身のチェリストで、チェロ部門第1位の栄誉に輝いた水野優也さんの演奏の様子など、一部始終をYouTubeで見ることができます。2020年の第89回日本音楽コンクール第1位の時よりも、さらに精悍さを増し、圧倒的な表現力と訴求力の高さに惹き込まれてしまいます。YouTubeの画面では、水野優也さんの演奏動画を視聴することができます。
→YouTube動画
「第76回プラハの春国際音楽コンクール」チェロ部門の審査は、イギリス出身のチェリスト、ラファエル・ウォルフィッシュが審査員長を務め、審査員にはマリア・クリーゲル、マルク・コッペイ、ナタリー・クリン、ミハイル・カーンカ、トマーシュ・ヤムニク、ルドヴィート・カンタの各氏が名を連ねました。
審査委員長のウォルフィッシュは「私は親愛なる同僚全員の代弁者として言えると思いますが、私たちは10日間、極めて高いレベルの演奏、情熱、音楽への愛、そして私たちの素晴らしい楽器であるチェロへの愛を聴き、素晴らしい時間を過ごしました。『今夜演奏する機会を得た全員にとって、ドヴォルザークの作品をこの偉大で歴史的な空間で演奏するだけで、十分な賞です。ドヴォルザーク自身もここで音楽を聴いていたでしょう』」と述べています。

©Prague Spring Festival / Vojtěch Brtnický
水野優也さんのプロフィールです。
2025年、第76回プラハの春国際音楽コンクールチェロ部門において、日本人として初の優勝を果たし、併せて4つの特別賞を受賞。第89回日本音楽コンクール第1位、第13回東京音楽コンクール第1位をはじめ、国内外の主要コンクールにおいて高い評価を受ける。プラハ交響楽団、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、読売日本交響楽団、大阪交響楽団、京都市交響楽団などと共演し、ソリストとしての活動を重ねるほか、国内外でのリサイタル、室内楽公演、国際音楽祭への出演など、多岐にわたる演奏活動を展開している。
マンスリースズキ編集部では、さっそく水野優也さんにインタビューを実施しました。
①本選までのすべての演奏曲を教えてください。
事前審査
• ポッパー:妖精の踊り Op. 39
第1次予選
• ピアッティ:12のカプリース Op. 25 - 第7番 マエストーソ
• ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op. 69 第1楽章
• ドヴォルザーク:ロンド ト短調 Op. 94, B. 171
第2次予選
•(新曲) ノヴァーク:チェロ独奏のためのソナタ第5番「断片と歌」
• リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
• ショパン:チェロ・ソナタ ト短調 Op. 65 第1楽章
• プーランク:チェロ・ソナタ FP 143
本選
• バッハ:無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV 1012より プレリュード、サラバンド、ジーグ
• ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op. 104, B. 191
②ドヴォルザークの協奏曲には格別の思いがあると思います。
チェリストであれば誰もが一度はオーケストラと共演したいと願う、まさに王道の協奏曲です。どのフレーズを取っても心揺さぶられるような美しいメロディーに満ちていて、初めて取り組んだ時から約10年、これまで10回ほどオーケストラと共演してきました。演奏の難しさや、オーケストラの音に埋もれやすい箇所なども把握していたので、本選ではこれまで積み重ねてきた経験を信じ、全力で今できるすべてをぶつけるつもりで演奏しました。
もちろん、コンクール独特の緊張感はありましたが、プラハのドヴォルザークホールで、この名曲をプラハ交響楽団と演奏できたことは、これまでがんばってきた自分への最高のご褒美だと感じ、なるべく楽しむことを意識しました。
③プラハは本当にいい街ですよね?
本当に美しく、心に残る街です。以前観光で訪れたことがあり、またハンガリーに留学していた経験もあるので、東欧独特の空気感には親しみを感じています。
コンクール事務局の方々や観客の皆さん、街で出会った人々もとても温かく、そして何より、皆さんがこの街に誇りを持っていることが強く伝わってきました。
個人的には、味付けの濃いチェコ料理と、少しアルコール度数が低めの冷えたチェコビールの相性が抜群で、すでに恋しくなっています(笑)。
④今回の受賞に対して、各先生方からもいろいろなお言葉があったと思います。
多くの先生方から、「コツコツ努力を続けてきた結果が実を結んでよかったね」と温かい言葉をいただきました。特に現在師事しているクレメンス・ハーゲン先生に直接報告に伺った際、「3年間の集大成として最高の結果が出て、本当に良かったね」とおっしゃっていただき、思わず胸が熱くなりました。
⑤来年の「プラハの春国際音楽祭」での演奏をプレゼントされましたね!
世界的な音楽祭に、コンクールの優勝者として再びプラハの地に戻れることは大変光栄です。同時に、より高いクオリティの演奏を求められる立場になる責任も感じています。これからの1年間、そしてその先も、音楽に誠実に向き合い、さらに研鑽を重ねていきたいと思っています。