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関東地区の「春休みこどもフェスティバル」は
盛りだくさんな内容が満載の1日となりました。

日時:4月4日(火)14:00〜18:30
会場:きゅりあん大ホール(品川区立総合区民会館

第一部は、フルート科名誉教授の髙橋利夫先生によるグループレッスン!


 春休みの一日、大井町駅前のきゅりあん大ホールのステージは、約400人の子どもたちで、いっぱいになりました。ほとんどの子どもたちにとって(フルート科以外は)、髙橋利夫先生は初めてお会いする先生です。目の前に現れた先生は背が高く、どの子にもよく見えました。

髙橋先生が鐘の音を聴かせる様子に、釘付けの子どもたち 髙橋先生が、机の上から何かを取り上げ、ちょっと叩きました。「チ〜〜ン」澄んだ綺麗な鐘の音がホールに響いて消えていきました。「いいかい? こういう音を出すのだよ」と、髙橋先生。子どもたちの目は髙橋先生に釘付けです。次にまた何かを取り上げて叩きました。「ポポポポポッポ」小さな木魚です。「何?」また子どもたちの目は髙橋先生に集中します。
 「さあ! キラキラ星を弾こう!」
 400人の子どもたちが一斉にヴァイオリン、チェロ、フルートでキラキラ星変奏曲を弾き始めました。「タカタカタッタ」「ジャンプ」=髙橋先生は移弦をこう呼ばれました。「タカタカタッタ」「タタッタ、タタッタ」髙橋先生が全身で表現するリズムや音楽的な抑揚、フレージングに、子どもたちは釣られるように演奏し、生き生きとしたエネルギーに満ちたキラキラ星に変わっていきました。

 今日のグループレッスンの曲は、「キラキラ星変奏曲」、髙橋先生が選曲された「さくらさくら」、チェロ指導曲集より「フランス民謡」、ヴァイオリン指導曲集より「ゴセックのガヴォット」、「狩人の合唱」、「ユーモレスク」でした。ヴァイオリン、チェロ、フルートの異なる楽器で一斉に行なうグループレッスンは、関東地区では初めてです。先生たちも「どうやってレッスンをするのだろう?」と不思議で、興味津々の様子でした。

 「さくらさくら」は指導曲集にはない曲ですから、全員が初めての曲です。往年の名ソプラノ、伊藤京子さんの歌声がホールに流れました。日頃テレビから流れてくる歌声とは、まったく違う雰囲気、子どもたちは初めての体験だったでしょう。たおやかな日本古謡「さくらさくら」の音楽のイメージを子どもたちに感じ取ってほしい、という髙橋先生の願いが感じられました。折しもこの日は都内で桜が満開となり、絶好のタイミングでのレッスンでした。子どもたちの記憶に残る曲になったことでしょう。

 スズキ・メソードはまず耳から聴くこと、それも素晴らしい演奏を聴くことを大事にします。この日、髙橋先生が用意されたのは、「狩人の合唱」がベルリン・オペラ劇場合唱団の男性コーラス、「ゴセックのガヴォット」は鈴木鎮一先生と鈴木先生が尊敬されたミッシャ・エルマン、「ユーモレスク」はヴァイオリンの巨匠、フリッツ・クライスラーと、フルートの巨匠で髙橋先生の師でもある、マルセル・モイーズの演奏でした。

 最も印象的だったのは、モイーズの「ユーモレスク」がホールに流れ始めた時です。ステージの上も客席もシーンと静かになりました。澄んだフルートの音色に皆の耳が集中している時間を感じました。

 髙橋先生のレッスンは、どんなにシンプルな曲であっても、その曲の持つ音楽的な魅力を引き出し、子どもたちへ伝えたいという愛情に満ちています。3歳、4歳から中学生までの約400人の子どもたちにとって、この日は初めての体験がいくつもありました。子どもたちは、それぞれの柔らかな心と頭で、今日のことをキャッチし、記憶に留めたのではないでしょうか。

 会場にいらした保護者からは、「いつものレッスンとはひと味もふた味も違うレッスンを受けることができ、参加してよかった!」という声があちらこちらから聞かれました。「子どもたちの音が変わっていく様子に驚いた」という感想もありました。実は髙橋先生、アメリカではSorcerer(ソーサラー:魔法使い)のあだ名をお持ちです。音を変える「魔法使い」です。

(ここまで、フルート科指導者の宮地若菜先生によるレポートでお届けしました)


 休憩時間のロビーは、大変な混雑でした。ヴァイオリン、チェロ、フルートの楽器体験コーナーには長蛇の列ができ、缶バッチ制作コーナーも大人気でした。
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第二部は、スズキ出身の中木健二さん(チェロ)、印田千裕さん(ヴァイオリン)のコンサート!


 第二部のステージは、一転して静謐な空間になりました。客席の子どもたちも、今度は「聴くこと」に集中する時間となりました。

 最初に登場されたのは、3歳から8歳まで、東海地区の久保田顕先生のもとでチェロを習われた中木健二さんです。東京藝術大学を経て、パリ国立高等音楽院、スイス・ベルン芸術大学の両校を首席で卒業され、第5回ルトスワフスキ国際チェロコンクール第1位など受賞多数。2010年からはフランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団首席奏者として活躍。2014年に帰国後は、紀尾井シンフォニエッタ東京のメンバーであり、東京藝術大学准教授として後進の指導にも力を注がれています。
 この日の演奏曲は、
・バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007
(アンコール)バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV 1009より「ブーレ」(指導曲集第7巻より)
中木さんの公式サイトのトップページで、第1番のプレリュードを視聴することができます。リハーサルを終えた直後に、楽屋でお話を伺うことができました。

■中木健二さんの話
 私が生まれる前から、子どもにはチェロをさせたいという思いが、母親にありました。母はピアノ教師をしていましたが、演奏家になれなかったことで、子どもには早いうちから楽器をさせたい、それも大好きなチェロを、と考えたようです。チェロを始めてからは、練習時間を確保するため、幼稚園に行かせてもらえず、毎日、3時間も4時間もチェロを練習していました。年長になって、ようやく幼稚園に行きましたが、レッスンのある日は、車で迎えてもらい、そのまま教室に直行することも。体格が大きかったので、未就学児童が入れない本格的なクラシックコンサート、例えばロストロポーヴィチやベルリン・フィルの演奏会などにも連れて行かれ、早くからコンサートの雰囲気は知っているような子ども時代でした。

 チェロを習ったことを感謝するようになったのは、ずいぶん後になってからでした。当時は「やらされている」と感じることが多く、どうやったらやめられるか、どうやったら親を説得できるかばかり考えていました。それが、ベートーヴェンの「メヌエット ト長調」を卒業録音した時のことです。久保田先生の評価は「ま、これでいいか」でした。自分自身もそうですが、その演奏を積極的に評価されなかったことが悔しかったのでしょう。思わず「来週、もう一度録音させてください」とお願いし、再録音。今度は、くしゃみも入ってしまいましたが、そのまま提出した思い出があります。あの時の先生のつぶやきに、もしかしたら私の中でスイッチが入ったのかもしれません。その後、何年も会えなかったのですが、帰国して以来、久保田先生は、私のことをいつも応援してくださっていました。それに先生の生徒さんを大学で教えることも多く、これからますますお付き合いをさせていただこうと思っていましたが、先生がご病気で急逝され、とても残念でした。先生の追悼演奏会では、同じ頃に習っていた森山涼介さん(現在、東京都交響楽団)、寺田達郎さん(現在、フリーのチェリスト)とポッパーの「レクイエム」を演奏しました。

 今日、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番を選んだのは、数曲がチェロ科指導曲集に入っていることもありますが、もともと小さい頃からの憧れの曲でした。以来、バッハは付かず離れず、いつもそばにあって、昨年、無伴奏チェロ組曲全曲をCDリリースしたり、全曲演奏会を開いたり、最近はバッハをいろいろなところで弾いています。僕が始めた頃の環境にいる子どもたちに聴いて欲しいし、自分を支えてくださったスズキ・メソードの皆さんに感謝の気持ちも込めたい、という思いもありました。

本番前に楽屋を訪ねた関東地区チェロ科指導者たちと記念撮影 楽器は、イエローエンジェルから貸与された1700年製ヨーゼフ・グァルネリで、有名なグァルネリ・デル・ジェスの父親の作品です。この楽器にしかない独特な音色があります。一番最初に弾いた時に、獣のような感触を得ました。無限大の力というか…。私が何かしようとすると、「イヤだ」と明快に意思を主張しますし、決して弾きやすい楽器ではありません。でも、弓と弦が触れ合うだけで、ものすごく響きが自然で、豊かで、説得力のある音がします。この楽器を弾くようになって、楽器の邪魔をしない弾き方になりました。

 スズキの子どもたちには、たくさん伝えたいことがあります。まずは、「信じて続けて欲しい」。そして「好きになるまで続けて欲しい」、ということです。簡単に好きになれるものと、そうでないものはどんな年齢にもあると思いますが、楽器を通して音楽を演奏する達成感とか、誰かと分かち合える喜びは際限ありません。そのきっかけを幼いうちにスズキ・メソードで得られるとしたら、それはとっても幸せなことだと思います。

 
 続いて、登場されたのが、2歳から父の印田礼二先生(関東地区ヴァイオリン科指導者)のもとでヴァイオリンを始められた印田千裕さん。品川弦楽団の第1回オランダツアーで、コンサートミストレスを務め、東京藝術大学を経て、英国王立音楽院を卒業。第9回江藤俊哉ヴァイオリンコンクールで第1位となるなど、国内外のコンクールで受賞を繰り返し、オーケストラとの共演、ソロリサイタルなど精力的に活動を続けていらっしゃいます。マンスリースズキ11月号にて弟の陽介さんとのデュオリサイタルをご紹介したことがありました。この日、演奏されたのは、以下の曲です。
・クライスラー:前奏曲とアレグロ(プニャーニのスタイルによる)
・幸田延:ヴァイオリン ソナタ 第2番
・サン=サーンス:序奏とロンドカプリチオーソ
・(アンコール)ウェーバー:カントリーダンス (指導曲集第5巻より)
 いずれも名曲揃いですが、日本人の作品を取り上げられたのは、印田千裕さんらしい選曲。鈴木鎮一先生とも親交を持たれた幸田延さんのヴァイオリンソナタは、とても伸びやかで素敵な曲であることをアピールする演奏でした。幸田延さんがヨーロッパで学んだ西洋音楽の様式に沿って、日本で最初に書かれた器楽作品です。演奏を聴いて、楽譜を見たいと思った子どもさんたちも多かったのではないでしょうか。楽屋で、お話を伺いました。

■印田千裕さんの話
 日本武道館でのグランドコンサートやサントリーホールでのコンサートなど、他のOB・OGの皆さんとご一緒する機会は、これまでも何度かありましたが、こうしてソロでスズキのコンサートに出演させていただくのは、今回が初めてですね。

 演奏曲に関しては、先生方からリクエストをいただきました。その中には、指導曲集の曲や今回演奏したクライスラーなどが入っていました。皆さんがレッスンで演奏される曲なので、1曲目とアンコールに入れさせていただきました。そして、どんな時でも自分らしさを出したいと考えていますので、大好きな幸田延さんのソナタを入れ、最後は何と言っても名曲中の名曲、「序奏とロンドカプリチオーソ」という構成でした。

公演後、花束を受けられたお二人 幸田延さんのソナタは、そんなに難しくない代わりに、割と気持ちが入っていきやすい曲です。鈴木先生と親交があったというのは勉強をしてから知ったのですが、やはりどこかで繋がっているなぁという感じは、抱いています。楽譜は、池辺晋一郎さんによる校訂・補筆で全音楽譜出版社より出版されていますので、ぜひご覧になってみてください。

 今日の演奏は、「責任」を感じますね。生徒さんたちやそのご両親たちに私が育ってきた音を聴いていただけたらと思います。

第3部は、早野龍五会長の講演「スズキ・メソードが育む生きる力」

 
 2016年8月に会長に就任された早野龍五会長から、「スズキ・メソードが育む生きる力」のタイトルで、お話がありました。この日は、会長のシンボルにもなりつつある和装で登場。桜の季節にコーディネートされたかのようでした。また、会場にはあちらこちらで、お話の内容に頷きながらも真剣にメモを取られる母親の姿を見ることができました。

お話の内容は、動画にて収録しましたので、ここに公開します。
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