より良き2023年になりますように

会長 早野龍五

 

 皆さま、あけましておめでとうございます。

 コロナ禍は、かれこれ3年にもなるのですね。昨年1年間だけみても、第6波、第7波、第8波と、感染拡大・縮小が繰り返されました。特に、昨年の夏期学校は皆が松本に集うことを楽しみにしていたのに、第7波と重なってしまったため、オンラインへの切り替えを余儀なくされたことが、とても残念です。
 
 しかし、最近では、旅行、スポーツ、演劇、コンサートなどの制限が緩和ないし撤廃されたことを受け、徐々にではありますが、スズキの地区大会コンサートなども開かれるようになりました。今年こそ、春の卒業演奏会や夏期学校で、多くの生徒さんの演奏を聴くことができますようにと、祈る気持ちです。
 
 「音楽と脳」に関する東京大学との共同研究もコロナ禍の影響を受け、研究の第二弾の開始が遅れていましたが、春休みまでぐらいの期間に、中学生から高校生のピアノ科の生徒さんのご協力を得て、行なわれることになりました。今回の研究は、東 誠三先生と石川咲子先生が用意してくださった音源を用い、曲を耳で聴いて覚えた場合と、楽譜を見て覚えた場合を比較するという、スズキにとって極めて重要なものです。結果をお知らせできるのはまだしばらく先になると思いますが、楽しみにしていてください。
 
 さて、昨年の2月24日に突然始まった、ロシアによるウクライナ侵攻は、厳しい冬を迎える中、まだ出口が見えない状況で推移しています。侵攻開始直後に、英国在住のスズキ指導者Anna Sibleyさんと、スペイン在住のスズキ指導者Ruth Miuraさんが、ウクライナのスズキの生徒さんや先生方を支援するクラウドファンディングを立ち上げました。本会の先生方にもこのことをご紹介したところ、現在までに、全世界から約300万円(うち、日本から約100万円)が寄せられています。
 
 寄付金は、ウクライナ・スズキ協会の活動を支えています。ウクライナのNataliia Koptienkova先生たちは、昨年夏にキーウでオーケストラ・ワークショップを開き、キーウ、ハルキウ、ルハーンシクなどの地域の先生と生徒が参加したそうです。また、昨年秋には、「音楽は世界を救う」という新しいプロジェクトを始め、キーウおよびポーランドとドイツで、ウクライナの戦争で被災した子どもたちを指導したり、難民の子どもたちを無料で音楽レッスンに招待しているとのことです。
 
 鈴木鎮一先生が、1946年、戦後の混乱期に松本音楽院を開設された時の平和への想いや、パブロ・カザルスが、1961年、スズキの子どもたちの演奏に感激して『音楽が世界を救う』とおっしゃったことなどが、今も、世界のスズキの先生や生徒さんたちの連帯の根底にあるのだということを、あらためて感じています。