関東地区指導者会による新年研究会をオンラインで開催

 

  新年早々に毎年開催している関東地区指導者会主催による2021年新年研究会が、1月11日(月・祝)、Zoomによるオンラインで開催されました。カメラオンで参加することで、「新年のひとときを鈴木鎮一先生とともに全員で笑みを共有しましょう」という呼びかけも行なわれました。参加メンバーは200名を越しました。
 冒頭、1978年の第29回夏期学校での鈴木鎮一先生(当時80歳のお元気なお姿でした)のグループレッスンを収録した動画を鑑賞しました。
 そして、関東地区委員長の小林庸男先生、副委員長の印田倫子先生のご挨拶に続き、早野龍五会長から次のようなご挨拶がありました。
 「今年は会が創立して75周年目となる新春。首都圏の新型コロナウイルスは200人に一人の感染率になっていますが、スズキでの感染者はほとんど出ていません。これは皆さんが感染対策を十分にされ、気をつけたことの成果です。手洗い、マスク、密を避けることを引き続きお願いします。そして、昨年来、これまでのスズキでは考えられない、新しい時代に対応した新しい方法でこの困難な時代を切り開いてきました。この新しい1年も、スズキの発展のために、よろしくお願いします」
 
 第1部は、土屋秀宇先生による講演、そして第2部ではスズキ・メソード出身の若手演奏家によるゲスト演奏という内容でした。オンラインでも、お互いに学び合う姿勢は変わりありません。一貫したテーマは「急がず休まず諦めず〜コロナ禍におけるスズキスピリッツの共有」でした。
 

第1部 講演 

 第1部に登場されたのは、一般社団法人「母と子の美しい言葉の教育」推進協会会長の土屋秀宇先生。13年間にわたり小・中学校の校長を歴任され、船橋市立小学校校長時代に手掛けた実践研究「自ら学ぶ力を育てる漢字指導」で第43回「讀賣教育賞」を受賞されています。
 2019年の全国指導者研究会での基調講演「今なぜ『徳性』の教育か〜子供たちのいのちの根を培う言葉のちからの不思議」が全国から集まった指導者の皆さんに大変好評でした。
 今回のご登場も、さらにお話を伺いたいとの関東地区の先生方の思いに応えるものとなり、講演テーマも、「子供たちのいのちの根を培う言葉のちからの不思議」でした。
 お話の概略は以下の通りです。
・言葉は、人類への天与の宝物ですが、現在の言葉に対する状況はどうでしょう。今、心配なことが6つあります。と言われて土屋先生が提示されたのがこの写真の6つでした。
・発達障害と愛着障害が混同されています。
・なぜ、人間の赤ちゃんだけが歩けるようになるまでに1年かかるのでしょう。実はこの1年は「黄金の時間帯なのです」
・教育の語源educateは、引き出すことです。
・人間だけが持っているハイレベルな心、それを私は「徳性」と呼んでいます。
・育てるべきは豊かな情緒と徳性です。
・言葉と音楽の教育は「徳育」そのもの。
・いかにして子供の言葉の数を増やすか。音読、群読があります。
 例として、土屋先生は青森山田学園の呉竹幼稚園での谷川俊太郎の詩「生きる」を年長の幼児たちが群読する様子を映像で紹介されました。土屋先生のご指導のポイントは、群読の中にも必ず一人ひとりの出番を作られることだそうです。
・言葉の教育をすることで、明らかな変化、そして効果が出てくること。
などのお話がありました。「残りの人生も子供の心に働きかける教育をしたい」というご決意も披露され、私たち自身の奮起も必要であることを感じさせる時間となりました。
 質疑応答もありました。「当たり前の賢母の精神が失われつつあり、より経済志向にシフトしているように見えます。こうした価値観が蔓延した理由はどこにあるのでしょう?」
 その質問に土屋先生は、「経済や物資よりも重要なのは心の豊かさなんです。士農工商の時代は、士は生き方を表し、農はものを作り出すこと、工もたくさんのものを作り出す、そして商はそれらをもとに商いをすることでした。ところが今の日本は商がトップにあります。これが混迷の原因です。本当は目に見えないもの、そして命にこそ価値があるのです」とお答えくださいました。
 

第2部 ゲスト演奏 

 第2部は、マンスリースズキでもおなじみ、スズキ・メソード出身のヴァイオリニスト、印田千裕さんと、弟でチェリストの印田陽介さんのお二人による演奏です。息の合ったヴァイオリンとチェロのデュオ演奏があらかじめ収録された録画で披露されました。 「毎日の習慣として言葉と同じように楽器の練習をしてきました。そして何よりも音を大切に演奏することを心がけました。たくさんの名曲に親しめたことも、今につながっています」など、お二人それぞれのお話を交えながらの演奏曲は次の通りでした。
 

 ・モンティ:チャルダッシュ
 ・ゴセック:ガヴォット
 ・バッハ:インヴェンション第1番
 ・クセナキス:ディブリ・ジーア
 ・ベートーヴェン:3つの二重奏曲 WoO 27 第3番 変ロ長調
 ・シベリウス:水滴(アンコール)
 
 よく知られた名曲や指導曲集の曲もヴァイオリンとチェロのデュオでの演奏はとても新鮮に聴こえました。クセナキスのような数学を学び、建築家でもあった作曲家を取り上げるところなど、お二人の持ち味が遺憾なく発揮されていましたし、原曲がクラリネットとファゴットのためのベートーヴェンの二重奏曲もロマン派のヴァイオリニストの編曲で披露され、ベートーヴェン生誕250年記念だった昨年を祝う粋なプログラムになっていました。アンコールで演奏されたのは、お二人の出されているCDのタイトルにもなっている「水滴」Water Droplets。シベリウスが9歳(11歳との説もあります)の時の作品です。ピッツィカートだけの演奏ですが、頭に残るメロディの反復が楽しく、スズキの子どもたちにもぜひトライして欲しいなと思える佳曲でした。
 
 最後に、小林先生から関東地区新年オンライン研究会の開催に尽力された先生方、そして録画収録・編集作業を担当された先生へのお礼もありました。そして、「大変な時代ですが、『急がず休まず諦めず』でまいりましょう」とのサインボードとともに今年の関東地区新年研究会は幕となりました。