福岡に初上陸、「楽器を持って集まろう会」!

 
 3月19日(土)、福岡でも桜の開花が宣言された三連休の初日、スズキ・メソードOB・OG会主催の「楽器を持って集まろう会 in 福岡」が開催されました。子どもの頃に慣れ親しんだ合奏練習の形式で、ヴァイオリン科指導曲集を中心に遊びましょう、という企画です。マンスリースズキ編集部も参加しました。
 

 これまで東京で2回、松本、名古屋、京都、富山でそれぞれ開催されてきた「楽器を持って集まろう会」。今回は、一気に九州に飛び、福岡を中心に、佐賀、大阪、東京、神奈川からOB・OG、そして現役の「大人のスズキ」の生徒さんたちと、地元の福岡で教室を開かれているヴァイオリン科の石川洋子先生、上田英行先生、チェロ科の喜多川悠先生を含め、17名の皆さん(ヴァイオリン9名、ヴィオラ3名、チェロ5名)の参加がありました。直前にコロナの濃厚接触者になられた方や、就活などのご都合でキャンセルが3名様ありました。

 それと、初の試みとしてZoomでのオンライン交流も図りました。大阪、名古屋、宇都宮、東京、そしてなんとオーストラリアのシドニーからは、現地でヴァイオリン科指導者として活躍される松山璃利先生も参加され、オンラインならではの展開となりました。璃利先生は、石川先生のお教室で学ばれた方で、マンスリースズキにも原稿を寄せてくださっているシドニースズキのブラクストン・ニート先生の奥様でもあります。この写真では、右上に映っていらっしゃいます。

 会場の大名クロスガーデンは、平尾バプテスト教会のもう一つの会堂として2012年11月に立てられた素敵な場所でした。西南学院大学の系列のバプテスト派の教会です。この日の前日、この会場で卒業式が営まれたこともあって、素敵な生花もそのままに、演奏を楽しむことができました。Wifi環境やスクリーン、プロジェクタのご提供もくださり、至れり尽くせりの中での「楽器を持って集まろう会」になった次第です。
 
 朝からの準備が整ったところで、12時半頃には参加者が次第に集まってきて、一気に賑やかになりました。12時45分頃には、オンラインでの参加の皆様との接続も完了。福岡の教会での「楽器を持って集まろう会」が国内外とつながりました。
 
 13時に、いよいよスタート。大名クロスガーデンの森 崇牧師様と紿田俊哉OB・OG会副会長からのご挨拶の後、さっそく合奏会が始まりました。
 
まずは、指導曲集を合奏
 
 最初は、もちろん「キラキラ星変奏曲」から。上田英行先生のダイナミックな指揮が続きました。そして「かすみか雲か」。ここで上田先生からのサプライズ。ヴァイオリンを2グループに分け、4小節ごとに「キラキラ星変奏曲」と「かすみか雲か」を弾き分けるのです。交互にきれいに、ハモっていました。さすがです。そして、鈴木先生の「アレグロ」、バッハの「メヌエット第2番」と続きました。途中、上田先生から右手のボウイングについてのレッスンもありました。こうした教えを現役の指導者から教えていただくところに、「楽器を持って集まろう会」の醍醐味があります。続いて、ゴセックの「ガヴォット」。右手の動きを確認しながらの演奏となりました。音程に関しては、鈴木先生の教えである「共鳴の一点」を♩のダウンボウで1人ずつ弾く、いわゆる「トレイン」にも挑戦。ヴァイオリンはAの音を、ヴィオラ・チェロはDの音で順番に弾くわけですが、微妙に音程が違っていたり、同じテンポで1人ずつ、よどみなく弾くのは、なかなか大変です。随所で、笑いもある場面となりました。そして、「ユダス・マカベウス」を曲想豊かに演奏、ヘンデルの「ブーレ」も演奏しました。だんだん、楽器が鳴ってきているのが分かります。ここで、上田先生は、アップボウで腕の重さを乗せるお稽古もしてくださいました。続く「ユーモレスク」では、ヴァイオリンのG線を開放弦で弾く際の、肩を中心とした右手の縦の動きについて、ポイントを指摘いただきました。響きが深く、増してきたことが感じられ、勉強になります。
 
 休憩を兼ねて、チェロ5人でチェロアンサンブルも楽しみました。チェロ科定番曲の「フランス民謡」、「リゴードン」を喜多川先生のリードで合奏。チェロアンサンブル特有の重厚で温かな響きが、教会に響きました。
 
休憩後、いよいよドッペル、そしてコミュニケーションタイム
 
 みなさんが持ち寄ってくださった博多名産のお菓子を摘んでのお茶休憩後は、バッハのドッペル(2つのヴァイオリンのための協奏曲)の第1楽章です。まずは、OB・OG会の紿田副会長と上田先生の組み合わせのソロとみなさんによる伴奏で、懐かしいドッペルが始まりました。紿田さんが暗譜で演奏されることに、上田先生もびっくりです。続いて、参加の皆さんからも2人ずつの組み合わせで、次々にソリストに挑戦。素敵な合奏が続きました。
 

若いOBも参加。自己紹介をしています

 そして、恒例の自己紹介タイムです。第1ヴァイオリンから順番にお話をしていただきました。この時点で、オンライン参加の皆様から、声が聞き取りにくいとチャットでご指摘があり、マイクの近くでお話をいただくことに急遽変更しました。オンラインのメンバーも各地から自己紹介。「楽器を持って集まろう会」がOB・OG会の活動の根っこになっている、などのご指摘もありました。オンライン先の皆様にとっては、オンラインで話をされる方のお話を聞く時の音声が一番クリアーだったようです。会場での音声をどのようにオンライン先の皆様にお届けするか、この辺りは今後の大きな課題になりそうです。

ウクライナ国歌の演奏も
 
 お互いのプロフィールなどを紹介しあった後、ウクライナ国歌「ウクライナは滅びず」を演奏しました。OB・OG会事務局で用意した弦楽四重奏用の楽譜を使い、上田先生の指揮で、しっとりと、そしてしっかりと演奏しました。曲想はウクライナの平原に広がる穀倉地帯をイメージするような豊かさと、そしてさまざまな思いの重なる名曲です。偶然とはいえ、教会で演奏できたことも素敵なことでした。シベリウスの「フィンランディア」を想起させるようなフレーズもあり、ウクライナの過酷な今に想いを馳せることができました。
 
そして、モーツァルトの「ディヴェルティメント」K.136、
レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」からイタリアーナ、シチリアーナ
 
 事前にお知らせしていた今回の課題曲の2曲の音出しも楽しみました。いずれも福岡の先生方から提案いただいた曲でした。皆さん、練習をしっかりされてきたようで、いい響きで軽快なモーツァルトが始まりました。演奏したのは、第1楽章と第3楽章です。第3楽章はなかなか歯応えがあります。後半の各パートからテーマが出る部分は、上田先生の手拍子も登場し、しっかりと合わせることができました。全体に、ゆっくりめのテンポでしたので、アンサンブルも合わせやすかったようです。続いてのレスピーギは、弦楽合奏の定番曲ですが、難易度は本日のピカイチ。まずは、「イタリアーナ」から。途中、上田先生から「レスピーギ」はヴィオラが美味しいですよ〜の発言もありました。そして「シチリアーナ」。レスピーギは、聖チェチェーリア音楽院の院長時代に、ルネサンス時代のバロック前期のイタリア音楽に着目し、音楽院の図書館で相当に研究を重ね、この組曲をまとめました。随所に素敵なメロディが溢れ、弦楽合奏の魅力を倍化する要素に満ちていました。
 
最後は、成果発表です!
 

チェロ科は、喜多川先生のご指示で
即席のパート分けでアンサンブル

 この日、初顔合わせのメンバーですが、恒例の成果発表です。子どもたちもそうですが、やはり大人の皆さんも、集まって合奏した成果を、その日のうちにきちんとまとめることは大切なプロセスと考えています。演奏したのは次の曲です。

・鈴木鎮一:キラキラ星変奏曲
・ユダス・マカベウス
・フランス民謡、リゴードン(チェロアンサンブル)
・バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲〜第1楽章
・ウクライナ国歌「ウクライナは滅びず」
・モーツァルト :ディヴェルティメントK.136〜第1楽章、第3楽章
・レスピーギ:「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」〜イタリアーナ
 
 ここで、予定した時間となりました。皆様お疲れ様でした。オンラインの皆様にサヨナラをして、終演となりました。全員で教会の最初のレイアウトに戻しました。その早いこと! 
 
そして、福岡の味に舌鼓を打ちました!
 

先物がおしゃれに登場

 会場近くの「炉端Number Shot」で懇親会です。幸運にもコロナの感染が収まっていた時期ですので、お店も活気づいていました。 世界的に活躍されるシェフの松嶋啓介さんが地元福岡でプロデュースしたお店です。博多弁「なんばしよっと」を洒落た遊び心で満載したところも気に入りました。魚市場仲卸直営で調理された九州の旨い旬の食材はどれも美味しく、突き出しの先物から、その出し方と味に魅了された次第です。当然、参加された10名の皆様の話も面白く、OB・OG会の「楽器を持って集まろう会」ならではの、懇親会となりました。福岡での再度の「楽器を持って集まろう会」を、という希望もありましたし、さらにみんなでシドニーに行こう、という夢のような話もありました。


 
後日、OB・OG会事務局に寄せられた感想です。
 

スズキ・メソード福岡 
ヴァイオリン科指導者  上田英行先生
 福岡で「楽器を持って集まろう会」を開催していただき、本当にありがとうございました。スズキ・メソードの教室を通じて、素晴らしい感性の方々とつながりを力強く感じる、とても楽しい時間でした。音楽は聴いていて楽しいし、心が支えられるのですが、自分で演奏できる幸せは、演奏する人にだけ与えられた特別な時間と達成感があります。一緒に演奏できて、本当に幸せでした。「さあ、今日も新たに生きていこう」と思います。一緒に演奏してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

 

スズキ・メソード福岡 
ヴァイオリン科指導者  石川洋子先生
 参加の皆さんが喜んでくださったのが、何よりです❗️ そして、名古屋つながりがあったり、東京から参加のOB・OG会の服部眞一郎さんは、私の松本時代の同期の先生と同じ、広瀬先生門下で、よくご存知だったりと、スズキならではのつながりがあり、昔に戻ったような感じでした。本当にありがとうございました。また、ぜひ福岡へ、お遊びにもお出かけください。糸島や、私が今住んでいる宗像など、良いところがたくさんあります。

 

三吉彩さん(ヴィオラ・ヴァイオリン)
 今回初めて「楽器を持って集まろう会」に参加させていただきました。OB・OG会の存在自体は知っていたものの、(勝手に)敷居が高いような気がしてこういったイベントに参加したことはありませんでした。 
 ですが集まった皆様・会場の雰囲気はとてもアットホームで、あっという間の4時間であり、やはり「アンサンブルは楽しいな」と改めて感じた1日でした。個人的にも友人に再会でき、ずっと弾いてみたかったレスピーギも弾け、大大大満足でした!!
 最後になりましたが、今回の開催にご尽力いただきました事務局の皆様、福岡地区の石川先生・上田先生・喜多川先生、平尾バプテスト教会様、本当にありがとうございました。また機会があれば、ぜひ参加したいです!

 

白濱美佐子さん(チェロ)
 プロの選手や、金メダルを  取った人たちのドキュメント番組にお世話になった方々…って必ず出ますが、それと同じ印象の自己紹介を聞いて、改めて皆さんのつながりの深さを感じました。スズキは音楽愛、よりも人間愛 の方が強い人たちの集まりなんですね!

 

大阪から参加の芝美奈子さん(ヴィオラ)
 「楽器を持って集まろう会」に参加させていただき、ありがとうございました。初対面の人ばかりでちょっと心配でしたが、いざ合奏が始まると気持ちも一つに心地よいメロディで会場が満たされていました。途中、上田先生からご指導もあり、より合奏の雰囲気になりました。
 今回、大人から始められた方も何人かいらっしゃってお話を伺い、音楽を愛して演奏を楽しむお姿に深く感動しました。
 参加するたびに、地区の先生方、地元からのご参加の方に暖かいお心遣いをいただいて感謝の気持ちでいっぱいです。レッスンはもちろんですが、観光スポットやグルメ情報など、その土地のオススメを伺うのもとても楽しみです。
 長く楽器を弾いてないからとか、始めたばかりでとか思われた方、次回がもしお近くでの開催される時は一歩踏み出してぜひご参加ください。(主催者ではないですけど)ステキな出会いが必ず待ってます。私もまた参加させていただく予定なので、会場でお会いするのを楽しみしています。
 最後になりましたが、OB OG会の皆様、九州地区の先生方そしてオンラインや会場のセッティングでご尽力いただきました服部様、お世話になり、ありがとうございました。

 

田村恵美さん(ヴァイオリン)
 先日は本当に貴重な経験をさせていただいて、ありがとうございました。私はまだ人生においてヴァイオリンを触りはじめて4年、スズキ歴2年という浅い経歴ながら、今回の「楽器を持って集まろう会」に参加させていただきました。
 4年前、幼い子どもと一緒にヴァイオリンを始めようと思い立ってから、毎日練習はしてきましたが、今回のOB会は私の予想を遥かに上回るレベルの演奏会。場違いな所に来てしまったと、最初は極度の緊張に手汗が止まらなかったです。ですが、チェロやヴィオラとのアンサンブル演奏、そして先生方や先輩方の素晴らしい音を真横で全身で体感できる幸せ。あまりの感動で涙が勝手に出るほどでした。私のような素人が参加させていただくなんて、と恐縮でしたが、参加して本当に良かったです。(皆様には変な音ばかり出してご迷惑だったかと思いますが、、笑)
 また5年後、10年後、福岡で開催されるときには、もっと上手くなって、ソロでも少しは自信持って弾けるくらいまた毎日(ご飯が食べられない日以外は!)練習したいと思います。練習も楽しくなりました。本当にありがとうございました。

 
ここからは、オンラインで参加の皆様からの感想です。
 

松本明代さん(千葉・ヴァイオリン)
 ひさしぶりの合奏に,とても充実した気持ちですごすことができ,改めて音楽の力を実感しました。聴くばかりになっていた音楽ですが、演奏する楽しみは格別ですね。石川先生のレッスンや、クラスや支部で催された合同練習や演奏会のことが思い出され、またなつかしい仲間とも再会でき、とても嬉しかったです。遠方にいてもオンラインで参加できる機会を設けていただき、本当にありがとうございました。次またこのような機会があったら、ぜひ参加したいと思います。

 

中村優友さん(名古屋・ヴァイオリン)
 初めての試みでリアルとオンラインのハイブリッド方式、音が途切れたり聴こえにくい部分もありましたが、心置きなく参加できて楽しかったです。成果発表のコンサートで喜多川先生のクラスの生徒さんによるチェロアンサンプルの音色が楽しめたと思います。
 オンラインでの参加で基本、マイクをミュートできてなかった方もいますが、予めアナウンスした方が良いと思いました。

 

市川正子さん(東京・フルート)
 スズキで学ばれた方や、私同様、今、「大人のスズキ」で学ばれている方々が、現在の生活の中でどのように音楽を楽しまれているかに興味があってオンライン参加しました。ただ、会場の方々の声は、マイクに寄っていただいた後でも、時々ワンフレーズが聞き取れる程度で、まったく理解できませんでした。
 それにもかかわらず、演奏がキリッとしていて隅々まで明確に弾けていることはよくわかりました。あそこまで弾けると、どんな曲を演奏しても楽しめそうですね。カメラは複数設置されていましたね。時々切り替えて拝見できて、よかったです。
フルート科のオブリガート集、現在はヴァイオリン科の指導曲集の1、2巻に対応するものしかないようです。
フルート科で、5巻くらいまでのものを作ってくださると、こういった催しがより楽しくなると思います。
 フルートは、ヴァイオリンのパートを、だいたいは一緒に演奏することが可能です。クラシックの、楽器指定がはっきりしている曲以外の、例えばバロックとか、あるいは現代のポピュラー曲の編曲ものなどを、事前配布の指導曲集以外の曲の中に取り入れていただけるといいなと思います。
 「大人のスズキ」で学びながら、自分の周囲の子どもの子育てにスズキ・メソードを勧めることができるか、時々そういう視点で考えています。皆さんのお話がとても参考になりそうです。皆さんの思い出話や現在の音楽生活について伺う機会がまたあれば、と思っています。

 
→OB・OG会公式サイトもご覧ください。