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4年ぶりの開催となった今年の夏期学校は、初のハイブリッドでの開催でした。
速報でお伝えする初日の様子です。

 
 昨年は、直前のオンライン開催への切り替えもあって、対面開催ができなかったわけですが、今年の第72回夏期学校は、ついに対面とオンラインの「二刀流」でのハイブリッドスタイルでの開催となりました。このスタイルでの開催は、初めて。歴史ある夏期学校としては、大変画期的な形での開催がようやく実現したことになります。そのため、夏期学校実行委員会の先生方の事前準備は、長い時間をかけ、しっかりと入念に行なわれてきました。
 
 今年の開催は、7月27日(木)〜30日(日)までがピアノ科、1日ずらして7月28日(金)〜31日(月)までがヴァイオリン科、チェロ科、フルート科で、それぞれ4日間ずつの開催でした。会場は、まつもと市民芸術館と才能教育会館を中心に、スズキ・メソード研究所、松本市勤労者福祉センター、深志神社、あがたの森文化会館講堂を使用。もちろんオンラインでの参加者は、全国のご自宅などから、連日参加しました。
 
 結果的に対面での参加者は1,200名、オンラインでの参加者は500名。7月30日の「特別講師によるコンサート」で、久しぶりにメイン会場のまつもと市民芸術館が満席に近い状況になる様子は、大変感慨深いものがありました。松本駅に大きく飾られた「ようこそ松本へ!」の横断幕も嬉しかったですね。
 
 初日のピアノ科では、開校式の前に特別講師の臼井文代先生によるレクチャー「チェンバロの演奏とおはなし」からプログラムがスタートしました。チェンバロの名称が各国で違ったり、音の出る仕組みを勉強することができました。
 

ピアノ科開校式&ピアノ科コンサート 13:30〜14:30

 夏期学校実行委員長の増澤治雄先生から、最初に開校が宣言され、「目指そう、美しいスズキ・トーン」が、今年も昨年に引き続き、夏期学校のテーマであることが紹介されました。早野龍五会長、ピアノ科特別講師の先生方が揃いました。
 
早野龍五会長
 2019年以来、4年ぶりの開催となりました。松本駅のエスカレータのところに、夏期学校開催の横断幕が付けられていて、「あぁ、やっと対面での開催ができる」と思っているところです。「昨年はごめんなさいね、という気持ちも込めて、みなさんありがとうございます」と申し上げたいです。会場のあちこちにカメラがあって、オンラインでも同時に始まっていることを嬉しく思います。
 
特別講師長・東 誠三先生
 本当に久しぶりに松本に集まって、ステージからこの夏期学校を眺めている今、あぁこれが夏期学校だなぁと感じています。新しい歴史の瞬間がまた始まっていくといいなと思います。松本は暑いですが、陽が落ちると散歩できるような気候になっていきます。この夏期学校を有意義に楽しくお過ごしくださるよう願っています。
 
ピアノ科特別講師・臼井文代先生
 今年はこのように実際に皆様と会っての開催となり、本当に嬉しく思っています。松本の街にスズキ・メソードのお子さんたちがたくさんいらっしゃるようになり、松本出身の私には、やっと松本の街が戻ってきたなぁと感じています。どうぞよろしくお願いします。
 
東 誠三先生のオープニング演奏
次の3曲を続けて演奏されました。
・グリーグ:抒情小曲集第5集Op.54よりNo.4 夜想曲 ハ長調
・バルトーク:ルーマニア民族舞曲 Sz.56
・シューベルト:即興曲 ヘ短調 Op.142. No.4
 そして、アンコールに応えて演奏されたのは、次の曲でした。
・ベートーヴェン:エリーゼのために
・モーツァルト:ピアノソナタK.331第3楽章「トルコ行進曲」
・シューマン:メロディ
など。
 
 東先生の演奏は、グリーグでは透明感を感じさせる北欧の世界へ、バルトークでは民族色豊かでエキゾチックな世界へ、そしてシューベルトでは一転して転調が連続する軽快な踊りの世界へ誘ってくださいました。アンコールでは指導曲集からお馴染みの曲を披露。CDの先生の生演奏は、とても嬉しいものでした。
 
 続いて、ピアノ科で学ぶ5歳〜15歳の子どもたちによる演奏が続きました。
 
 15時からは、グループレッスン、個人レッスンのプログラムがさっそくスタート。「楽典を楽しくまなぼう」のクラスでは、音符パズルに取り組んだり、音符の長さ比べ、楽譜の中から「ド」を探したり、pp,p,mp,mf,f,ffを全身で表現したりするなど、演奏の基礎となる楽典にチャレンジしていました。
 
東 誠三先生のレクチャー「音を聴く・弦の振動と音」
 この日の最後のプログラムです。高等科の生徒さんたちがステージに上がって、東先生のレクチャーを目の前で受講しました。東先生の狙いは、普段は触ることのないピアノの振動を、生徒たちに体感してもらうことでした。まず、ピアノの音の出る仕組みについて、アクションの模型を使うことから始まりました。
 そして、東先生が強調されたのがピアノ特有の「アフタータッチ」についてです。芯のある音が出る決定的瞬間=アフタータッチの仕組みをお話になりました。 アフタータッチとは、鍵盤を押しても最初の数mmでは音が出ませんが、さらに深く押すことで音が鳴る仕組みのことを指していて、グランドピアノ特有の機能です。この仕組みがあることで、速いトリルが弾けたり、Pの部分での音色をコントロールできたりします。それだけ指先のコントロールが大変重要ということになります。
 次に、東先生が提示されたのが、弦の振動です。振動している弦の観察から始まりました。実際に東先生が低い鍵盤を強めに叩かれ、生徒さんたちはその振動を観察。そして手袋をはめた手でその振動に一人ずつ触れていきました。「触り方を工夫することでどんな振動の変化があるかを感じてください」と東先生。さらに、ベートーヴェンの悲愴ソナタの冒頭部分を演奏されながら、生徒さんたちにピアノの本体に触らせるという、ユニークなレクチャーが続きました。これは、弦の振動がどのように箱体の共振につながるかを体験してもらうものです。
 そして、東先生にとって大切にされておられる「心を込める瞬間」について、お話がありました。東先生は、アフタータッチが通過するところ、その瞬間に心を迅速に受け渡すというのです。これができれば、理論上はどんな曲もできると。また、音を聴くことを大切にすることが、色彩感を作っていくと東先生。「1巻、2巻の生徒さんでも音を聴こうという気持ちがあれば、いろいろな音を作っていくことができます」とも。音をコントロールする醍醐味、いろいろな色合いを感じることが大切ということです。また、ペダルを使うのは限定的に、使うことで色彩感が豊かになる時に使い、使わなくてもできることをできるだけ考える、ということにも言及されました。腰については、硬直させないこと。音を想像して、用意して、弾く、聴くことの循環の中心に腰があるとのことです。最後に、「単音で美しく弾くことはもとより、メロディを美しく表現すること」の事例として、モーツァルトのK.331の冒頭を演奏していただきました。
 いずれも、東先生特有の音色の豊かさ、表現の幅広さ、そして曲の背景の深みにアプローチされる具体例をさまざまな手法で示され、大変興味深い内容でした。