「レジェンド達からの伝言」の展示に、髙橋利夫先生とモイーズが登場!

 

1966年、モイーズの自宅にて

 日本で最も大きなフルートのイベントである「日本フルートコンヴェンション in KAWASAKI 2023」が8月18日(金)〜20日(日)、川崎市麻生区の昭和音楽大学で開催され、スズキフルート創設者の髙橋利夫先生が、日本フルート界のレジェンドの一人として紹介されました。フルート科では、髙橋先生とモイーズに関する写真や資料の提供をする形で、協力しました。以下は、資料提供に尽力された関東地区フルート科指導者の宮地若菜先生による報告です。


 

「第21回 日本フルートコンヴェンション in KAWASAKI 2023」見聞記

関東地区フルート科指導者 宮地若菜
 

 3日間の開催期間の内、初日の8月18日(金)に、会場の昭和音楽大学に行ってまいりました。

 校内のホール、テアトロ・ジーリオでのオープニングセレモニー&コンサートでは、「昭和音楽大学フルートアンサンブル」や韓国のフルートアンサンブル「JAKO」の出演もあり、メンデルスゾーンの序曲「真夏の夜の夢」や、ヴィヴァルデイのピッコロ協奏曲などが演奏され、賑やかな幕開けとなりました。フルートアンサンブルには、ピッコロ、フルート、その下の音域のアルト・フルート、バス・フルート、コントラバス・フルートがあり、すべての音域をカバーして、オーケストラさながらに豊かな響きを披露していました。
 
 また、N響メンバーによるフルートカルテットも素晴らしく、国際的に活躍している日本と韓国、それぞれからのソリストの演奏もありました。
 

展示コーナー

 それらのプログラムの間に、常設展示されている「レジェンド達からの伝言 ~フルート協会の黎明期を支えた人たち~」の展示を拝見しました。

 
 今回のフルートコンヴェンションの開催に先立ち、髙橋利夫先生とマルセル・モイーズ来日関係の資料の問い合わせを日本フルート協会から私のところにいただき、写真や資料を提供しましたので、大変興味がありました。常設展示室の入ってすぐのところに特別コーナーとして、設置されていました。
 

主催者が用意されたもの

主催者が用意されたもの

 近年、フルート科50周年史をまとめていたこともあり、いろいろな資料を提供することができました。

 そもそも日本フルート協会は、1966年に、プロ、アマを問わずフルートを愛する人々が集う全国的な組織として誕生しています。髙橋利夫先生はその時の設立メンバーの1人で、初代会長は、NHK交響楽団の首席奏者として永く活躍され、東京藝術大学教授でいらした吉田雅夫氏でした。
 
 設立から50年以上が経ち、世代交代が進み、黎明期のフルート界を知る人が少なくなってきた現在、改めて「レジェンド達からの伝言~フルート協会の黎明期を支えた人たち~」のテーマで、当時の貴重な写真、音源、映像資料の展示、レクチャーなどでレジェンド達にスポットを当て、紹介する企画は、大変意味のある企画です。スズキフルートの一員として、髙橋先生とマルセル・モイーズとの関係がこうして現代に伝えられたことは、とても大きな意義があると感じました。
 

フルート科公式サイトより

 フルートの上達を目指して、多くの人が勉強するエチュードにマルセル・モイーズ著の「ソノリテについて」や「24の旋律的小練習曲と変奏」があり、その恩恵を受けている人は多いのですが、そのモイーズが1973年と1977年に来日して、開催された講習会(マスタークラス)では、多くの受講生、聴講生で会場が連日満席で熱気に包まれていました。しかし、この大変歴史的な大きな出来事を知る人は、残念ながら少なくなっています。

 
 

髙橋先生の問いかけに、モイーズはいつも
真摯に多くのエピソードを交えて語りました。
その貴重な会話を忠実に再現して、髙橋先生は
「モイーズとの対話」として出版されました

 マルセル・モイーズは1900年代から1940年頃にパリで活躍した世界最高のフルーティストであり、パリ音楽院の教授でもありました。第二次世界大戦後、アメリカに移住、ヴァーモント州ブラトルボロでエチュードの執筆をされながら静かに過ごしておられました。そのモイーズを髙橋先生は渡米して探し当て、約3年間師事して帰国。そして、この偉大なフルートの大家であるモイーズをぜひ日本に招聘したいと動かれたのが鈴木鎮一先生で、1973年と1977の2回、モイーズの来日が実現しました。そして、才能教育研究会(スズキ・メソード)と日本フルート協会との協力で、講習会、演奏会などが各地で開催され、その中心的な役割を担ったのが髙橋利夫先生でした。

 私は初日しか行かれませんでしたが、実行委員会の担当であった方からのお話では、3日間を通して予想以上の来場者があり、特にモイーズと髙橋先生の写真の前では立ち止まる人が多かったとのこと。実際に受講されたという方も訪れ、当時の話で大変盛り上がったとのことで、反響の大きさとともに手応えがあったことを嬉しく思った次第です。
 
 フルート科公式サイトの歴史ページを、この機会にぜひご覧ください。
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