東 誠三会長のコンサート活動〜2025年9月

 
 会長としても精力的に活動を続けておられる東 誠三先生は、ピアニストとしての演奏活動も日頃から活発に行なわれています。今回は、9月に開催される盟友、三浦章宏さんとのデュオ・リサイタルをご紹介します。
 

三浦章宏&東 誠三デュオ・リサイタル
2025年9月27日(土)14:00開演
 三春交流館「まほらホール」(福島県三春町)

 

 お二人は、かつてスズキ・メソードのテン・チルドレンツアーと呼ばれた海外演奏旅行に一緒に旅した間柄。やんちゃな思い出とともに、音楽をともに作り上げてきた幼少時代の思い出が今も続きます。ピアノは東 誠三先生、ヴァイオリンは三浦章宏さん、チェロは野村朋亨さん(元 本会指導者)という、今思えば豪華なトリオ。当時は腕白盛りの男の子3人で「ロンドンデリー」とブラームスの「ワルツ」を演奏したところ、大評判。次に5年生で参加した時には正式なプログラムとしてモーツァルトのピアノトリオ全楽章を演奏するまでになりました。その楽しさは格別で、アンサンブルが楽しいという気持ちを強烈に植えつけられたとのことです。

 また、福島三春町の「まほらホール」は、2003年のまほら開館記念コンサートでお二人が、フランクのヴァイオリンソナタで、初めてホールに音を響かせた伝説的名演の場としての歴史がありました。さらには、それぞれにとって、ベートーヴェンの作品に真摯に対峙されてこられた想いの詰まったホールでもあります。その意味からも、今回、このまほらホールでどんな音が生み落とされるか、大変楽しみな演奏会となります。


 
 お二人をよく知る三春交流館運営協会の吉田淳子さんから、今回のコンサートに寄せて、思いのこもった素敵なメッセージをいただきました。ホールを育てた皆様と、東先生、三浦さんお二人の思い、そしてピアノとの物語が詰まっている物語です。
 

「三浦章宏&東誠三デュオリサイタル」によせて

 

三春交流館運営協会 吉田淳子

 
 三春交流館「まほら」開館間近の平成15年(2003年)3月に、当時の三春町参与とのご縁があったヴァイオリニストの三浦章宏氏が来町し、まだ誰も演奏していないステージに立ち、試し弾きをされました。数分間の演奏直後に「素晴らしい!!」と「まほらホール」の音響の良さを絶賛し、翌4月のこけら落としの演奏会は、三浦氏からの「ピアニスト東 誠三さんとのデュオリサイタルをぜひ!!」との提案で、即決定いたしました。これが最初のお二方の「まほらホール」での初演奏、そしてこの三春交流館建設構想から完成まで尽力された亡き元町長 伊藤 寛氏との出会いとなりました。
 
 ピアノを弾かれるなり、東先生は「スタインウェイピアノの響きと音色が素晴らしい、良いピアノに当たりましたね!ホールの響きととても相性が良く、このようなホールはなかなかないですよ!!」と絶賛されました。デュオリサイタルでのフランクのヴァイオリンソナタは、名演奏で伝説となり、それを機にクラシック音楽に造詣の深い故伊藤氏との懇親を深めてこられました。そして2年後には、皆様ご存知の「ボアヴェール・トリオ」で演奏していただきました。その懇親会の折りのほんの数分間の会話の中で、「ピアニストであるからにはベートーヴェン:ピアノソナタ全曲演奏会は、ぜひやってみたいですね」という東先生のお言葉がありました。
 
 企画会議の中で、開館5周年記念事業として「東先生はこのピアノとホールを大絶賛していらっしゃるので、先生の夢でもあるベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲演奏会をご提案してはいかがか?」ということになりました。
 
 東先生は時間をかけて熟慮された結果、快諾のお返事をくださり、2008年~2012年にわたり全8回の「ベートーヴェン:ピアノソナタ全曲演奏会」が決定しました。記念すべき全曲演奏会なので、「なんとかCD録音もできないか?」などと途方もない構想が次から次へと浮かび、恐れ多くも東先生にお伝えしたところ、なんとセイコーエプソン様がCD録音をしてくださることとなりました。
 

 そしてベートーヴェン:ピアノソナタ全32曲演奏会はライブ録音のCDとなり、一枚リリースされるたびに音楽雑誌などにて高い評価を受けることとなりました。ピアノとホールを全国の音楽ファンに知っていただいたことは、私どもにとりまして望外の喜びで、ますます「まほらホール」を誇りに思うようになりました。しかしながら2011年3月11日の東日本大震災の影響により、第6回演奏会は中止となってしまいました。幸いにも三春町は甚大な被害はなく、ホワイエとホールは被災された方たちの避難所となり、たちまち災害現場のテレビで見る光景となりました。そのため全曲演奏会は5年がかりとなった次第です。東先生は大変心を痛められ、福島民報社を通してこの震災への募金をしてくださいました。このように先生はいつも温かい真心で私たちのホールとピアノを気にかけてくださり、今日に至っております。

 そして朋友三浦章宏氏と東先生は、満を持してベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ全10曲を、2020年~2024年にかけて当「まほらホール」にてCD録音し、その最後のCDが今秋発売予定となりました。昨年は、東先生のご助言をいただきながら無事にピアノもオーバーホールを終え、結果、最終録音は熟成した音色による深遠なるベートーヴェンの世界が広がりました。録音した翌年にはCD発売記念として「三浦章宏&東誠三デュオリサイタル」を開催しており、今回はそのシリーズの最終回となります。

 三春交流館「まほら」開館以来、お二方にはホールのみならず、演奏会企画など多岐にわたりアドヴァイス、アイディアをいただいており、また、来町されるたびにホールのみならず「三春町の温かさや澄んだ空気、長閑さが大好きで大変落ち着く第二の故郷」とのお言葉も頂戴しております。
 
 今年1月に、残念ながら元町長 伊藤寛氏が逝去されました。伊藤氏はかねてよりヴィターリの「シャコンヌ」を一度お二方の演奏で聴いてみたい、と言っておられました。それをお伝えしたところ、「ぜひ追悼演奏を」ということになりました。これまでの経緯から、「まほらホール」への深く熱い思いが紡ぎ出される特別な演奏会となることでしょう。
 

三春交流館まほら(2010年編集部撮影)

 最後になりましたが、「まほらホール」は東京文化会館などの設計に携わり、多摩ニュータウン、横浜みなとみらいなどの計画と開発に貢献した三春町出身の故大髙正人氏の最後の仕事となった建造物です。街の中心にあり、とても贅沢な404席のホールです。どの座席でもいろいろな楽器からの音がクリアに聴こえます。そしてこれまでに演奏されたアーティストの方々は「機会があれば、またここで演奏したい」とおっしゃってくださいます。

 スズキ・メソード会員の皆様、お二方が心から愛してやまない日本三大桜「滝桜」で有名な三春町へ、「三浦章宏&東 誠三デュオリサイタル」での特別演奏と、ピアノとホールの素晴らしい響きを体感していただきたく、お誘い合わせのうえ、ぜひお越しください。一同心よりお待ちいたしております。
 


 

入場料:一般3,000円、高校生以下1,500円(全席指定)
お問い合わせ・ご予約:三春交流館「まほら」(月曜日休館) 
tel.0247-62-3837   
福島県田村郡三春町字大町191
 
プログラム
・ヴィターリ:シャコンヌ
・ショパン:華麗なる大円舞曲 Op.18 
・ショパン:ノクターン変ニ長調 Op.27-2
・ラヴェル:組曲「鏡」より
      「悲しい鳥たち」
      「道化師の朝の歌」
・バッハ:無伴奏パルティータ第2番より「シャコンヌ」
・ベートーヴェン:ヴァイオリンソナタ第7番