全国指導者研究会、3日目の様子を速報します。
各地に線状降水帯をもたらした台風6号の通過に伴い、大宮では朝から昼過ぎまで横なぐりの雨が続き、会場のソニックシティに入るまでに靴はびしょ濡れ状態。9時からの各科プログラムには、よく見ると、足元は裸足!の指導者も散見される状態でした。
Day3 6月3日(火)
各科プログラム 9:00~10:30
・ヴァイオリン科 竹澤恭子先生による「研究科Aの教本より②」
・チェロ科 「卒業録音について」
・フルート科 宮前丈明先生による「卒業録音について」
・ピアノ科 東誠三先生による「ピアノ協奏曲伴奏法」ピアノ協奏曲K.414第1楽章、第3楽章
スズキ・メソードがこれからの時代に出来ること① パネルディスカッション 10:45 ~ 12:00
スズキ・メソードがこれからの時代に出来ること② パネルディスカッション 13:00 ~ 13:30
パネリスト
植松有里佳先生(東北大学助教授 小児科医)
岡千恵先生(新宿区立江戸川小学校校長)
細田千尋先生(慶應義塾大学大学院教授、東北大学准教授 認知行動脳科学)
※細田先生は、台風のためオンラインでの参加
「スズキ・メソードがこれからの時代に出来ること」をテーマに、医療・教育現場・脳科学という異なる立場の専門家によるパネルディスカッションが行なわれました。
岡先生は、公教育の現場で進む「個別最適化」について語りました。現在の学校では、35人学級化が進み、一人ひとりに目を向けやすくなった一方、発達に課題を抱える子どもや、いわゆる「グレーゾーン」の子どもたちへの対応が大きな課題となっているという。また、電子黒板やタブレット、AI活用など、学びのスタイルそのものが急速に変化している現状も紹介されました。
植松先生は、神経発達症について医学的観点から解説されました。自閉スペクトラム症、ADHD、LDなど、それぞれ特性は異なり、「やる気がない」「しつけの問題」と単純化できるものではないと指摘。「その子がなぜ困っているのかを理解しようとすること」が何より大切だと語りました。
印象的だったのは、「教育は命を左右するわけではないが、その子の運命を左右する」という言葉。関わる大人の理解や接し方によって、子どもの未来が大きく変わっていくという視点は、深い共感を呼びました。
細田先生は脳科学の立場から、人がどのように知識や技能を獲得するのかを説明。能力習得には「注意を向けること」と「記憶」が重要であり、本人が興味や主体性を持つことで学習効果が高まると言います。一方、神経発達症の子どもたちは、「注意」「記憶」「運動計画」など、さまざまな段階で困難さを抱える可能性があるため、一律の指導ではなく、その子特有の“つまずき”を丁寧に見極める必要があると語りました。
それぞれパネリストによる丁寧なお話で、予定時間となり、急遽、司会の飯塚大先生と川沼顕実行委員長の判断で、午後のグループディスカッションの冒頭の時間を使って、「これからの時代にスズキ・メソードが果たせる役割」にまで言及していただくことに変更。細田先生はご都合がつかず、お二人の先生で昼食後、進めることになりました。
植松先生は、スズキ・メソードには「障害児への深い愛情」が根底に流れていると語り、『愛に生きる』に記された鈴木鎮一先生の実践にも触れながら、「環境が人をつくる」という思想の現代的意義を指摘しました。週に一度のレッスンであっても、長期にわたり子どもと保護者に寄り添い続けられるスズキの指導者は、医療とも学校とも異なる、非常に大きな存在になり得ると言います。
また岡先生からは、「そこにいるだけでもOK」という視点の大切さが語られました。グループレッスンの中で、演奏できなくても、その場に参加し、音を聴き、人と関わるだけでも、その子にとっては大きな成長になる場合があるという指摘は、多くの指導者に新たな気づきを与えました。
細田先生からの資料を司会の飯塚先生が代読する形で、音楽教育を「IQを上げるための訓練」と捉えるのではなく、自己効力感や協働性、セルフコントロールといった“非認知能力”を育てる場として見ることの重要性を強調しました。
医療、教育、脳科学。それぞれ立場は異なっていても、三者に共通していたのは、「子どもを理解しようとする姿勢」の大切さでした。
多様性がますます広がる時代の中で、一人ひとりの違いを受け止め、その子の可能性を信じて育てていくこと。今回のパネルディスカッションは、スズキ・メソードがこれからの社会において果たし得る役割の大きさを、改めて浮かび上がらせる機会となりました。
スズキ・メソードがこれからの時代に出来ること② パネルディスカッション 13:30 ~ 15:00
この時間は、国際会議室と小ホールの2箇所に分かれてグループディスカッションです。パネリストのお話を受けて、それぞれのグループで盛んに意見交換が行なわれました。植松先生には30分ほど、個別の質問にお答えいただき、岡先生には各グループの中に入っていただき、それぞれからの質問に身振り手振りで、最後まで精力的にお話しくださいました。
さらに続きます。