フルート科が髙橋利夫先生をお迎えし、研究会を開催。
テーマは「音楽的表現をどう教えるか」
鈴木鎮一先生の「音に生命あり 姿なく生きて」や「一音でものを言う音」などのお言葉から「トナリゼーション」の重要性を再確認。
また鈴木先生が尊敬なさっておられたパブロ・カザルスの「音楽はなべて虹の連続である」とのお言葉から虹は何色でどう作られているのか、それはメロディとは何ぞや、につながることを教えていただきました。
以下、研究会の内容です。
■メロディの要素
・メロディの要素1 音の高低
2度3度、向こう三軒両隣
4度、表情がある、曲線的、色気
5度、友情、間が大事
6度、喜び(ex.歌のつばさに)
7度、感動的(ex.サン=サーンス:サムソンとデリラのアリア7度4連発)
・メロディの要素2 音の長短 リズム
高低のないメロディもある(ベートーヴェン:交響曲第7番では、同じ音の長短でメロディを作っている)
・メロディの要素3 形式
楽節 何小節でできているか
・メロディの要素4 和声
ハーモニー(ex.ベートーヴェン:交響曲第7番では、メロディは同じ音の連続でも和声は変わっている)
いのちある音でメロディーを虹にしていく(リズム、メロディ、ハーモニー)
■演奏の3要素
1.テンポ
楽譜の最初に書いてある。ベートーヴェンも「テンポは演奏の大切な要素である」と述べている。
2.拍子
3.音量
これらは鈴木先生のご著書にも記されている。
⭐️鈴木先生はティボーやクライスラーに傾倒されていたが、最後はカザルスに行き着かれたのではないだろうか。カザルス「pの山はmfまで」「fの谷(底)はpまで」pと書いてあってもずっとpで演奏するわけではない。楽譜をよく読むこと。
■モイーズ奏法
歌口について
・普通のフルートの歌口は12.4mm〜12.5mm
・大きめでも12.8mm
・モイーズのフルートは13.2mmだった(蚤の市でみつけたフルートをモイーズ自身が削って大きくした)
唇と歌口の関係
・モイーズは唇の中央ではなく左にフルートをあてている。「左はフルートの音のためのホール、右はパイプ用のホール」とおっしゃっていらしたそう。いい音が出ていたから、ゴーベールも直さなかった。究極よい音が出ればよい。
・モイーズは日本の曲もよく演奏していた。夫人が日本人とのハーフだったからか。
・詩人で作家、翻訳家だった深尾須磨子(1888-1974)が日本の曲をモイーズに紹介、モイーズはフランスの曲を深尾須磨子にプレゼントしていた。深尾須磨子の詩はモイーズ讃と思われる。
「笛を吹き候 笛はしろがね 音はむらさきの秘めごとに候」
ブレス 上下腹式呼吸
・モイーズのレコードを聴くとブレスの特殊な音がする。アンブシュアを変えないようにブレスしているため。
・最初は鼻から、エラを感じて呼吸、喉の後壁から背骨、丹田(たんでん)に向かって吸う。お腹から吐く。
・ブレスで口を開けすぎないように。あくまでも息継ぎであって、フレーズが切れないブレス法。
・喉の後壁が反響板だと思って、喉を開ける。子どもたちには後壁と言っても難しいので、「エラ呼吸」を説明するとよい。人間も昔は魚だったと。
・オペラ歌手の呼吸や姿勢を手本に。
・モイーズは88歳で来日。直行便のない時代、ホノルル経由で羽田へ、その後松本まで、現在自分がほぼ同じ年齢になったので、その大変さがよくわかる。
・2度目の来日の時は目もよく見えていなかった。モイーズ先生は美ヶ原観光ホテルに宿泊、髙橋先生が頸椎2番を輸気して差し上げた翌朝、眼鏡なしで字が読めたと驚かれた。
・モイーズ先生はレッスンの前にペルノー酒(クレゾールのような匂い)を飲んでいらした。ご子息のルイ・モイーズが驚くほど髙橋先生とは相性がよかった、酒飲み友だちでもあった。
■5つの練習
・馬面体操 口の周りの筋肉をいかに緩めるか
・ブルブル体操
・口笛(ホイッスル)ウェッスル(鳴らない口笛)
・スピッティング 音の出だしの問題、本体はウェッスル、ストローク
・アタック ダウンストローク 落とす
(ヴァイオリンの場合ボウイングができてからアタック、ダウンストローク)
■起承転結
モイーズ先生の「荒城の月」、起承はそのままのテンポで、転で気が付かないくらいテンポアップ、結で戻す。
そしてビゼー:「アルルの女」の間奏曲、チャイコフスキー:「アンダンテ・カンタービレ」のレッスンをしていただきました。
モイーズ先生の「装飾音は音の抑揚である」とのお言葉。声に出して歌ってみること。
2度同じものは出てこない(生きている証拠)
レッスンではフレーズごとに、具体的にどのように表現すれば音楽的な演奏になるのか丁寧にご指導いただきました。
髙橋先生のフルートとの出会い、鈴木先生のこと、モイーズ先生とのレッスンのことなどお話は多岐にわたり尽きることなく、予定していた時間をこえて講義してくださいました。まだまだお聞きしたいこと、髙橋先生がお話なさりたいことはたくさんありましたが、次回へ持ち越すことになりました。次回の研究会を楽しみに待ちたいと思います。髙橋先生から教えていただきました音楽のエッセンスは、各々の教室に持ち帰り、生徒さんのレッスンに活かされることでしょう。髙橋先生と奥様のご健康が守られますようにとお祈りし、ご報告をおしまいにしたいと思います。ありがとうございました。