オンラインながら、濃い内容でスタートした全国指導者研究会

 
 2021年の全国指導者研究会は、6月7日(月)9時の開会式からスタートしました。冒頭、実行委員長の松本尚三先生(関西地区ヴァイオリン科指導者)から「今回の研究会は、すべてオンラインで開催されることになりました。文字通り、アットホームの中で、お過ごしください。ただ、内容は濃いものになっています」と挨拶がありました。
 
 今年の特徴は、指導者向けの配信システムとしてZoomを使い、プログラムごと、楽器別に、分かりやすいネーミングをアクセス先として設定したことです(ちなみに一般公開のプログラムでは、YouTube、Vimeoを使います)。「深志」「安曇野」「美ヶ原」「霧ヶ峰」「諏訪」などの信州の地名は、まるでバーチャルにその土地を訪問しているような気がします。この遊び心に感心している間に、早野会長からの挨拶が始まりました。
  

早野龍五会長 挨拶


 この1年間、スズキファミリーだけでなく、世界中が困難な場面に遭遇しました。こうした時に考えるのは、「鈴木鎮一先生ならどうされるだろうか?」ということです。
 
 昨年春の段階では、開催が無理ではないかと考えましたが、この1年で様々がスキルを身につけ、チャレンジを重ねてきました。本来ならば、コロナが収束していれば、オンラインを併用し、かつリアルな研究会の開催を目指すハイブリッド型を検討していましたが、3度目の緊急事態宣言により、リアルを中止し、フルにオンラインでの開催に変更しました。実行委員会の皆様には、大変なご苦労をおかけしました。
 
 行事以外にも、様々な変化がありました。例えば、会議はすべてオンラインで開催してきました。国際スズキ協会の会議も、それまで年1回の会議が年2回に増えました。そうした会議で驚いたことは、スズキ・メソードがこの1年でさらに増え、74の国と地域に拡大していることです。これは指導者養成が国境を跨いでオンラインで行なわれていることによるもので、今後は、スズキの指導者としてのレベルをどう維持するか、基本に立ち返り、グローバルスタンダードを作成することが求められています。
 
 また、今年から公式サイトの会員ページにマイページを設定しました。今回の全国指導者研究会への先生方の参加登録、そして夏期学校での皆さんの参加登録、さらには卒業録音についてもマイページを活用することを予定しています。
 
 コロナ禍でも世界は動いています。スズキの指導者のあるべき姿を、今回の全国指導者研究会の期間中、皆さんで追求していただきたいと思います。(今、421名の参加になりました)
 

永年表彰

 
 長年、指導者として活躍されてこられた先生方を画面上で表彰されました。代表して、50年の永年表彰を受けられた中島顕先生(東海地区チェロ科指導者)から挨拶をいただきました。また、新人指導者の紹介、この1年間に亡くなられた先生への黙祷もありました。
 

各科プログラム

 
 9:45から、さっそく各科別のプログラムがスタート。
・ヴァイオリン科、チェロ科共通 豊田耕兒先生マスタークラス
 3人のヴァイオリン科指導者が、豊田先生のレッスンを受けました。事前収録の精細な画面は、まるで目の前でレッスン場にいるかのよう。米寿を迎えられたとは思えない、パワフルな豊田先生のレッスンに釘付けでした。バッハについては、豊田先生版楽譜を使用。画面越しに譜面を見ながらの受講となりました。中には実際に楽器を出し、自宅で先生の指摘された部分を試す指導者の姿もありました。以下レッスン曲と受講された先生方です。
 
   バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番〜守田千惠子先生
   バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番よりFuga, Andante〜小西麻紀子先生
   ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲第2、3楽章〜大井真智子先生
 
・フルート科 宮前丈明先生 初歩のレッスン
  ピッツバーグ在住のフルート 科特別講師、宮前丈明先生による初歩のレッスンです。医学博士でもある宮前先生らしい、息の流れ、舌の動きについてなどのお話でした。
 ①幼児のタンギング、アーティキュレーション
 ②コロナ禍での指導(個人・グループ)オンラインの注意とアイデア
 
・ピアノ科 オンラインレッスンを考える
 この1年半余りの間にいろいろなアイデアが出てきたオンラインレッスンについて、次の3人の指導者がそれぞれのケーススタディをもとに事例発表。どれも大変興味深い内容で、試行錯誤された時間の分だけ、改良が重ねられていることがわかりました。
 ①森眞理子先生
 ②ピカリ直美先生
 ③宮前翠先生


午後は以下のプログラムが行なわれました。
 
・ヴァイオリン科・チェロ科共通 正岡紘子先生によるヴィブラートとポジション移動
・ヴァイオリン科・チェロ科共通 寺田義彦先生による指導曲集の作曲家名についての提案
・フルート科 50周年企画進捗状況の確認
・ピアノ科 特別講師 東 誠三先生による「拍・カウントについて」
・ピアノ科 特別講師 臼井文代先生による「アンサンブルについて」


最後に全科共通で、ピアノ科出身の若手チェンバリスト、佐藤理州(まさくに)先生による「チェンバロで聴くバロック作品」と題された講義がありました。スズキの指導曲集にもある、バッハのパルティータ第1番を教材に、組曲それぞれの世界観、表現の元となる歴史的背景などを交えながらの解説と演奏でした。

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