「初級者のみなさんへの誌上レッスン」が小冊子になりました。

機関誌と同じサイズ。16頁

 会員の皆様向けの機関誌「Suzuki Method」に2017年〜19年にかけて連載された「初級者へのみなさんへの誌上レッスン」が小冊子としてまとめられました。ピアノ科の初級者の日々のお稽古に役立つお話が大変好評で、ヴァイオリンやチェロ、フルートの生徒さんにもとても役立つお話ばかりです。著者で、関東地区ピアノ科指導者の細田和枝先生からのメッセージとともに、ご紹介します。
 

 

鈴木先生の思い出とともに

 
 1970年代後半に 、私は、鈴木鎮一先生の著書「愛に生きる」との感動的な出会いにより、スズキ・メソードの会員になりました。当時、鈴木先生は若々しい70代で、お会いするたびに「人を育てる」スズキ哲学について、力強く、ユーモアを交えた温かい語り口で話してくださいました。
 
 鈴木先生は、いつもレッスンのポイントや実際のピアノ奏法に至るまで、数々のアイディアを出してくださり、私たち指導者には「子どもたちがどうしたら良く育つか、勉強してください! 研究してください! そして、あなたたちが90歳になって初めて“先生”と呼ばれるようになってください」と言われました。
 

まるかじりのピアノ

 その頃、30代前半だった私は、人間を育てるのは難しそうだけれど、”(母語教育法の)スズキ・メソードだからこそできるピアノ指導法” については、しっかりと考えようと心に決めました。ピアノは、音楽の三要素であるメロディ、リズム、ハーモニーを一人で担うオーケストラです。この楽器の王様と向き合い、子どもたちにどう指導するか、レッスンを通してずっと考え続け、“まるかじりのピアノ(2001年・ 全音楽譜出版社刊)”として出版することができました。

 
 今回の連載はこの本から一部を取り出し、書き直したものです。文字数の制約もあり、譜例の選定や入れ方など、かなり苦労しました。書きながら、ピアノを前にお話しできたたら、どれほどラクなことか~!と何回か考えましたが、編集部の皆さまに助けられて、お蔭さまでまとめることができました。
 
 
 
 振り返れば私は、鈴木先生によく褒めて育てていただきました。名古屋が松本に近く、先生のご出身地であったこともあり、本当によくお会いして、いろいろ教えていただきました。また、卒業録音を褒めてくださるお葉書をいただいたり、お会いした時に生徒名を挙げてお声がけくださり、とても励まされ、もっともっとがんばろうと思ったものです。入会数年後に出会って翻訳した「音楽を越えて」の出版に向けて、鈴木鎮一先生ご自身が音楽之友社に出向かれ、そちらから直接私にお電話くださった時の嬉しかった心持ちは忘れられません。「思ったらすぐ行なう」…人に対する最高の愛の形でした。
 
 今までスズキ・メソードの一指導者として、皆さまからいただいたたくさんのご恩に深く感謝いたします。
 
2020年4月29日
ピアノ科指導者 細田和枝