札幌のヴァイオリン科指導者、山同直樹先生が昨年に続き、4月14日からの5日間、メルボルンで開催されたオータムフェスティバルに講師として招待されました。昨年に続き、2年目となる今年の様子を山同先生自らの報告でご紹介します。
 

メルボルン・国際オータムフェスティバルを終えて

スズキ・メソード札幌 ヴァイオリン科指導者
山同直樹

モイシーン先生のご自宅

 2025年に続き、今年も招待講師として行ってまいりました。2025年の年末に関西地区ヴァイオリン科の松本尚三先生からお話をいただき、正式にオーストラリアビクトリア州のメルボルン・スズキから依頼をいただきました。
 
 メルボルンのヴァイオリン科指導者であるモイシーン先生宅にホームステイさせていただき、約1週間の滞在。
 
 招待講師は今までに故・鈴木裕子先生を始め、たくさんの先輩指導者がおられました。その先生方が築き上げた歴史を繋げるべく、自分にできることを精一杯やってまいりました。
 
 私にとってはすべてが初めてのことばかり。たった1人で赴くということも不安で、加えて昨年はビザ取得にかなり手こずり、出発の1日前になんとか下りたといった慌ただしい出発で、行く前にすでに疲労困憊でした。
 

びっしり組まれたスケジュール

 今年は4/14~18日の5日間。日本で考えると指導者会と夏期学校、そして個人レッスン・グループレッスンのすべてを混ぜて行なうようなスケジュールです。

講演内容のレジュメ

 体験したことがないプログラムの連続で、お昼の休憩時間は45分、それ以外は15分~30分だけの休みで、次から次にレベルの違う教室の生徒のもとに行って指導をする形です。

 
 
 
 プログラム始めの講演は
2025年「スズキの指導者として私が歩んできた道」
2026年「現代社会におけるスズキの意義」
という題目をメルボルン・スズキからいただきました。
 
 講演は作成したものを通訳なしで英語で発表し、終わった後の質疑応答では、シドニー在住の後藤晴生先生に協力していただきました。質疑応答の時間はほぼ全員の先生が手を挙げてたくさんの質問をくださり、これも日本ではあまりない光景で、その違いに圧倒されました。
 
 オーストラリアの先生方は鈴木先生のことを心から尊敬し、「スズキとして恥じない指導を心がけたい」「1人でも多くの生徒をスズキ・メソードで育てたい」という意志が強くあるように感じ、スズキの指導者として大切なことを改めて考え直しました。
 
 講演内容や、先生方へのレッスンの準備は一筋縄では行きませんでしたが、終わってみると、すべて充実した思い出であり、その一つひとつが自分を成長させてくれました。

 このような機会をいただいたことで、スズキ哲学や鈴木先生が研究された「音」について、ただ何となく実践するだけでなく、その価値を改めて認識することができました。勉強していったことを現地の先生方と一緒に学び合い、研究できた時間はかけがえのない大切な瞬間でした。
 
 参加された生徒たちは国が違えど本質的に変わりはなく、言葉はよくわからなくても心は伝わり、最後はみんなが笑顔で寄ってきてくれて「See you next year!」と多くの子どもたちが言ってくれました。子どもたちの演奏は本当に純粋で、懸命で、何にもとらわれていない、心に届く音楽でした。

 鈴木先生が始められたこのメソードが海を越え、色褪せることなく今に引き継がれ、勢いを増している存在感。モイシーン先生を始め、中心となる先生方の心にはなんの疑いもなく鈴木先生が生きていることを強く感じました。

 若い先生や研修生も多く、演奏技術についてだけではなく、子どもたちのことを考えて熱心に学んでいるように見えました。「音のレッスン」では率先して前に出てきたり、ほとんどの先生が自分から学びに来る姿勢で、こちらの士気も上がりました。
 
 先生方の会話は「どうやったら良い指導ができるのか」ということが多く、現状に満足せず、常に変わり続けようという鈴木先生の精神がここにはありました。

 全体を通して自分自身が浄化され、私自身が子どもの頃に純粋に楽しくヴァイオリンを習っていたことを思い出し、その当時、夏期学校や全国大会で見ていた先生方の情熱やエネルギーを懐かしく思い起こしてくれました。そこにはスズキならではの、どこか心がほっとする温かさ、のようなものを感じました。
 
 スズキ・メソードは子どものため、一人ひとりがそれぞれに成長し輝くことができる教育法。そんな希望に満ちた世界を鈴木先生は願い、この運動を始めたのではないでしょうか。
 
 子どもたちの限りない可能性を信じ、指導者も保護者も懸命に関わることで彼らはいかようにも育って行くでしょう。
 

モイシーン先生と山同先生、空港でのお別れの時

 我々スズキの指導者は子どもたちを育てる任務があり、かけがえのない生命をより輝かせるために保護者とともに協力し、世の中に送り出していく責務があると改めて身を正す思いでした。

 「世界の夜明けは子供から」、時代は変われど真理は変わらない、そんなことを実感した2年目でした。
 
 最後になりますが、このような機会を与えてくださった松本先生とモイシーン先生、そして支えてくださった皆様に、この場を借りて心から感謝申し上げます。

 

オーストラリアのヴァイオリン・ヴィオラ科の先生方と記念撮影。シドニーやパースからもたくさんの先生方が参加されました