春のニュージーランド・スズキ協会に再び訪問

関東地区チェロ科指導者 寺田義彦

 2016年に初めて訪れたニュージーランド・スズキ協会から再び招聘を受けて、2023年9月22日に日本を発ちました。23日にニュージーランド北島のオークランドに到着、国内線に乗り換え、北島の南端の街、ウェリントンに到着しました。24日からWellesley collegeを会場とするNZSI(New Zealand Suzuki Institute)Wellington Branch Spring Workshop 2023が始まりました。

 期間中、毎日5クラス(1クラス3人~5人)のレッスンを受け持ちました。「キラキラ星」を学習中の5歳の幼い生徒さんから、第8巻のスケルツォ(ゲンス)を学ぶティーンエイジャーまで各1時間のレッスンです。どのクラスも集中力のある生徒さんばかりで、とても感心しました。
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 最終日27日までほとんど雨天、自由時間は海に面した会場の周りの散策のみでした。しかし南半球のため、ニュージーランドでも春の象徴である桜の開花に出会えました。一年2度眺めるのは贅沢なことです。

 ワークショップ最後の「Play Out(閉会演奏)」を終えて国内線に搭乗、ニュージーランド・スズキ協会全指導者による研究大会会場であるロトルアに向かいました。
 
 機内では英国から招聘を受けたピアノ科のティーチャートレイナーKasia Borowiak先生とご一緒でした。先生はポーランドご出身ですが、英国スズキ協会にてスズキ指導者として学ばれて英国でご活躍、現在は母国ポーランドでもスズキ・メソードの普及に努めていらっしゃいます。

 Rotoruaまでの約1時間の機内ではBorowiak先生がご自身のiPadを使い、1990年英国St. Andrew’s University にて鈴木鎭一先生が同学名誉博士号授与の式典に臨まれた写真を多数見せていただきました。当時、Borowiak先生のティーチャー・トレーニングを受け持たれたAnne Turner先生が主に鈴木鎭一先生ご夫妻を接待され、Borowiak先生はお手伝いされたそうです。ダイアナ妃と面会されている鈴木鎭一先生ご夫妻のお写真も見せていただき、興味深くお話を伺いました。

 無事、ロトルアに到着、翌28日よりNew Zealand Suzuki Institute Teachers' Convention(ニュージーランド指導者研究会)が開始しました。ロトルアは風光明媚な温泉地と知られています。私は7年ぶりのため、記憶ある場所を再訪散策しました。

NZSI Teachers' Convention は3年に一度開催でしたが、パンディミックの影響で1年休止され、今回は4年ぶりとのことでした。
期間中、私は”Plenary Session(本会議)”、”Cello Professional Development(指導者育成プログラム)”、現在の生徒さんを教えて指導者が観察する”Cello Private Lesson(公開レッスン)”を受け持ちました。
 
 75分間の”Plenary Session“では”Establishment of the Suzuki method repertoire and some tips for teaching“と題してプレゼンテーションを行ないました。
 
 前半はスズキ・メソード指導曲集第1巻に「唱歌Shoka」を取り入れたことの意味及びその効果について、歴史観点と私見を交えて説明しました。後半は第2巻~3巻まで古典名曲小品「ガヴォット」「ミュゼット」「メヌエット」などの生徒への指導や留意点を解説しました。
 
 ただしチェロの第3巻指導曲集に初めて、チェロのオリジナル作品が登場します。その「スケルツォScherzo by Carl Webster 」は1944年に The Boston Music Companyから出版されました。中間部の伴奏はまさしく1938年に流行った”Begin the Beguine”のリズムです。

 弾きながら解説していると、聴講されている若い指導者の皆さんがスクリーンに映した”Begin the Beguine”のリズムを膝で叩き出しました。日本では受けない反応に驚き、喜びました。
 
 ”Cello Professional Development“では指導者からの積極的な質問を受け、”Cello Private Lesson“では遠くから来る受講生たちが疲れを見せることなく、彼らの明るい表情に助かりました。
 
 最終日10月1日の”Open Forum Panel Discussion”は大会期間中に寄せられた質問や意見に招かれたTutor(講師)たちが応えるセッションです。私はオーストラリア・シドニーより参加されたヴァイオリン科の松山璃利先生とチェロ科のBraxton Neate先生ご夫妻に助けられ、質問にお答えしました。日本では受けないような質問もあって文化の違いかと思いましたが、前向きなご意見も伺い、スズキ・メソードならではと共感しました。

 全プログラム終了後、私は帰国便の出発地、オークランドに向かいました。その際、2009年メルボルン世界大会で知り合った友人チェロ指導者Margaret Cooke先生の運転する車に乗せていただきました。現在、彼女はNew Zealand Suzuki Institute会長であり、ISAのパンパシフィック代表です。私は前回の2016年のNZSI Teachers' Convention でも大変お世話になりました。これからも彼女の統率力と優しい人柄、そして指導者皆さんの強い協力で、ニュージーランド・スズキは発展し続けると確信して、翌日2日に帰国しました。

Cello professional developmentに参加の指導者たち。寺田先生の右隣の赤い上着の女性がMargaret Cooke先生