音楽が結ぶ平和の輪
日米のスズキの子どもたちが神戸・広島・松本で交流
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→神戸での交流
→広島での交流
→松本での交流
→アメリカ各州議会からの謝辞に見る今回の交流イベントの意義
8月6日〜7日、神戸での日米合同のワークショップ
御影公会堂 白鶴ホール(神戸)
ツアーグループは日本で披露するアンサンブル曲を用意してきており、5日に神戸入りして一足先に御影公会堂でリハーサルを行ないました。日本からの参加者生徒は37名でアメリカの26名の生徒と合わせて63名。日本の指導者は、ヴァイオリン科の松本みゆき先生、チェロ科の原力海先生、ピアノ科の田附沙織先生、そして私の4名でした。クラス別のグループレッスンの他、折り紙や日本の古い玩具で遊ぶ時間もありました。
神戸でのこの催しを発案されたのは、40年前に松本の才能教育音楽学校で鈴木鎮一先生のもとで、私(松本尚三先生)やみゆき先生と一緒に勉強していたベッツィー・コバヤシ先生で、ベッツィー先生は昨年の秋に神戸を訪れて、実際に御影公会堂の下見をされ、アメリカの同僚の先生方に呼びかけて、この日本ツアー最初のイベントに大勢の生徒を連れて来られたのです。
ベッツィー先生はこれまでに松本で開催される夏期学校に大勢の生徒を連れてこられたことがありますが、今年は海外からの参加人数の制限があって難しく、それならばローカルなイベントを企画しようというわけです。
会場となった御影公会堂は、国の登録有形文化財となっている歴史的建造物で、野坂昭如の小説「火垂るの墓」でも知られており、外壁には神戸大空襲の傷跡も残っています。ベッツィー先生の日本ツアーの目的はスズキ・メソードの発祥の国で生徒や先生たちと交流を行なうことですが、もう一つの大きなテーマは「平和」でした。ワークショップを締めくくるジョイントコンサートの最後に提案されていた曲は「ドナノビスパーチェム(我らに平和を与え給え)」という曲で、最後には会場の全員で歌いました。そしてツアーグループは翌日の朝、広島での平和記念公園での演奏に向かうことになります。
「パインランド・クレッシェンド・スズキ・ツアーグループ」は、メイン州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州の文化使節団として正式に認知されていていました。広島をはじめ、スズキ・メソード発祥の地での演奏を行なうことなどによって、音楽や教育における文化交流を繰り広げ、日米の国境を越えた理解と友情の育み、平和の希求を共有することが、それぞれの州の議員や州議会議長からの託されてもいたのです。世界の言葉である音楽で繋がった子どもたちは、考えられる限り最高の文化使節団になったように思います。
~アメリカの先生方から寄せられたメッセージ~
神戸で私たちを温かく迎えてくださった、すべての素晴らしいホストの皆様へ
心の底から、ありがとうございます!
先生方、ご尽力くださったすべての保護者の皆様、そして素晴らしい生徒の皆さん、ありがとうございました。私たちの生徒と家族を、これほどまでに温かく、寛大なお心と優しさをもって迎えてくださったことに、心より感謝申し上げます。
日本の先生方が、鈴木鎮一先生の精神を受け継ぎながら、私たちに「音」を届けてくださる姿を拝見し、深い感動と大きな刺激を受けました。そして、日本のヴァイオリンの生徒の皆さんの演奏にも、私たちは本当に感銘を受けました。特に、テレマンの最初の和音が奏でられた瞬間は、まるで魔法のようで、私たちはすっかり魅了されました!
また、原先生の生徒の皆さんの美しいチェロの演奏にも大変感動いたしました。私たちのヴァイオリンの生徒たちのためにチェロのハーモニーを奏でてくださったこと、その温かいご協力とご厚意に、心から感謝しています。
そして何より、日本の生徒の皆さんのオープンで、熱意にあふれた姿がとても嬉しかったです。私たちの「ちょっと変わったアメリカ流のアイデア」にも、皆さんが喜んで挑戦してくれました!歌を入れ替えてみたり、音楽に合わせて動いてみたり、1巻と2巻のクラスでお互いのヴァイオリンを弾いてみたり……。どんなことにも素晴らしいエネルギーと喜びをもって取り組んでくれたことが、本当に嬉しかったです。
折り紙、お菓子、日本のゲーム、サマーキャンプ・ワークショップの美しいロゴが入ったハート形のクッキーなど、たくさんの心のこもった贈り物もありがとうございました。その一つひとつから、私たちを迎えるためにどれほどの時間と手間、そして愛情を注いでくださったのかが伝わってきました。また、今回の私たちの訪問のために、想像もつかないほど多くの準備や運営に携わってくださった皆様にも、心から感謝申し上げます。そして、そのすべての背景にある皆様の温かいお気持ちが、私たちにとってどれほど大きな意味を持っていたかを、ぜひお伝えしたいと思います。
また、才能教育研究会の広報チームの皆様が私たちのグループに同行し、演奏の様子を取材・記録してくださったことを、大変光栄に、そして恐縮に感じています。この活動を通して、日本全国のスズキの生徒たちと先生方が取り組んでいる素晴らしい活動が、さらに多くの方々に知られるきっかけとなることを、心から願っています。
私たちアメリカの生徒たちと日本の生徒たちが、一緒に音楽を奏でる姿を見ることができたことは、私たちにとってかけがえのない経験でした。隣り合って一緒に演奏する子どもたちの姿を見て、私たちは、両国の間に友情が生まれ、互いを思いやる心が育ち、平和で温かな関係が続いていくことへの大きな希望を感じました。皆様の大切な生徒たちを私たちと分かち合ってくださったこと、そして皆様の音楽、文化、そして心を私たちに分けてくださったこと、そのすべてに、心より感謝いたします。
最後になりましたが、私たちをこのように一つにつないでくださった鈴木鎮一先生にも、心から感謝申し上げます。
深い感謝と友情を込めて
カーロウ・フォークナー=キャロル
ベッツィー・コバヤシ
ヤズミン・ヴィタリウス
エイミー・ブリアント
パインランド・クレッシェンド・スズキ・ツアー・グループ
生徒・ご家族一同を代表して
2026年8月10日
8月8日、広島で平和コンサート
平和記念公園(広島)
音楽を通して得た出会いや感動が、それぞれの日々の中で新たな一歩につながっていくことを願っています。今回の出会いが一度きりで終わることなく、いつかまた音楽を通して再会できる日を心から楽しみにしています。
・一度も練習やリハーサルがなかったのにも関わらず、全員が呼吸を合わせて奏でる音楽がとても素晴らしくて感動しました。アメリカの生徒さんたちは連日の日本ツアーで疲労の中だったと思うのですが、とてもパワフルに楽しみながら演奏されていて、なんだか元気をいただきました。「音楽ってやっぱりいいな」と感じる忘れられない経験になりました。住田未来 保護者
・アメリカの方と一緒にヴァイオリンを弾いたのははじめてで、弾く前はうまく弾けるか不安でしたが、先生の弓の返しがおもしろく、不安もなくなり、楽しく演奏できました。野田明李(小6)
・夏の光を思わせる眩い輝きと、青空のような澄み切った音色が心に響く、素晴らしい演奏でした。平和への祈りが込められたこの場所で、日米の子どもたちが音楽を通して心を寄せ合い、ともに演奏できたことを、心から嬉しく、幸せに思います。野田亜希子 保護者
・暑い日の夏、世代や文化、国を超えて、平和公園の鐘の前で子供たちの演奏が響いたこと、嬉しく思います。演奏を聴いていると、平和への祈りが公園に響き渡って、とても気持ちが穏やかになりました。我が子は「アメリカの人と一緒に弾いたんだよ」とどこか自慢げで、嬉しかったようです。遠いアメリカから、たくさんの子どもたちが集まってくれたこと、寺本先生をはじめ、多くの先生方がサポートしてくださって成功したことに心から感謝申し上げます!ありがとうございました。金原俊 保護者
・「どこに住んでるの?」ランチの時に、子どもたちとの会話がそこから始まりました。赤飯や豆菓子、もみじ饅頭と、新しい味にトライして美味しいって喜んでもらえたり。買ったばかりのアイスが床に落ちてしまい、一緒にトイレに流しに行ったり、ちょっとした喜びやドキドキを一緒に楽しみました。何より、演奏で交流できていたので、気兼ねなく話すことができました。あっという間に時間は過ぎ去り、バスでお見送りする時には寂しかったです。また会おう、と再会を約束しました。その時までヴァイオリンをみんなで続けていたら嬉しいです。貴重な機会をありがとうございました。河野由佳利 保護者
・遠いアメリカから来たお友だちと、平和記念公園で一緒に演奏できて、とても楽しかったです。言葉は少ししか話せなくても、同じ曲を弾くと自然に気持ちが通じるようで、不思議でうれしかったです。
千羽鶴は、神戸のスズキ・メソードのお友だちが広島のために作ってくれたものを、アメリカのお友だちが持ってきてくれたと聞きました。一緒に演奏はできなかった神戸のお友だちにも、ありがとうの気持ちでいっぱいです。
広島という場所で、日本やアメリカのたくさんの子どもたちが音楽や千羽鶴を通してつながれたことが、とても心に残りました。これからも毎日の練習をがんばりたいです。生徒(小1)保護者
8月11日、松本で交流コンサート
才能教育会館ホール(松本)
最終目的地の松本での様子は、島野ロンダ先生からレポートしていただきました。
パインランド・クレッシェンドのスズキ・ジャパンツアーの目的は、「音楽を通して世界に平和をもたらしたい」という願いを胸に、未来を担う若い大使たちを育てることでした。音楽を通して美しい心を持った子どもたちを育て、その子どもたちが世界の平和につながっていくことを願った鈴木鎮一先生の思いを考えると、スズキ・メソード発祥の地である松本は、今回のツアーを締めくくる場所として、まさにふさわしい場所でした。
一行は松本で、鈴木鎮一先生とワルトラウト夫人の墓前で演奏を行ないました。また、現在は鈴木鎮一記念館となっている鈴木先生のご自宅も訪問し、スズキ・メソードの原点に触れる貴重な時間を過ごしました。
その後、才能教育会館のホールに日本の生徒たちとパインランド・クレッシェンドの生徒たちが集まりました。まず、パインランド・クレッシェンドの生徒たちが、スズキ・メソードのレパートリーには含まれていない曲を演奏し、その後、日本の生徒たちも加わって、指導曲集第8巻の曲から「キラキラ星」まで、幅広いレパートリーを一緒に演奏しました。上級曲ではアンサンブルパートも加わり、グレトリーの「タンブリン」はエイミー・ブリアント先生、ウェーバーの「カントリーダンス」とベームの「無窮動」はカーロウ・フォークナー=キャロル先生がアンサンブルパートを作曲してくださいました。また、その他の曲ではアンサンブルパートとともに、嘉納尚代先生にピアノパートを演奏していただきました。
今回の交流には、島野ヴァイオリンクラスの生徒たちに加え、チェロの生徒1名、フルートの生徒1名、以前島野クラスで学んでいた大人の方2名、生徒の親が1名、そして茅野市から5名のヴァイオリンの生徒たちと、その指導者である河西好江先生にもご参加いただきました。スズキ・メソードの喜びの一つは、言語が違っても、事前に一緒にリハーサルをしたりしなくても、さまざまな国や地域から集まった子どもたちが、一緒に美しい音楽を作ることができることです。
一緒に演奏した後、北澤久美子先生と私は、参加したすべての生徒たちへの記念として、鈴木先生の「ワンポイントレッスン」を紹介しました。北澤先生は、まずピチカートで「よく響く音」を聴いてから、その響きを弓で再現する方法を実演しました。みんなで演奏した際には、ホールいっぱいに美しく豊かな音が響き渡りました。
私は、鈴木先生が「あなたがヴァイオリンを弾くのではありません。弓がヴァイオリンを弾くのです。あなたはただ、弓を助けるだけです」と説明された言葉の感覚を伝えるため、鈴木先生が使われていたさまざまな弓の持ち方を実演しました。
交流の最後には、全員で「Dona Nobis Pacem」を演奏しました。そしてその後、世界の平和を願う私たち一人ひとりの心を一つにして、会場にいる全員でこの美しい歌を歌いました。
その後、先生方からマサチューセッツ州、ニュージャージー州、メイン州の州議会からの記念証書をいただきました。そのうちの一つには、「この交流が、音楽には文化や世代を超えて人々をつなぐ力があること、そして学びと奉仕を通して、より平和な世界を築く助けとなることを願います」と記されていました。
演奏会の後は、全員でロビーに集まり、軽食をいただきながら交流の時間を持ちました。初めて会う生徒同士では、恥ずかしくてなかなか話せないこともあります。しかし、一緒に演奏した後には、多くの生徒たちがすでに友だちになったかのように、お互いについて知ろうと、簡単な質問をしながら一生懸命コミュニケーションを取ろうとしていました。
今回参加した生徒たちの保護者の皆様からも、「素晴らしい音楽的・文化的な交流の経験だった」という声が多く寄せられました。
島野クラスの一人の保護者からは、「日米スズキ・メソードの子どもたちによるヴァイオリンとチェロの演奏で、演奏後の交流会で誕生月ごとに子どもたちが別れて移動する際に、ステージサイドでアメリカの生徒の1人がスマートフォンを使って翻訳し、交流をしていた姿がとても楽しそうでした。『あなたの名前はなんですか?』やその後の『あなたの何が面白いのですか?』と翻訳がうまくできずに、その文章が面白くてみんなで笑ったそうです。言葉が通じなくても楽しんで交流しようとしている姿が印象的でした」というコメントをいただきました。
そして、松本での交流を終えた後、パインランド・クレッシェンドの先生から、次のような心のこもったメッセージが寄せられました。
「松本で過ごした時間に、素晴らしいおもてなしをしてくださり、本当にありがとうございました。皆さんが私たちにくださったのは、素晴らしい訪問の時間だけではありません。これから一生、私の心に残り続ける経験を与えてくださいました。
特に、才能教育会館を訪れ、そこで生徒たちと一緒に演奏する機会を作ってくださったことに心から感謝しています。私たちの生徒たちにとって、とても意義深い機会でした。そして、あの温かな時間を、私たちは皆、きっといつまでも覚えていると思います。
私はこれまで、鈴木先生ご本人に直接お会いする機会はありませんでしたが、鈴木先生から人生に深く影響を受けてきました。今回、松本で皆さんと時間を過ごす中で、今できる形で、鈴木先生とつながることができたように感じました。その気持ちは、これからもずっと私の心の中に残り続けると思います」
今回のツアーと交流の意義
今回の訪日にあたっては、メイン、マサチューセッツ、ニュージャージーの各州議会から公式の顕彰文が贈られました。そこでは子どもたちを「文化大使」と位置づけ、音楽を通して平和、相互理解、友情を育む今回の交流に大きな期待が寄せられています。興味深いのは、いずれも演奏旅行としての視点ではなく、音楽を通した国際理解と平和への実践として捉えていることです。
それぞれの内容を読み解いてみましょう。今回の交流の数々が、まさに、鈴木鎮一先生が願われた「平和な社会の実現と人々の活発なつながり」として実行されたことがわかります。それぞれの文章は、画像をクリックすると拡大します。
州下院議員Arthur Bell氏から、ツアー参加者を「文化大使」として認定する顕彰文が贈られています。日本のスズキの子どもたちと学び、演奏し、交流すること、特に広島平和記念公園での平和コンサートを高く評価。「音楽という普遍的な言語」を通して平和、記憶、国際親善を伝える活動であり、若者が異文化間の友情を築く積極的な役割を担っていると称えています。そしてメイン州民を代表して、安全で実りある旅となること、日米の間に平和と相互理解、末永い友情が育まれることへの期待が寄せられています。
州上院から「公式顕彰状」が授与されています。日本での教育交流において、参加者がマサチューセッツ州を代表する「文化大使」として活動し、音楽を平和、相互理解、永続する友情の象徴として広めることを称えたものです。州上院議長Karen E. Spilka氏をはじめ、複数の州上院議員の署名が入り、ツアーの成功を願う正式なメッセージとなっています。
上院・下院による共同決議として、ニュージャージー州から参加する子どもたちを顕彰しています。日本でスズキの先生方から学び、日本の仲間と演奏し、文化交流を行なうことに加え、松本から広島まで各地を訪問し、広島平和記念公園などで演奏することにも言及。こうした活動を、音楽によって「美、癒やし、国家間の調和」を促進するものと高く評価しています。州議会として参加者の努力と功績を称え、安全で実りある旅を願っています。