幾星霜を経て紡いだ、思いの連鎖
いずれの文章からも、鈴木先生のもとで学び、その理念を現場で実践し続けてきた指導者たちの言葉が、単なる回想ではなく、スズキ・メソードという教育がどのように生き続けてきたかを示す証言であることがよくわかります。本冊子は、その歩みを記録すると同時に、これからの時代において私たちが何を受け継ぎ、どう紡いでいくのかを静かに問いかける一冊となっているのです。
前書きには、次のように書かれています。
これまで、鈴木鎮一先生に薫陶を受けた多くの指導者がその理念を実践すべく、スズキ・メソードの普及を途絶えることなく紡いでこられました。
このたび、指導歴六十年以上の方々と、フルート科創始者の髙橋利夫名誉教授に「鈴木先生との関わり、スズキ・メソードについてお考えのこと、日々のご指導について感じていらっしゃることなど、ご自由にお書きください」とご寄稿をお願いし、冊子にまとめました。
刻々と変化する社会において、私たちはスズキ・メソードの未来をどのように紡ぎ続ければよいのか。
次の一歩に迷い悩む時、この冊子が少しでも力を与える存在となれば幸いです。
60年以上指導を続けてこられた先生方は、単に長く教えてこられただけでなく、「鈴木鎮一先生の言葉を直接受け取り、それを現場でためし続けてこられた」世代です。そのため、この冊子は、理念が現実の教育としてどう生きてきたかの貴重な資料になります。
「自由にお書きください」という問いかけで、統一見解を求めるのではなく、それぞれの言葉で語り、思いを綴る手法をとっているところも大切なポイントでしょう。スズキ・メソードが単一の答えではなく、多様な実践の場であることを示唆しています。
さらに次の世代に考えさせるスタイルとして、「私たちはスズキ・メソードの未来をどのように紡ぎ続ければよいのか」と問題提起しています。伝えるだけでない、考えを生み出す土壌がここにはあります。
そして前書きの最後にある「次の一歩に迷い悩む時、この冊子が少しでも力を与える存在となれば幸いです」は、この冊子が、正解を探す本ではないこと、迷ったときに開く本であること、自分の立ち位置を確認する本であることを示しています。
この冊子は指導者向けですので、ご興味のある方は教室の先生から現物を見せてもらってください。その内容に共感し、感銘を受ける場面をたくさん発見されることでしょう。