ヴィオラの音色で、テレワーク!

 
 以前、マンスリースズキでも紹介しました「テレワークで合奏してみた!」シリーズに続けと、ヴィオラグループの指導者と生徒さんたちによるテレワークアンサンブルが完成しました。さっそく3人の先生方と、生徒さんたちのコメントをご紹介しましょう。なお、写真をクリックすると動画をご覧いただけます。


 

コロナ禍の今だからこそ。

東海地区ヴィオラグループ指導者
野田豊子

 
 今年は、新型コロナ対策で過ぎようとしています。行事やイベントも中止や延期となり、ステイホームを強いられる日々でした。松本で開催される今年の夏期学校も中止となりました。ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、夏期学校では「ヴィオラクラス」を毎年開講しています。年齢は幅広く、海外の生徒さんも分数ヴィオラで参加しています。
 

2019夏期学校「午後のコンサート」

 2019年は、初めて夏期学校の「午後のコンサート」で演奏発表の時間もいただき、今年も意気込んでいたところでの中止という、残念な事態となってしまいました。せっかく昨年の夏期学校で、素敵な機会をいただいたのに、今年に繋げることができない寂しさがありました。コロナ禍の今年にできることを模索しました。それは、ヴィオラのテレワーク合奏です。

 企画は8月から始まりました。曲目は、昨年の「午後のコンサート」で演奏した「フランス民謡」を選曲。この曲の伴奏パートは、豊田耕兒先生に編曲していただいたヴィオラ三部合奏曲で、初心者の生徒さんにも参加していただける美しい曲です。
 
 一番大変な動画編集は、野口美緒先生が担当を引き受けてくださいました。井上悠子先生と私も、楽譜と音源の配布などの仕事を手分けしました。テレワーク参加は、初めての人ばかりですので、動画撮影の説明など、こちらもかなり不手際があり、ご迷惑をかけてしまいました。でき上がった動画を観ると、そんな苦労も吹き飛びました。
 
 小学生から大人の方まで、また、全国からの幅広い応募があり、大変嬉しく感謝しています。新型コロナ感染の心配がなくなりましたら、実際にお会いして「フランス民謡」をもっと大勢のヴィオリストと演奏をしたいですね!
 


 

ヴィオラならではの時間を共有しました。

甲信地区ヴィオラグループ指導者
井上悠子

  
 ヴィオラのレッスンで大事にしているのは何よりも音色作りですが、ヴィオラを習いたいと私のクラスに来る方は皆、ヴィオラの音色にすでに魅了されている方ばかりです。なので音色の探究や楽器の『鳴り』を求める時間は、とても楽しい時間になります。
 
 より深く、優しく、力強く、温かい音を求めることは、弾く人に内面の育ちを要求してきます。スズキのレッスンでは「音が育ち心が育つ」この過程をとても大切にしていますので、ヴィオラで音作りをすることはスズキ理念を理解し、実践することに大いに役立っている、そんな実感もあります。
 
 また、ヴィオラが好きな方には合奏好きな方がとても多いのです。そしてアンサンブルがとても上手!合奏で音楽の鍵を握る内声を担うヴィオラパートを経験することは、判断力や反応の良さ、柔軟さ、懐の深さといった、数値化して比較するのが難しい能力の育ちに大いに貢献しているように思います。
 
 幼児教育としてのスズキと出会わずに大きくなった方々が、ヴィオラを通して入会し、スズキ理念に共感する仲間になってくれています。その状況が生まれるのもまた、ヴィオラという楽器の懐の深さの産物と言えるのではないでしょうか。


 

今回は一つのステップ。これからもできることを考えていきます。

関東地区ヴィオラグループ指導者
野口美緒

  
 ヴィオラグループもテレワーク合奏を、という話が持ち上がった時、個人的には心配もありました。夏期学校や卒業録音もまだ参加者が少ないヴィオラグループの生徒さんがどのくらい参加してくださるのか。素人の私が編集して大丈夫なのか。

 蓋を開けてみると、みなさんから届く録画を最初に見て、生徒さんや先生方から様子をお聞きできたのは嬉しい役得でした。夏期学校のヴィオラクラスやコンサート、地域の弦楽団などでお会いしていた生徒さんも、お会いしたことない全国の生徒さん、大人の方々も応募してくださいました。

 今回のテレワーク合奏では、昨年の夏期学校での演奏映像に合わせて(イヤホンで聴きながら)演奏し、それを録画することになっていました。対面のアンサンブルより合わせにくく、何度もやり直したという声も聞かれました。参加者のヴィオラ歴やヴィオラとの向き合い方も幅広い印象で、それがヴィオラという楽器の魅力と懐の深さゆえと感じ、各人の良さが出る配置に知恵を絞りました。
 
 春から宮原正治先生(関西地区ヴァイオリン科指導者)にヴァイオリンのテレワーク合奏でお世話になった中で、録画をどうやって集め、編集の際にどのような問題が起こりうるかについて共有していただいていたのは本当にありがたかったです。今回は映像再生と録画、それぞれの機器で遅延が起こったと想像します。玄人の宮原先生と同じ機材やソフトが使えるわけでもなく、私物のノートパソコン(オーバーワークで熱く・・)と映像編集ソフトのiMovieで、半袖や浴衣の演奏が季節外れになってしまうくらいお時間をいただいてしまったことを、この場をお借りしてお詫び申し上げます。

  指導者も合奏に参加してハーモニーに厚みが加わりました。皆様のおうちやお教室からの映像ですので、ホールの音響にはなりませんが、スピーカーに繋いでいただくと、よりヴィオラらしい響きでお楽しみいただけるかと思います。

  もし集まって合わせることができたら、呼吸や弓の動き、ハーモニーも断然合わせやすい、でもテレワークだからこそ参加できた方々もいらっしゃる。これを入口に、またどんな合奏でも、できる機会を作っていきたいと思います。


それでは、ヴィオラによるテレワーク合奏をお楽しみください。写真をクリックするとYouTubeで動画をご覧いただけます。
 

参加者の声

もっと多くの人に、ヴィオラの魅力を知ってもらいたい〜高校生
 私がヴィオラに出会ったのは中学1年生の時でした。中学校のオーケストラ部に入り、そこで一番気に入ったのがこの楽器で、弾けば弾くほどその魅力に取りつかれ、もっとヴィオラらしい音を追求したいと思ったことがきっかけで、井上悠子先生への師事を決めました。習い始めの頃は芯のある音を出すことが本当に難しくて、とても苦戦していましたが、練習を重ねるにつれて少しずつ自分の出したい音が出せるようになってきました。柔らかく優しい音色なので、聴いている時だけでなく自分で弾いていても心地が良いです。しかしヴァイオリンやチェロなどと比べるとやはり知名度が劣ってしまうので、この音色の魅力に気づいていない人がまだまだたくさんいてとても悲しいです。もっと多くの人にヴィオラのこと、その魅力を知ってもらいたいので、今通っている高校を卒業した後も弾き続けていきたいと思っています。大好きなこの楽器の魅力がたくさんの人に伝わるように、これからもがんばります!

 

ヴィオラを始めたことで、ピアノやヴァイオリンの変化を楽しみたいです。〜小学4年生(分数ヴィオラで参加)
 野口美緒先生にヴィオラのお話をいただき、面白そうなので挑戦しました。ヴァイオリンよりサイズが大きくて、弦の違いに最初は驚きましたが、ヴァイオリンより音が響く気がしました。低音が特に良く響くので、弾いていて楽しかったです。ちょうどジュニア弦楽団に入るタイミングで、3rdを弾くように言われましたので、それならばヴィオラで弾いた方が全体の演奏としてもかっこいいかなと思い、ジュニア弦楽団もヴィオラで挑戦することにしました。ピアノ、ヴァイオリンに続いて、ヴィオラが3つ目の楽器になります。ピアノとヴァイオリンは、まったくちがう楽器にみえますが、ピアノで育んだ耳はヴァイオリンで音をとらえる時に役立ちましたし、譜読みも早い気がします。ヴィオラには、ピアノとヴァイオリンの経験がどのように活かされるのか、また、ヴィオラを始めたことで、ピアノとヴァイオリンの音がどのように変わってくるのか、今からとてもワクワクしています。

 

皆さんの笑顔がヴィオラを続ける原動力です。〜大人の生徒さん
 大人になってから、何か楽器を習いたいと思い立ち、ご縁があり、スズキ・メソード吹田の曽田義嗣先生にヴァイオリンを教えていただくことになりました。4〜5年前に「卒業演奏会でヴィオラを弾いてみませんか?」と声をかけていただき、ヴィオラを弾いてみようと無謀な?チャレンジをすることに。楽譜の違い、楽器の大きさに慣れなくて、弾くことだけで精一杯でしたが、少しずつヴィオラの音を聴いて楽しめるようになってきました。思うように弾けないことも多いのですが、弾けば弾くほどヴィオラの深い音に引き込まれていきます。
 仕事と家事と練習の両立は難しく、指導曲集の進度も遅いのですが、先生が根気良く付き合ってくださり、なんとか続けています。教室の生徒さんも皆さん仲が良く、雰囲気も明るく、合奏もいつも賑やかで笑顔が溢れています。皆さんの笑顔も続けていく原動力の1つかもしれません。