Suzuki Method Teachers’ Convention
全国指導者研究会@松本 才能教育会館 〜懐かしい松本を訪れて〜 

2022.8.1
 高木 洋子(文・写真構成)
 
 早いもので、すでに2ヵ月も経ってしまいましたが、Suzuki Method の本拠地である松本で開催された、Suzuki Method Teachers’ Convention 全国指導者研究会にピアノ科の招待講師としてお招きいただき、皆様とともに素晴らしいひと時を過ごさせていただきました。

 ちょうどコロナが落ち着いていた時期でもあり、 『Monthly Suzuki 2022年7月号』に紹介されているように、オンライン配信とリアルのハイブリッド式で、ヴァイオリン科・チェロ科・フルート科、ピアノ科の先生方が4日間にわたり、 講師の先生方の講義や特別コンサートなどが開催されましたが、実行委員会の先生方と事務局の皆様のサポートによって無事に行なわれたことは、今振り返ると奇跡のように思えます。

 最後に閉会式が行なわれたまつもと市民芸術館の大ホールの舞台裏の配信装置をつなぐ配線の複雑さに驚きましたが、全国の先生方に届けるための工夫と努力がどれだけなされていたか、パワフルな裏舞台の様子も垣間みることもできました。
 
 3日目に私の担当した講座は、東誠三先生、臼井文代先生の講義に続いて「多彩な音楽の旅 〜 中南米・スペイン音楽レクチャー」 〜 教本6巻より、H.ヴィラ-ロボス 《道化人形》、E.グラナドス《アンダルーサ》を中心に〜というタイトルで、90分間のお話と演奏をさせていただきました。

『音楽の旅』
好奇心、原点、創造力、冒険、憧れ、世界の様々な響き!
リズムを体と心で自然に感じて、時には音楽に合わせて踊ってみよう。
アマゾンをはじめとする神秘的で雄大なブラジルの大地。作曲家たちの故郷への想いがクラシック音楽の中にも息づいています。
独特なシンコペーションを持つ情熱的なサンバやタンゴのリズム。そして、ブラジル特有の『サウダージ』(郷愁とか希望、憧れなどが混じり合う特別な感情)に魅了される。色彩感豊かな音楽!』
 
このような壮大な話から、様々なヴィラ=ロボスの作品を紹介しました。
 
 10年前の2012年に浜松のアクトシティで行なわれた全国指導者研究会では、スペイン音楽の方に焦点を当てたので、今回は主にヴィラ=ロボスをメインにしたレクチャーにしました。今回は頭上からの配信カメラやマイクなどもご用意いただき、現地で参加いただいた先生方はもちろん、ご自宅から参加くださっている先生方とご一緒にともにいる感覚を実感できるという、新しい経験をさせていただきました。いろいろとサポートいただいた先生方、ありがとうございました。

 このコロナ時代に、こうして世界各地どこにいてもオンライン上でつながる進化はとてもありがたいことと実感しました。とは言え、何事においても「その場」で得られる感動や楽しさにはやはりかないません。夏期学校も急遽オンラインで開催されたということですが、また来年こそは賑やかに皆さまが大勢で集うことができることを切に願います。
 
 今回、松本を訪れたのは本当に久しぶりのことでした。当時は母が指導者研究会が終わった後に合流して、夏の家族旅行で上高地など避暑地へ車でよく出かけたものです。このたび、私が小学生の頃、夏期学校で演奏したことのある懐かしい才能教育会館ホールの舞台に再び立てたことは大きな喜びでした。ホールに掲げられている鈴木鎮一先生のお写真を拝見すると、西ドイツのベルリンでの世界大会(編集部註 1987年)でのお姿や、卒業テープに吹き込んでくださった優しい声とお話が想い出されます。梅津美世子先生や母がスズキ・メソードの理念に共感し、育ててくれたこと、これまでに多くの師と出逢いに恵まれて、ピアノを続けてこれたことに改めて感謝するばかりです。

 やはり、私が音楽をする上で大切にしているのは「音に心を、音にいのちを」になると思います。多彩な音色のパレットから感じたままに美しい音楽を奏でましょう。これからも全国の先生方のもとで学ばれている生徒さんたちの奏でる音楽によって、平和で豊かな世界が広がっていくことを強く願います。

 余談ですが、閉会式後にすぐに帰ってしまうのも残念に思い、松本からすぐ近くにある浅間温泉で母と1泊だけゆっくりしようということになり、当日予約できる温泉宿を探して見つけたのが、「ホテル玉之湯」さんでした。これがまた偶然というか、素晴らしい出逢いがありました。宿についたら、まずは温泉と美味しい夕食を楽しみましたが、そこではなんとおよそ年間320回、生演奏の車坐(くるまざ)コンサートを毎日開催しているというのです。スズキ・メソードの先生方も宿泊され、ここで演奏してくださることも多いとのこと。この日の出演者はヴァイオリニスト・深沢厚さんで、とても歌心溢れる演奏で、ジャンルを問わず、様々な楽しい曲を披露してくださいました。お話を伺うと、やはり松本育ちのスズキ・メソード出身とのことで、嬉しくなりました。このコンサートシリーズは、つい先日には22周年を迎え、通算7000回を越えたということで、市民タイムスの新聞記事にも紹介されていました。

 そして、もう1つ嬉しかったのが、ホテル玉湯の館主である山﨑良弘さんが、スペイン、バルセロナから帰ってこられたばかりということで、話が盛り上がったことです。ホテル玉之湯の自慢が手打ちそばで、八ヶ岳山麓産、上伊那郡辰野町産、南佐久郡川上村産のオリジナルブレンド、信州産100%のそば粉を使い、水はこだわりの安曇野の天然水を使用しているとのことで、夕食でも手打ち蕎麦を振る舞われたのですが、これが特段に美味しかったのも納得です。なんと、山﨑さんは大学でスペイン語学科を卒業され、メキシコに留学にも行かれたとのこと。

 2013年と2015年の2度、計2年にわたって蕎麦の栽培から製粉、蕎麦打ちまでスペイン人のお弟子さんを数名、松本で育てられ、何度も現地スペインにて日本の伝統である蕎麦作りを伝えに行かれているという、食文化の国際交流をされている方だったのです。現地の新聞記事なども見せていただき、スペイン人は暖かいお蕎麦の方を好むといったことや、カンタブリア州には蕎麦を栽培する村があり、そこは偶然にも名前がSOBA村ということも教えてくださいました。

 私もコロナ以前の2019年までは毎年3〜4回は演奏旅行で出かけていましたので、すっかりいろいろな話に花が咲き、いつかスペインで会いましょうという言葉でお別れしました。その後、7月8日にはスペインから来日したピアニストのホセ・マヌエル先生を招いてのコンサートを横浜で開催したのですが、その浅間温泉にいらした、スペイン関連のご友人が山﨑さんのご紹介で来場くださるなど、これまた音楽を通じて松本からスペインへと偶然が引き寄せた出逢いが、最後まで楽しい旅のお土産となりました。
 
¡ Hasta la vista !
また皆様と元気でお会いできますように♬