今年も豊田耕兒先生とヴィオラ研究会を開催しました!

 
 定期的に研究会を開催してきたヴィオラグループのヴィオラ研究会。最近は、以下のように活動しています。
 →2019年12月開催のマンスリースズキの記事
 →2022年4月開催のマンスリースズキの記事
 →2023年4月開催のマンスリースズキの記事
 
 今回は、9月に卒寿を迎えられる豊田耕兒先生をお招きして、新たな曲目への挑戦となりました。バッハの無伴奏チェロ組曲第2番二短調BWV1008のヴィオラ版全曲への取り組みです。速報でお届けします。
 

 8人の出席メンバーの中から、今回は、前半の3曲(Prélude, Allemande, Courante)を関東地区ヴァイオリン科指導者の増谷夏葵先生、そして後半3曲(Sarabande, Menuet I-II, Gigue)を甲信地区ヴァイオリン科指導者の井上悠子先生が代表演奏を担当。それぞれ、しっかりと練習を積み重ねてきたご様子がみてとれる演奏でした。その上で豊田先生からフレーズの取り方、フィンガリング、ボウイングの確認、アコードの演奏法などの指摘があり、さらに全員で斉奏するというスタイル。

 あらかじめ豊田先生によるボウイングの指示を全員がシェアしていますが、細かい部分でのボウイングについての質問やフレーズの感じ方についての提案なども先生方からあり、この研究会がバッハの至高の名曲を通して、豊田先生の音楽感を伝授される場にもなっていました。日常生活では、子どもたちの指導者である先生方が、一生懸命に豊田先生のお話をメモされ、大きく頷き合いながら、一緒にバッハの世界を感じ合う時間は、大切な時間になっているようです。


 
 代表演奏したお二人の指導者から、早速この日の感想が届きました。
 

レッスンを受けるたびに私自身の人生の宝になっています。

増谷夏葵

 
 バッハの無伴奏チェロ組曲は、第1番を国際スズキ・メソード音楽院のヴィオラコース在籍中に豊田先生と勉強させていただきましたが、第2番はCDで聴き流していた程度で弾いたことがありませんでした。
 
 それが、このたび研究会で受講することになり、勉強を始めました。CDをかけるとプレリュードの深い瞑想のような、祈りの言葉のような世界に惹き込まれていきました。プレリュード、アルマンド、クーラントの3曲を受講しましたが、いずれも本当に素晴らしい曲で、豊田先生が弾かれた冒頭の音が今も耳に残っています。
 

 バッハは、音楽院でも豊田先生からレッスンでたくさんのことを教えていただきました。先生の長年の研究からくる考察、そしてバッハの偉大な音楽の真髄とそれに対する敬愛を感じさせるお話は、レッスンを受けるたびに私自身の人生の宝となっています。

 今回も貴重な機会をいただき、再び豊田先生とバッハを弾ける幸せ、またヴァイオリンにはない低音の世界を、ヴィオラで奏でることができる幸せをひしひしと感じました。
 
 お話をいただいてから、あまり練習の時間が取れなかったので、今後もっと時間をかけてこの曲に取り組みたいです。ありがとうございました。


 

貴重な勉強の場として皆が大切にしている研究会になっています。

井上悠子
 

 ヴァイオリンとヴィオラは似ていますが別の楽器ですから、ヴァイオリン科指導者がヴィオラを勉強することの意義を考え、利点を意識して取り組むようにしています。
 
 倍音の響きが大きい分、音のお稽古で手応えが分かりやすいというのは、スズキで音を大切にする生徒の皆さんにもぜひ実感してもらいたいことです。また教本に収められたヴィオラ科独自の曲には、技術的な難易度よりも、じっくり音楽性を磨いていく質のものが多い、というのも特長です。
 
 今回のバッハですが、ヴァイオリンの無伴奏ソナタとパルティータと比べると技術的な面でも親しみやすい無伴奏組曲なので、ヴィオラ研究会でシリーズで勉強することで、バッハの精神性を少しでも理解し、音楽に携わる者としての成長にも繋げられるようにしたいと思っています。
 

 先生方の前で代表受講として1人で弾く緊張感は、普段レッスンに通う生徒の気持ちを知る機会にもなります。「家ではできていました」ではダメですね。豊田先生のレッスンというと、国際スズキ・メソード音楽院時代は「一回一回が勝負の場」とでも言うような張り詰めた空気が漂っていましたが、ヴィオラ研究会では豊田先生のバッハへの敬愛と参加の先生方のあたたかさが醸し出す、柔らかな空気感がヴィオラの柔軟さそのものだと感じます。貴重な勉強の場として皆が大切にしている研究会になっています。

 ですので、豊田先生が曲の合間に「こういう時間はいいねえ」と何度も仰っていたのが、とても印象的でした。