早野龍五理事長が、6月30日に10年間にわたり務めてこられた国際スズキ協会(ISA)の才能教育研究会選出の理事を退任されることになりました。7月1日からは、後任として、フルート科特別講師の宮前丈明先生が引き継がれることになります。
以下は、早野理事長ご自身による報告です。パンデミックもあった中で、多くの成果を出されたことがよくわかる内容です。マンスリースズキで記事にしたものは、リンクをつけました。
世界のスズキをつないだ8年間
ISA(国際スズキ協会)のTERI選出理事を退任するにあたって
早野龍五(理事長・ISA理事 2016〜2026年)
2026年6月末、10年間にわたって務めたISA(国際スズキ協会)の才能教育研究会(Talent Education Research Institute : TERI)選出理事を退任します。後任はTERI会長の宮前丈明先生です。退任にあたり、この8年間にISAで起きた主なできごとを、皆さんにご報告したいと思います。
■ 豊田耕兒先生がISA会長を退任される
私は、ISA理事着任後の2017年にオークランド(ニュージーランド)で、2018年にニューヨーク(米国)で開催されたISA理事会に、豊田耕兒先生とご一緒に出席いたしましたが、ニューヨークでの理事会において、20年間ISA会長を務められた豊田耕兒先生が退任を表明されました。
■ パンデミックと、オンライン理事会の始まり
2020年以降、新型コロナウイルスの影響で、ISA理事会はすべてZoomによるオンライン開催へと切り替わりました。それとともに、それまで年1回対面で開催していた理事会を、年2回、オンラインで開催するようになりました。
当時の危機的状況を踏まえ、ISA理事会は「オンライン研修を暫定的措置として支持する」という声明を採択し、パンデミック下でも指導者研修が止まらないよう工夫を重ねました。
■ 松本で開いた国際ティーチャー・トレーナー会議
2023年10月、私たちは、第3回国際スズキ指導者研究会を松本で主催しました。海外22ヵ国から106名、国内から126名、計約250名が参加——これは第2回(2019年マドリード)の2倍以上の規模でした。
「スズキ・クレデンシャル(世界共通の資格認定)」「卒業(修了)制度」「初歩指導とスズキの原理原則」などをテーマに、言葉と文化を越えた活発な討議が繰り広げられました。久々に顔を合わせた世界各地の仲間と、スズキの原点を改めて確かめ合った3日間でした。
■ 鈴木先生の著作物・楽譜の権利関係を整理
この8年間でかなり苦労したのは、鈴木先生の残された楽譜や著作物などについて、才能教育研究会とISA、そして米国の出版社などの間の権利関係を明確にすることです。鈴木鎮一先生は、スズキ・メソードの全世界への発展を目指して、ISAを設立されました。それに伴い、先生の指導曲集などに関連した多くの版権をISAや米国の出版社に譲渡されましたが、才能教育研究会が印税を受け取る権利がある著作(例えば「愛に生きる」の海外出版)などについての扱いは不明確なまま、長い年月が経過してしまったのです。これについては、長い時間かかりましたが、ようやく関係者の間で共通理解が得られるところまで漕ぎ着けました。
■ 鈴木先生の録音を、世界に無償公開
2023年10月の理事会で、私は、鈴木先生が残した歴史的録音をパブリックドメインとすることを提案しました。しばらく時間がかかりましたが、今年から、Alfred社のウェブサイトから、世界中の誰もが自由にダウンロードできるようになっています(→ダウンロードサイト)。先生の音楽と教えが、国境や言語を超えてより多くの人に届くことを願っています。
■ 議長選出制度の変更
2021年、私はISA議長に就任しました。TERIからは、2011-2013年に議長を務められた紿田英哉さん(才能教育研究会の元常務理事)以来、二人目の議長です。任期は本来2年でしたが、ティーチャートレーナー会議のことなどがあり、例外的に2024年まで3年務めることになりました。
この間に実現したのが、長年続いた「地域持ち回り制」の廃止です。2024年3月の定款改正で、議長・副議長ともに理事会の投票で選ぶ新制度がスタートしました。組織の透明性と継続性を高める、大きな一歩だと思っています。現在は、スイスのMartin Rüttimann先生が議長、私が副議長です。
■ ISA事務局長(Executive Director: ED)の公選
これまで、ほぼ10年にわたり、アメリカのAllen Lieb先生が、ISAのさまざまな事務的な業務を担当してこられました。従来、この重要な役職に就く方をどのように決めるかについて、明確なルールがなかったのですが、2023年に議長であった私が公選制で決めることを提案し、応募者との面談などを経て、昨年、Rafel Videiraさんが事務局長に就任されました。
■ 後任は宮前丈明さんへ
後任の宮前丈明氏は、ISAフルート委員会のTERI選出メンバーとして、すでに国際的な活動の場を持っています。また、ピッツバーグ大学医学部で活躍する研究者でもあり、英語でのオンライン会議もまったく不自由のない方です。コロナ以降、理事会がオンライン開催を原則とした現在、この点は実はとても大切なことなのです。
世界のスズキをつなぐ大切な役割を、安心してお任せすることができます。どうか皆さんも、宮前新理事を温かくお迎えください。
8年間、ありがとうございました。
PS TERI選出理事は退任しますが、地域選出ではない理事(At-Large Director)、そして副議長として、引き続きISA理事会に席を置かせていただくことになりました。これまでとは少し違う立場から、TERIとISAのために、引き続き力を尽くしていきたいと思っています。