「じしんをしるたび」第3弾 岩手へ
〜未来へつなぐ、記憶と音楽のバトン
7月28日に発生した令和8年熊本地震は、日本中に大きな衝撃を与えました。東日本大震災から15年、そして前回の熊本地震から10年という節目の年に、再び大規模な地震災害に見舞われたことは、私たちに「災害は決して過去の出来事ではない」という現実を改めて突きつけています。
こうした今だからこそ、震災の記憶を風化させず、次の世代へと受け継いでいく営みの大切さが、いっそう強く感じられます。スズキ・メソード東北地区が続けてきた「じしんをしるたび~星をつなぐコンサート」は、まさにその思いを形にした取り組みです。
2024年には福島県浪江町で第1弾を、2025年には宮城県南三陸町で第2弾を開催。震災遺構を訪ね、地域の方々の声に耳を傾け、そして音楽を通して感謝と希望を届けるという活動を重ねてきました。そして、その歩みの締めくくりとなる第3弾が、2026年9月、岩手県陸前高田市・大船渡市を舞台に開催されます。
今回のテーマは、これまで以上に「記憶を未来へつなぐこと」。イベント名に込められた「地震を学ぶことで、自身を知る」という思いと、スズキ・メソードのシンボルである「星」が表す希望のバトンを、音楽を通して受け渡していきます。今回の岩手開催をもって、このシリーズは一つの区切りを迎える予定です。
初日となる9月5日(土)は陸前高田市に集まり、「いわてTSUNAMIメモリアル」や「奇跡の一本松」を訪れます。テレビや写真だけでは伝わらない震災の現実を、自らの足で歩き、自らの目で見つめる時間です。その後は宿泊先で翌日のコンサートに向けた練習を行ないます。学びと仲間との時間が自然につながる、スズキらしい2日間となります。
翌6日(日)には、陸前高田市内の商業施設「アバッセたかた」のパブリックスペースで約50分間のコンサートを開催します。入場無料で、小さなお子さん連れでも気軽に楽しめる演奏会です。当日は公式YouTubeでのライブ配信も予定されており、全国、そして世界のスズキの仲間たちにもその様子が届けられます。
プログラムには、バッハの《2つのヴァイオリンのための協奏曲》や《G線上のアリア》、サン=サーンス《白鳥》、坂本龍一《戦場のメリークリスマス》、ディズニー作品《レット・イット・ゴー》《星に願いを》、そして岩手にゆかりの深いNHK連続テレビ小説「あまちゃん」のテーマまで、多彩な作品が並びます。最後には、スズキ・メソードの原点ともいえる《むきゅうどう》や《キラキラ星変奏曲》も演奏され、世代を超えて親しまれてきた音楽が、未来への希望を静かに語りかけます。
コンサート終了後には、大船渡市へ移動し、三陸鉄道が実施する「震災学習列車」に乗車します。語り部の方から被災当時の体験や復興への歩みを直接伺いながら、車窓に広がる三陸の風景を眺めるこの時間は、このイベントのもう一つの大切な柱です。主催者は「震災について学ばせていただくお礼として、音楽を届ける」という思いを掲げています。演奏することと学ぶこと、その両方が一つになって初めて、この旅が完成します。
今回の参加者は、生徒30名を中心に、保護者や指導者、撮影スタッフを合わせた総勢62名。イベント期間中は演奏だけでなく、宿泊施設や道の駅、地域の特産品なども積極的に紹介し、SNSや動画配信を通じて、現在の被災地の姿や復興の歩みを国内外へ発信していく予定です。当時、世界中から寄せられた支援への感謝を、現在の東北の元気な姿とともに伝えることも、この活動の大切な目的の一つとなっています。
震災は過去の出来事ではありません。まさに今、起きていることです。それは、未来を生きる子どもたちが何を学び、どう人と向き合っていくのかを問いかける「現在進行形の教材」です。
福島、宮城、そして岩手へ──3年間にわたって歩んできた「じしんをしるたび」は、今回ひとつの節目を迎えます。しかし、この旅が目指してきたものは終わりではありません。震災の記憶を受け継ぎ、人を思いやる心を育み、その思いを音楽に託して次の世代へとつないでいくこと。その小さな「星」の輝きは、これからも全国、そして世界のスズキの仲間たちへ受け継がれていくことでしょう。