装いも新たに、鈴木鎮一先生選の一茶俳句100句が、英訳されました!

 

ほおずき書籍(2,000円+税)

 ヴァイオリン科出身で、現在は本会顧問でもある医学博士の宮坂勝之先生が、鈴木先生が選ばれた小林一茶の俳句100句をもとに、奥様の宮坂シェリーさんによる英訳、信州の自然、いのち、平和をテーマにした独自の画風で知られる柳沢京子さんによる切り絵で構成された「英訳一茶俳句100句集」(ほおずき書籍)を出版されました。アマゾンでは、Kindle版の購入も可能です。

 
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俳句の背景〜宮坂勝之
俳句の海外での広がり
 海外への俳句の紹介は明治の終わり頃とされていますが、“Haiku”として海外に広く知られるようになったのは先の大戦の終戦(1945年)以後のことです。今では自国語での俳句作りを教育に取り入れている国もありますし、スズキ・メソードと同様に、幼小児の思いやりや感性などの非認知能力向上の一助としても用いられています。
 言葉や生活様式の違いもあり、形式や季語の取り扱いなどをゆるやかにして、「簡素化された3行の詩」という以上の縛りをなくした場合もあります。世界中にはたくさんの俳句研究団体があり、外交の場でも前EU議長や前米国大統領が来日した際、日本の首相との交流の場でHaikuを披露する場面が報道されるなど、国際的な広がりがわかります。現在ではそのHaikuの国際的な認知度を背景に、UNESCO世界遺産登録を目指す活動もあります。
 
俳句とHaiku
 日本文化、日本語と密接な関係を持って生まれた俳句です。その日本文化も日本語も時代や生活環境とともに変わります。一茶の生きた時代と現代、そして一茶が生まれた信州と現在の読者が生活する地域、国などの環境も俳句の理解には大きな影響を与えます。短い簡潔な表現であるだけに、俳句では選んだ言葉の持つ比重は大きく、日本語の美しさという要素も重要です。日本語でしか表せない表現や言葉の使用もありますが、特に5-7-5のリズム感は、音節(シラブル)ではなく拍(モーラ)で数える日本語独特のリズム感です。
 初めから英語で詠まれたHaikuと俳句が、季節感や文化観などで異なるのは当然として、使う言語の形式からも大きな影響を受けます。英語の響きの美しさを考えると、拍で数える日本語の5-7-5のリズム感が英語で最良とは限りません。そして、俳句を異なる言語で解釈する場合、Haikuを作る場合、そしてHaikuを俳句にする場合は、それぞれに異なるものです。俳句が世界に知られるにつけ、Haikuも土地柄や時代、文化、そしてその言語に適合した形式が醸し出されていきます。
 一茶の俳句の美しさを英語化する場合、それも広く英語圏に日本の文化を紹介する目的を持つ場合、あるいは日本人に英語との親和性を持ってもらう目的の場合には、Haikuを創作する場合とはまったく異なった考え方が必要です。一茶の俳句の心を、両方の文化圏で生まれ育った視点とスズキ・メソードの中で子どもの頃抱いた思いから解釈することは自然の流れでしたが、それを英語でHaikuとして表現することの課題などは、別の機会に説明します。

 
 今月は、41句〜50句を紹介させていただきます。
 
 また、スズキ・メソード公式サイトの会員ページからは、この100句の日本語を立川志の輔師匠、そして英語をパックンにお願いした音声データをリスニングすることもできます。鈴木先生が選ばれた一茶の俳句への特別な思いが込められていますので、ぜひお楽しみください。
 
→スズキ・メソード公式サイト会員ページ
 
 


 下のそれぞれの俳句をクリックすると、中身をご覧いただけます。

著者・演者の紹介
 
宮坂勝之
長野県生まれ。小児科医、麻酔科医。スズキ・メソード初期の生徒で、1947年(3歳)からヴァイオリン、一茶の俳句を習う。カナダ、アメリカ留学後、国立成育医療センター、長野県立こども病院、聖路加国際病院などに勤務。在宅医療児支援、日野原いのちと平和の森活動などに参加。和洋女子大学長補佐。スズキ・メソード顧問。聖路加国際大学名誉教授。
 
宮坂シェリー
米国ニューヨーク生まれ。ペンシルバニア大学で心理学専攻。トロント大学日本語学科を経て、文部省奨学金にて東京学芸大学へ留学。1977年より日本在住。スズキ・メソードの生徒の母親として息子たちと俳句暗唱に参加。日本語能力試験N1、華道池坊華監。外国人知的障害児教育、医学英語論文編集などに関わる。
 
柳沢京子
長野県生まれ。信州大学教育学部美術科卒業。信州の自然、いのち、平和をテーマにした独自の切り絵の作風が注目され、国内、欧米各地で個展開催。公共施設での展示、長野冬季五輪(1998年)企画に参画。1977年「柳沢京子一茶かるた」(奥野かるた店)、2017年「一茶365+1きりえ」(ほおずき書籍)など一茶関連作品出版。
 
立川志の輔
富山県生まれの落語家。明治大学卒業。サラリーマンを経て立川談志に入門。1990年真打昇進。古典から新作まで幅広い芸域で知られる。北海道から沖縄まで全国各地のほか、定期的に海外公演も行なっている。2015年紫綬褒章受章。1995年より現在まで続くNHKの長寿番組「ガッテン!」の司会で知られる。2018年より富山国際大学客員教授。
 
パトリック・ハーラン(パックン)
アメリカ・コロラド州出身のお笑い芸人・コメンテーター。ハーバード大学卒業。1993年来日。英会話学校講師などを経てマックンと組んだ漫才コンビ「パックンマックン」で広く知られる。幅広い領域で活躍するタレントである。立川談志(志の輔の師匠)とも共演。東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師。
 
日本語解説ナレーション/宮坂久美子 
長野県生まれ。信州大学大学院修士課程終了。元JICA海外協力隊員。
英語解説ナレーション/宮坂シェリー